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The Rock



キャッチコピー
・英語版:Alcatraz. Only one man has ever broken out. Now five million lives depend on two men breaking in.
・日本語版:"ザ・ロック"へようこそ。

 極上のアクションに酔いしれる。
 今はただ、マウイなど忘れて。

三文あらすじ:米海兵隊の伝説的英雄フランシス・X・ハメル准将(エド・ハリス)は、政府が自分の部下を見殺しにした上その事実を隠蔽したことに憤る。政府への復讐を誓った彼は、かつて脱出不可能の刑務所として鉄壁を誇った”ザ・ロック(The Rock)”ことアルカトラズ島に人質をとって立てこもり、VXガスをサンフランシスコに打ち込むとして政府を脅迫。この事態に対し、FBI化学兵器スペシャリストのスタンリー・グッドスピード(ニコラス・ケイジ)は、歴史上ただ一人だけアルカトラズからの脱獄に成功した元英国秘密諜報部員ジョン・パトリック・メイソン(ショーン・コネリー)とともにアルカトラズ奪還に挑む・・・

 
~*~*~*~

  
 筆者の好きな監督の一人にマイケル・ベイという男がいる。彼はいわゆる"ブロックバスター"を多く手がける監督で、隙あらば爆発を起こし、爆発の規模と数に比例してストーリーの細部はどんどんごまかされていく。これは悪口ではない。楽しければいいじゃないか、細かな脚本に気を配るせいで映画の勢いが衰えるなんて最低だろ?そんなスタンスの彼は、まさにエンターテイナーの鏡である。

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 そんな彼の欠点は、ほぼ100%途中で著しい中だるみが発生するということである。例えば、『アルマゲドン』という映画は、ブルース・ウィリスらが宇宙に出るまでは最高におもしろい。個人的には"完璧"と言ってもいいと思っている。しかし、宇宙に出てから、特にロシアの宇宙ステーションでのくだりは、不必要なピンチと爆発の連続で突っ込む気すら失せるほど退屈だ。ところが、本作では、そのような中だるみがほとんど見られない。ザ・ロックへの出発前にFBIがサンフランシスコ狭しとメイソンを追いかけ回すシークエンスは少し長い気もするが、グッドスピードに「エイホー!!」と罵られたくないなら、そんな些細なことには目をつぶろう。

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 さて、本作の具体的な内容について、である。まず、オープニングはハメルの怒りの独白からスタート。政府のせいで部下を救えなかったことへの恨みと怒りというハメルの動機が伺えるシーンだ。その途中にオープニングタイトル。最高とは言い難いが、悪くはない。ここからハメル率いる反乱部隊が軍からVXガスを強奪するシークエンスが始まるが、この一連のシーンのテンポは天下一品である。この監督は、本当に事件の導入部の描写、いわば風呂敷広げが上手い。また、このシークエンスの後にある、グッドスピードが爆弾解体するくだりもすごくワクワクする。彼がビートルズ・マニアという設定も、ありがちとはいえ味があって良い。

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 アルカトラズは占拠され、政府は進入手段を検討する。上空からの潜入ではレーダーで感知され撃墜される。水面下から地下に潜入するしかないが、地下部分は迷宮状態になっており地図には正確に反映されていない。さらに当時の刑務所長等はもう死んでしまっているので、地下のルートを知る者に頼ることもできない。そこで彼が登場する。かつて脱獄不可能と謳われたアルカトラズから、歴史上ただ一人脱出した男。国境付近で捉えられ、米政府によってその後何十年間も幽閉されていた男。歴史から抹消された伝説の脱獄囚ジョン・パトリック・メイソンである。この設定はシビれる!

