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キャッチコピー
・英語版:unknown
・日本語版:"優しさ"で世界を救えるか?

 神は魔術師ではなく、科学者である。
  - アルバート・アインシュタイン

 ヒーローもね。
  - Mr. Alan Smithee

三文あらすじ:謎の事故で最愛の兄タダシ(声:ダニエル・ヘニー)を失った天才少年ヒロ(声:ライアン・ポッター)。深く傷ついた彼の心を救ったのは、人々の心と体を守るために兄が開発したケア・ロボットのベイマックス(声:スコット・アツィット)だった。タダシの研究仲間たちと共に兄の死の真相をつかもうとするヒロとベイマックスだったが、彼らの前に未知なる強敵が立ちはだかる・・・


~*~*~*~


 前回は、今最も熱い最新のヒーローがウジャウジャと活躍する作品の感想を書いた。そこで今回は、同じ"ディズニー作品"でも、少しほとぼりも冷めた感のある6人のこじんまりしたヒーロー譚について述べたいと思う。2014年にディズニーがリリースした本作『ベイマックス』は、ディズニー長編アニメーションの通例に漏れない完成度と、特に看板キャラクターであるベイマックスのキュートさで世界を魅了した傑作。また、東京(とサンフランシスコ)を模した架空の町"サンフランソウキョウ"を舞台に日本人(日系?)の兄弟を軸とした物語が展開されるという"日本推し"も、我が国では大いに話題となった。ちなみに、原作は、実は前回の『アベンジャーズ』同様、マーベル・コミックだったりする。

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 ぶっちゃけ、ストーリー、映像のクオリティや、ベイマックスの愛らしさ、その辺りについては、予想の範疇であった。筆者が長らく"魂のバイブル"と位置付けているロボット・アニメ『天元突破グレンラガン』を彷彿とさせるような"兄弟もの"、あるいは、"ロボット相棒もの"としての熱血も、想定の範囲内。なぜなら、筆者は、ここ数年来、実弟とか、再生医療の研究に従事する大学時代の友人などから、本作を散々ぱら強く、いや、いっそ酷く、オススメされており、そのアウトラインをほぼ聞いていたからである。とはいえ、だ。シーイングこそがビリービング。百聞している暇があるなら一見すべき。映画ってのは、そういうものである。実際、漫然と本作を鑑賞した筆者は、痛く痛く感銘を受けた。

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 筆者の琴線を震わせた最大のポイントは、"科学者"こそが"ヒーロー"であるというテーマである。昨今のディズニー・アニメは、本当に既存概念の再解釈が上手く、正しい。確か『プリンセスと魔法のキス』あたりで、従来の"女の子の幸せは王子様に見いだされてお姫様になること"という往年のプリンセス・ストーリー(あるいは、"プリンセス"という概念)を再定義し、後に"ディズニー・ルネッサンス"と呼ばれる革命を起こしたディズニー。その流れの極みが『アナ雪』であろう。そして、その延長として、例えば先日筆者が大感銘の大号泣だった『リメンバー・ミー』なんかがある。同作は、"家族"とか"ご先祖様"とか、ともすればカビの生えた陳腐な同調圧力にもなりかねない概念を、ものの見事に具体化し、説得的に語ってみせた傑作だ。

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 そんなディズニーが本作で再定義を試みる対象は、ずばり"ヒーロー"。マーベル・シネマティック・ユニバースが世のエンターテイメントを一手に牛耳っている昨今では、大人も子供も当たり前のように"ヒーロー"を受け入れているが、その"概念"は、ともすれば空虚化する危険をはらんでいる。では、"ヒーロー"とは何だ? 当ブログでも何回か言及している通り、その答えは、我が国が誇る国民的ヒーロー"アンパンマン"が歌っている。「アンパンマンは、君さ。」 これが"ヒーロー"なんだ。もちろん、我々が願っても実現できない"夢"(それは、富の獲得や人間的成長といったゼロからプラス方向のものでもいいし、あるいは、身体・生命の危機を回避するというマイナスからゼロ方向のものでもいい)を叶えてくれるカリスマこそが、"ヒーロー"の一義的な役割である。しかし、その先にある究極的な"ヒーロー"の本質とは、「自分だってあぁなれる!」という目指すべき目標であり、俺たちの延長であるべきなのである。

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 では、人類の目標とは? あるべき姿とは? 俺たちは今まで、どうやって世界と、宇宙と向き合ってきた? 答えは簡単さ。科学だよ。確かに、この"科学"というフレーズだけ聞くとなにやら冷血な印象を受ける。しかし、その盲目的な同調圧力こそがクソだ。これからの子供たちのために、我々が剥ぎ取っておいてやらねばならぬ陳腐なレッテルだ。科学って何よ? 一生懸命考えてやってみるってことでしょうよ。そこには、我々のあるべき姿がたくさん詰まっている。大好きなものに真剣に取り組むんだよ。一人じゃなくて、志を同じくする仲間と助け合いながら頑張るんだよ。失敗しても諦めず、試行錯誤で挑戦するんだよ。ほんで、みんなで今より素敵な未来を目指して、少しずつでも進み続けるんだよ。

