[No.55] マイアミ・バイス(Miami Vice) <67点>

Miami Vice



キャッチコピー:『深く静かに潜入せよ』

 アイ・ビカム・ソウ・眠い...ZZZ。

三文あらすじ:マイアミ警察特捜課、通称"マイアミ・バイス"(Miami Vice)の刑事コンビ、ソニー・クロケット(コリン・ファレル)とリカルド・タブス(ジェイミー・フォックス)は、仕事では抜群のチームワークだが、私生活ではプレイボーイのクロケットと恋人のトゥルーディー・ジョプリン(ナオミ・ハリス)に一途なタブスという正反対な2人。あるとき、2人がFBIに派遣した情報屋及びFBIの潜入捜査官3名が巨大ドラッグ密輸コネクション"ニュー・アンダーワールド・オーダー"の手によって殺害されるという事件が発生、合衆国司法機関による合同捜査の情報が組織に漏洩しているという疑惑が浮上したため、合同捜査に属していないソニーとリコが組織に潜入することになる。潜入捜査が順調に進む中、ソニーは組織のボスの女でありビジネスパートナーでもあるイザベラ(コン・リー)と恋に落ちるが、一方で組織のキーマン、ホセ・イエロ(ジョン・オーティス)は2人の正体に疑いを抱き始めていた・・・


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 本作は、スタイリッシュな刑事像とリアルな捜査描写で80年代アメリカの刑事ドラマシーンに革命をもたらした『特捜刑事マイアミ・バイス』のリメイク。邦題はなんだか『特捜ロボ ジャンパーソン』みたいだが、結局事件が解決しない回があったり、苦労して被疑者を検挙しても裁判で違法捜査が認められ容疑者が釈放される回があったりと、その内容は当時主流だったドンパチお気楽系刑事ドラマとは一線を画す画期的なものだったらしい。そして、このドラマ版の制作総指揮を務めたのが、本作の監督マイケル・マン。セルフリメイクという点では、本作は、『メイド・イン・LA』のリメイク『ヒート』と共通している。

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 当ブログでも何作か感想を書いているように、マイケル・マンは、さすが“マン”というだけあって”男のドラマ”を描くことに長けた監督だ。本作も例に漏れず、ソニーとリコを中心とした渋い男のドラマが繰り広げられる。しかし、同じテーマが根底に流れているとはいえ、本作は『ヒート』『コラテラル』のようなマン作品とは違い、決定的に”エンターテイメント性”が欠如した一本だと、個人的には思う。

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 その根拠はいくつかあるが、まず”説明不足”を挙げることができるだろう。もちろん、筆者の理解力不足を指摘されればそれまでだが、それでも多くの人が本作を”退屈”と評している主な原因は、少なからずこの点にもあると思われる。ソニーとリコは、ドラッグの運び屋として組織に潜入する。この大枠自体は、至極ベタなプロットだ。しかし、台詞による状況説明を極力省いた脚本とパッパパッパ場面転換する編集のせいで、2人が今どこで何のために何をしているのかが分かりづらいシーンが随所に見受けられ、ボーッと見ていたら途中でついて行けなくなってしまう。一応たいていのシークエンスで短い状況説明がなされはするのだが、それもだいたいシークエンスがひとしきり終わった後なので、場面が切り替わってしばらくは中々映画に身が入らない。

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 また、この説明不足と相まって、マン氏お得意の”しっとりした夜の演出”が本作では裏目に出ていると思う。マン氏は”夜の都会”を非常にしっとりとオシャレに描く監督だ。『ヒート』においてハナがマッコリーを停車させる夜のハイウェイや『コラテラル』においてマックスがアニーを乗せて走る夜の街の描写は実に素晴らしかった。そんな”マン演出”は本作でも健在。一面紫掛かったマイアミの夜景は抜群に美しいし、それをバックに繰り広げられる登場人物達の寡黙なやり取りが、本作のクールでスタイリッシュな雰囲気を演出している。しかし、説明不足のままコロコロと場面が切り替わる本作では、いったんついて行けなくなると途端にこの”しっとり演出”が子守歌に変わってしまうのである。

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 もちろん、本作には昼間のステキなシーンもある。特にハバナの洋上をソニーとイザベラが高速艇で移動する情景の美しさは素晴らしい。真っ青な空に負けないくらい紺碧の海原。そこを純白の高速艇が煌めく白波を一直線に立てて進んでいく。しかし、このシーンも実に寡黙。波の音、風の音、カモメの鳴き声などの雑音は一切排除されている。そこには、波しぶきの清涼感や南国の太陽のジリジリ感など感じられない。”マン演出”は”しっとり演出”であり、いわば”無機質な演出”なのである。

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 さらに、これは完全に筆者の主観的な意見なのだが、ヒロインのイザベラが可愛くない。演じるコン・リーは、最近では『SAYURI』でハリウッド進出も果たしたシンガポール生まれの世界的大女優だから、こんなことを言うとアジア映画ファンに怒られるかもしれない。しかも、筆者は本作以外のコン・リー出演作を何一つ観ていないから、彼女を批判する適格をそもそも欠いているという見解も至極もっともだ。しかし、他の作品はいざ知らず、本作におけるコン・リーは、マイアミやハバナといった南国の雰囲気の中、一人浮いていると感じずにはいられない。目は小さく薄化粧、おまけに少々しゃくれていると言った彼女の面立ちは、巨大麻薬組織のボスの女にも、プレイボーイな敏腕刑事と情熱的な恋に落ちる女にも相応しくないように思える。まぁ、イザベラは幼くして母親を亡くし、17歳からずっとアンダーグラウンドで生きてきたという悲劇的な一面を持つキャラクターだから、コン・リーのある種"貧相"な感じが逆に功を奏しているという見方も可能だろう。それでも、同じアジア系ヒロインなら『M:iⅢ』や『ダイ・ハード4.0』マギー・Qの方が良かったのではないかと筆者には思えてならない。

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 なお、ご覧の通り、彼女のプロポーションは、もちろん申し分ない。まるでハバナの空のよう。つまり、天晴れだ。

点数:67/100点
 本作は、クールでスタイリッシュな硬派系刑事ドラマに仕上がっており、その辺を楽しみにする観客の期待を裏切るものではない。しかし、格好いい刑事が派手にドンパチやらかす爽快なアクションを期待したり、『ヒート』の監督ということでいぶし銀な男のドラマに過剰な期待を寄せるのは禁物だ。あまりエンターテイメント性を求めすぎると、深く静かに夢の中に潜入することになるだろう。葉巻片手に"モヒートの眠眠打破割り"などを飲みながら、どっしりと腰を落ち着けて鑑賞するというのが、本作に対する正しいスタンスである。

(鑑賞日:2012.3.11)

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