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 さらに、筆者が感銘を受けたのは、潜入後、グッドスピードがメイソンを引き留めるシーン。作戦の失敗を悟ったメイソンは早々と脱出に向け動き出すのだが、なんやかんやあって結局グッドスピードと二人きりでの作戦続行を決意する。まぁ、こういう展開はありがちだ。よくあるのは、口論の最中に敵の襲撃を受け、なし崩し的に共闘するというパターン。確かに、メイソンもその例に漏れず、最終的にはそんな感じで脱出を中止する。しかし、本作では、そこに至るまでのメイソンの心の機微に極めて粋で合理的な工夫が見られる。

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 まず、グッドスピードは苦肉の策で、メイソンには秘密にされていた"VXガスがサンフランシスコを狙っている"という情報をバラす。何万人もの市民が死ぬこと、その中に子供を身ごもった自分の婚約者(カーラ)がいることも話す。この情報が決定打となり、メイソンはハメルを止めることを決意するのである。なぜなら、メイソンにはサンフランシスコに住む娘がいるからだ。ずっと幽閉されていたメイソンがその娘に一目会わんと走り回ったのが、前半の追跡劇。これで若干冗長だった追いかけっこも無駄にならずに済んだ。グッドスピードとメイソン。年齢も職業も人としてのタイプも違う二人は、実は"サンフランシスコの愛する娘"という確固たる動機を共有したバディだったわけだ。

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「父親のいない子はかわいそうだ。」


 この説得力である。また、台詞という意味では、本作には他にも粋で、いなせで、90年代っぽくて、アメリカっぽい名フレーズがてんこ盛り。例えば、

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「 ”ベストを尽くす ”だと?敗者はいつもそうやって言い訳するんだ。
 勝者は家に帰って美女を抱く。

(Your best? Losers always whine about their best.
 Winners go home and fuck the prom queen!)


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「…カーラは美人だ。」
(Carla was the prom queen.)


という掛け合いは、最高に粋。原語の"プロム・クイーン"の方が当然カッコいいのだが、まぁ、当時の一般認識を前提に日本語訳するなら"美人"としか表現できないだろう。これは致し方ない。他にも、実戦経験がほぼゼロのグッドスピードが、

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「プレッシャーは大好きだ。」
(I love pressure. I eat it for breakfast.)


と呟いて自らを奮い立たせるシーン。これも原語の方がウィットに富んでいるが、限られた字数の中での比喩表現には限度がある。ドンマイ、翻訳家! 他にもカッコいいフレーズはたくさんあるのだが、中でもテロリストの掃討に成功した大団円、メイソンがグッドスピードにその名字の由来を語り別れを告げるシーンは、個人的には映画史に残る名シーンと言いたい。音楽も非常にいい。ハンス・ジマーはやっぱり最高だ。ここで出てくる最高の名言が、メイソンの、

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「Forget Maui.」
(マウイなど。)


というセリフ。メイソンは、グッドスピードに新婚旅行ならマウイではなくカンザス州フォートウォルトンがいいと勧めるのである。そこの教会にはメイソンが幽閉される原因になったマイクロフィルムが…。ケネディ暗殺事件の真相を始め、アメリカが隠す秘密が何から何まで記録されたマイクロフィルム。ケビン・コスナーもここを探していればあんなに苦労しなくて済んだのに。

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 このように、本作は、テンポのいいアクションシーンの連続に2人の粋なやり取りがマッチした素晴らしいアクション映画だ。しかし、一点苦言を呈したい。それは、灯台でグッドスピードがミサイルを使って黒人の敵を吹っ飛ばすシーン。ここでグッドスピードは、黒人に「音楽は好きか?エルトン・ジョンの『ロケットマン』とか?」と訪ね、黒人が甘っちょろい音楽だぜ的な感じで答えると、「そいつは残念だな。お前が "ロケットマン "だぜ!」と言ってミサイル発射ボタンを押す。でも、せっかくグッドスピードがビートルズ・マニアという設定を前振っていたのだから、ここはビートルズの曲で良かったんじゃないだろうか。『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ』とかでも粋な感じになったと思うけどな…。

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点数:99/100点
 アクション映画としては、やはり筆者にとって揺るぎない魂のバイブル(ちなみに、本作の脚本はクエンティン・タランティーノがいわゆる"スクリプト・ドクター"としてノンクレジットで修正を入れているらしく、そういった意味でも、筆者にとってはテンションの上がる作品だ。)。上述の通り、"ロケットマン"だけがいつ観ても釈然としないが、まぁそれは些細なことだ。マウイもビートルズも忘れて、今はただ、この極上のアクションに酔いしれるとしよう。

(鑑賞日:A long time ago...)

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Posted byMr.Alan Smithee

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