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キャッチコピー
・英語版:They're Coming
・日本語版:み・ん・な・消・え・る

 そして、明日も巡りゆく。

三文あらすじ:ウイルスにより全人類の99%が死滅した2035年。犯罪者として服役中の男ジェームズ・コール(ブルース・ウィルス)が、特赦を条件に、タイムマシンで数十年前に戻りウイルスの出所を探る任務に就く。ジェームズは、ウイルス拡散を企てたと目されている秘密結社"12モンキーズ(Twelve Moneys)"の謎に迫っていくのだが・・・


~*~*~*~


 前回は、一種の"タイムトラベルもの"である『いま、会いにゆきます』の感想を書いた。そこで今回は、同ジャンルの傑作であり、同時に"ディストピアもの"の名作であり、なおかつ"スチーム・パンクもの"の雄編であり、それから……まぁ、とにかく、SF映画ファンならたぶんみんな大好き『12モンキーズ』について、少し書いてみる。監督は、これまたSF映画ファンならみんな大好き、テリー・ギリアム。"コメディ界のビートルズ"と謳われる伝説のエンターテイメント集団"モンティ・パイソン"の出身であり、作る作品作る作品で何らかのもめ事が発生し、中々"映画制作の因果"から抜け出せない苦労人でもある(たぶん、彼自身が完璧主義者過ぎるからなんだろうが。)。まぁ、筆者は、彼の作品を本作と『未来世紀ブラジル』しか観たことがないという無礼者なのだが、とりあえず、本作はやはりめちゃくちゃおもしろい

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 文明崩壊後の暗黒世界を描くいわゆる"ディストピアもの"としての才気、ゴチャゴチャとその辺の廃品を寄せ集めたような未来のガジェットが楽しいいわゆる"スチーム・パンクもの"としての魅力(ギリアムの場合は、蒸気機関ではなく配管のゴチャゴチャ感が肝だから、"ダクト・パンク"と言った方が良さそうだが。)。それらに加え、"タイムトラベルもの"としての"爽快感"は、やはり本当に素晴らしい。ジェフリー・ゴインズ(ブラット・ピット)による"12モンキーズ"創設は、実は過去でジェームズがしたひょんな発言が発端だった(かもしれない。)。パンデミックの始まりを警告する落書きは、実はキャサリン・ライリー博士(マデリーン・ストウ)が書いたものだった。同じく、警告の留守電も、実は彼女が吹き込んだものだった。そして、ジェームズが繰り返し夢に見る子供時代の空港での事件は、実は大人になって過去にタイムトラベルした当のジェームズ自身が射殺される瞬間だった…。

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 などなど、つまりは、フリとオチによる爽快感である。およそあらゆるストーリーは、フリとオチによって構成されていると言っても過言ではない。この点、"タイムトラベルもの"ってのは、未来のコレは、実は過去でアイツがソレしたからこうなった、というように、フリとオチがより具体的な物語上のギミックとして落とし込まれているのである。この点、かいつまんで先述した本作のフリとオチは、どれも非常に丁寧で、オチが提示されたときの"ピースがはまっていく感"が最高に気持ち良い。まぁ、昨今の水準からすればどれもベタではあるのだけれど、それでも、"主人公はカレンダーというものを認識できない"なんて奇抜な設定を繰り出す日本のアニメ作品に比べれば、よほど正統的である。

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 もちろん、「でもさぁ、アイツがアレせぇへんかったら未来ではこうなってないはずで、じゃあ、アイツは過去に行かへんから、やっぱり未来はこうなるはずで……」みたいないわゆる"タイム・パラドックス"も、当該ジャンルの醍醐味だ。過去に遡って自分の父親を殺したら、未来で自分は生まれないはずで、ならば自分は過去に遡って父親を殺せないから、やっぱり自分は生まれるはずで、でもじゃあ……という、別名"父殺しのパラドックス"。これは、"タイムトラベルもの"を作る上で避けて通ることのできない、絶対的な真理である。この矛盾が解決できたなら、あとはタキオンを見つける"だけ"で、我々は過去に行くことができる。よって、"タイムトラベルもの"のファンは、作品を観た後、「え、でもさぁ…」とか、「あれ、そもそもさぁ…」とか、そうやってパラドックスに悩まされる。先述の通り、『君の名は。』は、そんな矛盾にすら遠く及ばない前提の部分でつまずいた"タイムトラベルもの"の駄作だった。一方の本作は、やはり同ジャンルのマスターピースとして、極めて美しい驚愕の展開を我々ファンに提示する。

