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キャッチコピー
・英語版:The Only Thing More Terrifying Than Mother Nature Is Human Nature.
・日本語版:unknown

 ただ悔いろ。改める必要はない。

三文あらすじ:チリ旅行を大いに楽しんでいるアメリカ人観光客グリンゴ(イーライ・ロス)とその友人の現地人ポヨ(ニコラス・マルティネス)、アリエル(アリエル・レビ)。道中出会ったモニカ(アンドレア・オズヴァルト)、イリーナ(ナターシャ・ヤロヴェンコ)、カイリー(ロレンツァ・イッツォ)の美人三姉妹と共に彼らが浮かれ騒いでいると、突然巨大地震が発生する。大混乱と"余震(After Shock)"の恐怖の中、彼らの生き残りをかけた決死の闘いが幕を開ける・・・


~*~*~*~


 先日はグラグラと大地が揺れ、追い討ちをかけるようにゴーゴーと大雨が降る大阪。まぁ、雨はまだしも、やっぱりいつなんどき大地震が起きるやもしれぬ土地に、あたかも未来には何の不安もありません、みたいな顔をして安穏と暮らすって、よく考えれば異常だよな。というわけで、今回は、日本と並び称される地震大国チリを舞台にしたティザスター・ホラー・ムービーの佳作『アフター・ショック』について感想を書く。監督は、ニコラス・ロペスというあまり聞き慣れない名の男だが、製作と主要キャラクターの一人を務めるのは、あのイーライ・ロス

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 イーライ・ロスといえば、もちろん『キャビン・フィーバー』で注目を集め、『ホステル』シリーズで一躍スターダムにのし上がった新世代ホラーの旗手。当ブログでも感想を書いた『グリーン・インフェルノ』とか、キアヌ・リーブス主演で一昨年くらいに公開された『ノック・ノック』とか、とかく"調子乗りがシッペ返しを食らうもの"を得意とする男である。もちろん、ハレンチに騒ぎ回る若者がなにかしら悲惨な事態に巻き込まれるというのは、ホラー映画の定番だ。しかし、ロスは、より徹底している。特に、『グリーン・インフェルノ』は、別に本人たちから頼まれたわけでもないのに「原住民を守らなくちゃ!」といきり立つおせっかいくそ野郎どもが、皮肉にも、実は食人族だった彼らに食べられてしまう、という行き過ぎた(同時に欺瞞なき最高の)"シッペ返しもの"であった。

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 本作『アフター・ショック』は、そんな"シッペ返しもの"の系譜として、小品ながら非常に丁寧な良作。タイトルの"After Shock"とは、一義的には"余震"を指す単語であるが、そこはもちろん、神の怒りで"文明"が崩壊してしまった後に、哀れな子羊たちが巻き込まれる"混乱"だったり、"無法"だったりをも意味しているわけだ。で、まぁ、そこでケンケンガクガク、ヒキコモゴモな人間模様が渦巻き、"文明人"の脆さとか、傲慢とか、本性とか、その辺りが浮き彫りになっていくのであろうな。ある意味で"ディザスター・ムービー"だった『CUBE』も、始めは頼りがいのあった黒人おっさんが、最終的には醜い本性を露にし、逆に始めはもやしっ子だったナヨナヨ白人が、最終的には勇気を示してヒーローになった。きっと本作もそうだろう。しかして、この後半部分の予想は実際のところ、遠からず、でも決して当たらず、といった感じである。

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 本作に登場するキャラクターは、みんなあんまり変化しない。悪役として配置されている脱獄した囚人たちは、うん、だってハナから悪いヤツなんだし。味方側に目を向けてみても、例えば、イーライ・ロス自身が演じるグリンゴは、脱獄囚たちに脅されて結局イリーナとカイリーの隠れ場所を示してしまうが、まぁ、こいつは元々聖人君子だったわけではない。友だちの友だちであるデブなのにイケてるカリスマ、ポヨに頼りきりで、せっかく仲良くなった女の子もくどけない。別れた妻に彼氏ができたと知ると露骨な怒りを露にし、熱情の矛先を間違えてポヨにケンカを吹っ掛ける。もちろん、元来悪人だったというわけでもないのだが、後の裏切りを衝撃に変換できるほどの"大物"では、元々なかったのである。

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 デブカリスマのポヨだって、先述の通り元から頼れる男だったんだ。じゃあ、彼は、『CUBE』の黒人おっさんのように最終的には裏切るのかというと、そんなことは全くない。道中であっけなく撃たれるというサプライズはあるものの、彼自身の性質が劇的に変化するようなことはないのである。麗しきイリーナとカイリーの姉妹にしてもそうだ。彼女らは、最初から死ぬまで、特に変わらない。ヒューヒュー騒いだり、ギャーギャー喚いたり、パコパコとレイプされたりはするが、基本的に彼女らは、状況の移り変わりに対して逐一反射的なリアクションを取るだけである。