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 敵の打倒のみに価値を見いだす賭けロボット試合に耽溺していたヒロが、兄であるタダシの研究室に赴き、目の色を変える瞬間。兄の研究仲間と手を取り合い研究に没頭する様。本作は、そんな"科学"の具体例を楽しげに、魅力的に、そして何よりカッコ良く描く。科学者に憧れられないなんてウソだぜ。彼らこそ、人類が目指すべき"ヒーロー"なんだよ。

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 とはいえ、科学は万能じゃない。スーパーマンにもクリプトナイトという弱点があるように、何でもできる全知全能のヒーローなど存在しない。本作は、この点にもきちんとスポットライトを当てる。すなわち、娘を失い悪の道に落ちてしまったキャラハン教授(声:ジェームズ・クロムウェル)とタダシを失っても希望を見失わなかったビッグ・ヒーロー6との対比である。キャラハンは何がいけなかったのだろう? 彼がビッグ・ヒーロー6に敗北したのはなぜだろう? 武器を上手く扱えなかったからか。知略で劣っていたからか。既に科学者としての才能が枯れていたからだろうか。違うな。キャラハンがヒロたちに敗北したのは、科学者足ることを諦めたからである。

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 武力の優劣で勝った負けたをうんぬんするなら、それは賭けロボット試合と同じである。本作では、科学が正義であり、科学者がヒーローなんだ。最後まで真の科学者足り得た者が、勝利を手にする。ここでキャラハンの娘に注目してほしい。彼女は本当に死んでしまっていたかい? 生きていたじゃあないか。ワームホールの向こうの次元の狭間で、寂しく救いの手を待ちわびていたじゃあないか。それをベイマックスは発見した。心のドリルを決して無くさない兄弟が生み出した科学の結晶は、彼女を見出した。ここで重要なのは、同じことがキャラハンにだって出来たはず、という点。娘を失った悲しみとか、やりきれない怒りとか、彼には情状酌量の余地が多分にある。そこを責めたいんじゃない。科学者であるにも関わらず、ワームホールの構造解析も、探索機器の開発も怠り、彼は復讐に走った。この瞬間、キャラハンは科学者ではなくなり、同時にその時点で既に敗北が決定していたのである。

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 ちょっと論旨が抽象的かつトンチンカンになってきたので、最後に『グレンラガン』好きな俺たちが漢の魂を完全燃焼されるポイントについて、少し言及しておく。それはずばり、次元の狭間でベイマックスがその身を賭してヒロを助ける場面。うちの弟とか研究者の友人とかは、口を揃えて「もう大丈夫だよ、ベイマックス。」がヤバい!なんて言っていたが、本当にヤバいのはそこじゃあない(ちなみに、筆者がレンタルしたDVDの字幕では上記台詞が「ケアに満足しました。」となっていた。これは間違いなく吹き替え版が正解であろう。)。俺たちが注視すべきは、ベイマックスが実は胸のチップを拳に握り込ませていたという点。タダシが開発したそのチップは、ベイマックスの心臓であり、魂だ。それが無いのに、彼はいぶし銀なやり取りを繰り広げた上で、ヒロを救ったのである。

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 もうお分かりでしょう。第8話ですよ。『あばよ、ダチ公』ですよ。チミルフのカスタム・ガンメン"ビャコウ"に貫かれた時点で既にその命の灯火が消えていたにも関わらず、漢の魂で以てシモンを導いた、我らがアニキことカミナへのオマージュですよ。これはもう言い切っちゃう。オマージュなんです! 以上です。

点数:87/100点
 昨今のディズニーを象徴するような、本当に"正しい"作品。自らが生み出した伝統をぶち壊して、それでも引き続き子供たちのための"教材"を連発できるなんて、やっぱりディズニーはすごい。これからを生きる子供たちよ。"勉強"はムダじゃないんだ。"科学"はカッコ良いんだ。アインシュタイン大先生が言っていたように、俺たちの模範足る"神"="ヒーロー"は、科学者なんだよ。ただ、アインシュタインは、こんなことも言っている。「唯一の救いはユーモアのセンスです。これは呼吸を続ける限り無くさないようにしましょう。」 そういえば、ホーキング博士も「ユーモアが無ければ人生は悲劇になってしまう。」と語っていたし、『オデッセイ』のマーク・ワトニーも、"人類の武器は科学とユーモア"を実践していた。ふーむ…。これからを生きる子供たちよ。"勉強"はムダじゃない。"科学"はカッコ良い。でも、このおじさんみたいに笑えない持論をのべつまくなしにぶちまける大人には、なっちゃダメだぜ。

(鑑賞日[初]:2018.5.4)

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Posted byMr.Alan Smithee

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