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 つまり、本作は、絶対に不可能なはずの"タイム・パラドックス"の回避を可及的見事に成し遂げているのである。もちろん、ガチのSFマニアが目を皿にすれば、突っ込みどころはたくさんあるんだろう。しかし、筆者程度のファンからすると、本作の大まかなプロットは、実に華麗に収まっているように見える。主人公ジェームズは、過去でした自らの迂闊な発言の結果、"12モンキーズ"が誕生したのだと凹んでいた。もし、本当に"12モンキーズ"が"ウイルス散布の元凶"="ジェームズが未来から過去に行く理由"だったのなら、理由が結果で結果が理由で…というパラドックスが生まれ得る。ジェームズが"12モンキーズ"の犯行を阻止して人類が助かったなら、そもそも彼が過去に行く理由が無くなっちゃうからね。しかし、本作は、ここを華麗にスカす

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 実際のところ、ゴインズ率いる"12モンキーズ"がやったのは、動物園から動物を逃がすという"イタズラ"だけだった。ゆくゆく人類を滅亡へと導く最凶のウイルスを撒き散らしたのは、ラストの空港までジェームズとは一切接点の無かった男だ。よって、ジェームズの時間旅行に矛盾は生じない。ジェームズがやってきて、"12モンキーズ"誕生の切っ掛けになって、仮にジェームズが同組織の犯行を防いでも、あるいは、迂闊な発言を控えてそもそもの組織誕生を無きものとしても、関係ないところでウイルスが撒かれて、真犯人を知ることができたジェームズは死んじゃって、未来で勘違いしたお偉方がまたジェームズを過去に送り込んで…。このサイクルがクルクルと繰り返されるだけだ(もしかしたら、未来人たちは、本作の後、ホセ(ジョン・セダ)からの情報で真犯人に至るかもしれないが。あるいは、真犯人を知りつつ生き残ったキャサリンが、未来にメッセージを残す可能性についても、熟考に値する。)。

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 まぁ、単に、"主人公の過去での目的"を"彼が過去に行く理由となる事象の阻止"にしなければ、矛盾は生じにくいんだろう。けど、あくまでも、"主人公が人類滅亡を阻止するために過去に遡る"というヒロイックでサスペンスフルなアウトラインを採用しつつ、その上でパラドックスを解決した発想はスゴい。ポイントとなるのは、ジェームズを含めた未来人たちが、全員"12モンキーズ"が犯人だと勘違いしていたという設定である。これだけ聞くと、酷く杜撰で安直だ。でも、実はこのギミックこそが、本作のテーマをモロに象徴しているのである。すなわち、ギリアムってのは元々(少なくとも『ブラジル』を観る限りでは)、"社会"とか"大衆"とか、そういったものの愚かさ恐さを描く監督だ。で、そこでは"情報"が重要なキーワードとなる。『ブラジル』が行き過ぎた情報化社会(同時に"統制社会"や"官僚化社会")を皮肉っていたように、我々は…情報を操っているように見えて実は"情報の奴隷"、情報強者を気取った"めくら"なんだぜ…。というのが、ギリアムらしいテーマである。

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 そのテーマは、きっと本作でも踏襲されている。ジェームズはおろか、鑑賞中の我々だって、絶対に"12モンキーズ"こそが元凶であり、間違いなくゴインズがラスボスであり、実は真犯人だったアイツも"12モンキーズ"の一員なのだろう、と信じちゃう。でもそれは、本当に愚かで傲慢な勘違いだ。本当は、事の全容なんかこれっぽっちも分からない。情報化だ情報化だと威張ったとて、50億人もの人類が死滅した有史以来最大の事件でさえ、その真相はさっぱりだ。ましてや、ジェームズを奴隷のようにこき使って情報集めに躍起になっている上層部のジョーンズ(キャロル・フローレンス)とかいうおばはん。実は、彼女こそが、間一髪搭乗ゲートをくぐり抜け、これから世界中にウイルスをバラ撒きに行く真犯人と機内で隣り合わせていた、という大オチの皮肉。これは、抜群に効果的である。

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 では、我々に愚かさを思い出させ、しかも、あんなに頑張った主人公も結局は死んでしまうという本作は、救いのないネガティブな作品なのだろうか。いや、手放しでそうは言えないと筆者は思う。例え、苦しんで後悔して、刑務所でこき使われて、過去に送られて、結局は死んでしまう、そんなループを繰り返すのだとしても、ジェームズは、キャサリンという"運命の女"に出会い、心を通わせた。バカな人類は依然堂々巡りを繰り返すとしても、その円環の中で、ジェームズは束の間の救済を得ることができる。ただまぁ、キャサリンは、ジェームズにとって"運命の女"であると同時に"夢の女"でもある。作中で印象的に引用されるヒッチコックの『めまい』は、死んでしまった女の幻影に取り付かれたスコティという男が、瓜二つの別人をその女だと決め付け、どんどん"理想の女"に仕立てあげていくという、取りようによっちゃあ愚かで恐いパラノイアのお話。本作のジェームズも、ある意味ではスコティと同じだ。