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 では、彼女らの義姉であるモニカは、どうだろう。これはもう、出てきた瞬間から、鈍感な筆者でも気付いてしまったほどの"主人公感"。ベリーショートの髪型、良し。赤子を無くしたという悲しい過去、良し。そのせいで妹たちに過保護な愛情を注いでいるため生じている確執、良し。みなが浮かれる中、酒にもセックスにもドラッグにも興味を示さない硬派さ、抜群に良し。もう本当に、彼女は"私、パニック映画の女主人公です!"という感じのキャラクターなのである。で、七転八倒の末、案の定、ラストでは彼女だけが生き残る。教会の地下から続く秘密の抜け道を通り、遂にビーチへと辿り着くモニカ。ここの解放感は、確かに良い。地震発生から先は、ずっと夜間かつ荒廃した市街のシーンばかりだったし、直前には、もっと暗いトンネル内でのバトルが描かれた。目の覚めるような青は、我々のどんよりした心を洗ってくれる。

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 なんだけど、この後のオチが容易に想像できてしまうんだよな。地震発生直後のシーンでは、「ウーーーーー…!」と謎のサイレンが響き渡り、グリンゴが「なんだこれ?」と問うと、ポヨの顔がガツンッ!とアップになって「TSUNAMIだ…!」と呟く、そんな非常に丁寧な前フリがあった。ましてや、地震大国でのんびり暮らす我々日本人にとっては、東日本大震災以降、地震=津波という方程式が脳裏にこびりついているのだから、おやおや…これはもしかして、助かったと油断しているモニカに津波が襲い来るバッド・エンドか?と先回りで正解を導いてしまうのも、無理からぬところであろう。

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 てな感じで、そんなオチも含めて、モニカというキャラクターに関しても、特に劇的な驚きは見られない。確かに、閉所恐怖症、高所恐怖症、赤ちゃんが死ぬ話NGと弱点だらけだった彼女は、その割には頑張ったと言えるだろう。とはいえ、例えば、民主党支持の銃反対派お父さんだったのに、最後には殺人鬼さながらの銃殺マシーンと化した『ヒルズ・ハブ・アイズ』のダグとか、最愛の夫と娘の事故死を乗り越え地底のモンスターと死闘を繰り広げるという教科書通りのヒロインだったのに、最後には親友たちを血祭りにあげ、女の友情は欺瞞の塊だと証明してくれた『ディセント』のサラとかに比べれば、余程生温い

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 では、物語の基本中の基本であるキャラクターのいわゆる"成長"を描けていない本作は、未熟な駄作なのだろうか。もちろん、そんなことはない。そもそも、イーライ・ロスとは、どのような男だったか。そう、"対調子乗り処刑執行人"である。え、でも、本作の彼ら彼女らは、『ホステル』のあいつらよりまだマシだし、『ピラニアは3D』のパリピーたちと比べればよほど品行方正じゃないか! なるほど…しかし、いや、甘いな。本作で主人公らを襲う主体は、地震という天変地異。それは、拷問クラブの変質者や殺人ピラニアの大群よりももっと無慈悲な脅威。要は、具現化した"神"である。

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 そして、リア充撲滅部隊終身名誉隊長であるロスは、こう言っている。うん、ダメだよ。ほんの些細な過ちも、神は見逃さない。つまり、例え、結局は上手くいかなかったのだとしても、バカンス先で美女と仲良くなり、クラブなんかを楽しんだ時点で、グリンゴは、立派な"罪人"だ。ポヨなんて言わずもがな。確かに、モニカは、あくまで品行方正を貫いていた。でも、そんな彼女だって、アリエルとちょっと良い感じになりかけていたじゃあないか。よって、モニカもアウト。

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 以上より、本作は、イーライ・ロス史上でも他に類を見ないほど、シビアかつ徹底的に調子乗りなリア充を裁く快作と言えるのである。バカンス先でのアバンチュールに憧れながら、一度も実現できなかった。あるいは、恐る恐るクラブに4度ほど足を運んだことはあるが、ただの一度足りとも楽しめたことはない。そんな、筆者と同様の経験を持つボンクラのあなたなら、本作でロスが描く激烈なる神の怒りに大きく溜飲を下げることができるだろう。

点数:72/100点
 まぁ、要するに、筆者はリア充やパリピーに憧れていたけれど、結局向いていなかったボンクラで、イーライ・ロスがまたしても繰り出す"無情"や"不謹慎"は、そんな俺たちにとって相も変わらず"救い"だってこと。もちろん、既にクラブに行ったことがあるという時点で、例え何の良い思い出なくとも、ロス基準で言えば筆者はアウトなのだろう。だから、自身の身の丈を見誤った過去を後悔しながら、同時に、今ではちゃんと身の丈に合った生き方をできていることを噛み締めながら、今はただ、いつか訪れる粛清の時を待とうと思う。

(鑑賞日[初]:2018.7.5)

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Posted byMr.Alan Smithee

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