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 過去への逆行を繰り返す内、何が現実で何が妄想か、あやふやになっていくジェームズ。まぁ、先述のフリとオチがしっかり描かれる以上、全部が全部ジェームズの妄想ではないのだろう。でも、自由に、かつ、強制的に時間を行き来させられる彼が、"時間の連続性"="自身の同一性"に揺らぎを感じパラノイア化していくのは、理解に容易い。ここで、ライリー嬢への思いが助けになる。子供の頃から思い続けた"夢の女"。例え過去と未来が逆転しようとも、ジェームズの中での彼女への思いだけは、依然として"連続性"(あるいは"一貫性")を保っている。ジェームズにとってのキャサリンは、"時の流れ"を一方向に戻してくれる標(しるべ)であり、そしてまた、自身のアイデンティティーをも含めたあらゆる"情報"が不確かなこの世界において、唯一絶対の"真実"でもあるのである。

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 というわけで、案の定上手くまとめられなかったが、本作『12モンキーズ』は、いわゆる"タイムトラベルもの"として、極めて秀逸な傑作だ。もちろん、ジェームズは円環の中で救いを得るったって、それはやはり"現実逃避"でしょう? 『オール・ユー・ニード・イズ・キル』みたいに主人公が遂にはループの先の明日へ進むってのが、"タイムトラベルもの"の"正しいストーリー"でしょう? と思う人だっているだろう。しかし、ギリアムは、やっぱりデル・トロと同じく"物語の力"を信じた男なんだと思う。情報化・統制化社会の恐ろしさとそこからの離脱を描いた『ブラジル』も、結局は気の触れた主人公が妄想の世界に囚われて終わった。でも、ギリアムは、きっとそれこそを円環からの"離脱"であり、我々の"勝利"として扱っているのだと、筆者は思うのである。

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 この社会の呪縛から抜け出すんだ!なんて夢見ている人は、既にその時点で"真実"を見誤った"めくら"だ。草薙素子が言っていた通り、『ゴールデンスランバー』が描いた通り、この強大な"現実"に我々が勝利する術などない(他にも、『パンズ・ラビリンス』、『エンジェル・ウォーズ』、『ライフ・オブ・パイ』、『シェイプ・オブ・ウォーター』。"物語の力を信じた作品"は、枚挙に暇がない。)。だから、せめても自分の中の"真実"だけは守り通して、我々は"妄想"、"物語"、あるいは"映画"に救いを求めるのである。それにまぁ、ひょっとしたら希望はあるしな。本作のラスト・カットは、空港で未来の自分の死をそれとは知らず目撃した少年ジェームズの目元のアップだが、単に彼の"目撃"という動作のみを表すにしては尺が長い。これは、もしかしたら、この少年がいつか円環を破壊するかもしれないという希望を込めたカットなのではないだろうか。

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 まぁ、いずれにせよ、今日もバカな猿のふりして手を繋ぎ、グルグルと同じ日々を回り続けている"社会人"たち。規定の時刻になったなら早々とその監獄を出て家に帰り、大切な人を抱こう。それだけが、明日もまた変わらず巡り続ける我々の世界を救うため残された、たった一つの方法なのである。

点数:89/100点
 まとめようとしたら余計にとっちらかった。アレコレもがいてみても、結局は一歩も先へ進めず堂々巡り。我々の日常も、ブログの感想も、まぁ似たようなもんだな。最後に筆者なりの苦言を一点呈すなら、先程もちらりと言及した通り、"円環崩壊の可能性"についてだろうか。つまり、真犯人を未来に伝え得るキャサリンとホセは、ジェームズと一緒に殺してしまった方が、より美しいのではないだろうか、ということである。やっぱり、バカな猿たちはグルグルと回り続けるけど、その輪廻の中に救いがある、という構造を完結させるため、人類滅亡を巡る因果の輪は、完全に閉じてしまった方が良いように思う。ただ、現状でも、真犯人が手荷物検査でウイルスの容器を解放したまさにその空港にいたキャサリンとホセは、なんやかんやで未来へのメッセージを残す前に死んでしまったと考えることは可能だ。とはいえ、発症までには一週間の潜伏期間があるはずだよなぁ…。それに、ウイルスまみれであろう真犯人と隣り合わせたあのおばはんが、未来で生きているってのは、そもそもどういう了見なんだろう…? なんて感じでグルグルと考え続けられるから、本作はやっぱり良いSF映画なんだよな。

(鑑賞日:2018.7.10)

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Posted byMr.Alan Smithee

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