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2012

[No.56] レザボア・ドッグス(Reservoir Dogs) <95点>

Reservoir Dogs



キャッチコピー:『心臓の弱い方はご遠慮ください』

 オタクの遠吠えが世界を撃ち抜く。

三文あらすじ:宝石店強盗のために集められたお互い素性を知らない6人の悪党。色を用いたコードネームで呼び合う彼らは計画通り強盗を実行するが、事前に張り込んでいた警官隊と銃撃戦に。Mr.ホワイト(ハーヴェイ・カイテル)は、腹部に銃弾を受け重傷を負ったMr.オレンジ(ティム・ロス)を連れ、命からがら落ち合い場所の倉庫に逃げ込むが、そこにMr.ピンク(スティーヴ・ブシェミ)が遅れて到着し「チームの中に警察のイヌがいる」と言い始める・・・


~*~*~*~

 
 予告編が上手い!特に終盤、登場人物たちが「バンッ」と言ったり手で銃を模したりするような本編では些細なシーンを繋ぎ合わせ”洒落たギャング映画感”を演出しているところが素晴らしい。
 キャッチコピーは少しダサいが、当時の水準からすれば暴力描写が過激な本作の”つかみ”としては、中々良い。

 タランティーノフリークにとってはマスターピース、そうでなくても映画ファンなら誰もが知っているタランティーノの初監督作品『レザボア・ドッグス』
 ビデオ店の店員だった映画オタクが初めて撮った本作は、カンヌ映画祭に公式出品され、瞬く間にカルト的人気を確立する。計算された構成、緻密な人間描写、クールな音楽、ハードな暴力描写、スタイリッシュな登場人物たち。本作を傑作たらしめるこれらの要素は、20年経った今でも全く色あせていない。

 筆者が今回本作を鑑賞して改めて感心したのは、やはりストーリー構成の巧さである。タランティーノが本作の次に撮った『パルプ・フィション』ではより大胆に時間軸をバラした演出が高く評価されたが、すでに本作の時点で彼のストーリー構成は匠の域に達していると言っていいだろう。

 まず、オープニングは有名な”「ライク・ア・ヴァージン」談義”から始まる。これから宝石店を襲う強盗たちが、レストランで朝食後のコーヒーを飲みつつ内容の希薄な会話をダラダラと続けるシークエンス。
 ”マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」はビックリするほどの巨根に出会ったヤリマン女の歌だ”から始まって”70年代の懐メロを流すK・ビリーのラジオ番組が最高”だの”ウェイトレスにチップを払うべきか否か”など、彼らの会話内容は極めてくだらない。しかし、これがたまらなく格好いい。しっかりと自分のこだわりを持ち、リラックスして仕事に臨む。彼らはまさにプロフェッショナルな強盗だ。潜入捜査官が紛れ込んでいなかったなら、彼らはきっと良い仕事をしただろう。
 このシーンはカメラワークも良い。一人の長話中でもカメラは話者でない者の様子をパッパパッパと四方八方から映し出す。短いシーンの中で登場人物を端的に紹介するとともに、ともすれば単調でつまらなくなり得る無駄話のシーンに躍動感を与えることにも成功している。

 ”チップ談義”が終わり、彼らは店を出る。そして、あの超有名シーンである。パロディとしてCMでも使われたことがあるので、本作を観たことがない人でもこのシーンだけは知っているのではないだろうか。
 強盗たちが退席した後、画面は暗転、DJであるK・ビリーの曲紹介がインサートされる。名曲「リトル・グリーン・バッグ」が流れ始め、強盗たちがレンガ塀の前を歩いて行く様のスローモーション。メンバー一人一人の顔がアップで順次映し出され、俳優名が表示される。歩き去る彼らの後ろ姿を遠景に捉え、下方からスクロールしてくるタイトル。『Reservoir Dogs』!

reservoirtitle.jpg


 パーフェクト!!
 これを映画史上最高のオープニングという人がいても筆者は何ら驚かない。俺たちは、こういうオープニングが観たいんだぞ!ド頭でタイトルを出してしまう監督たちよ、これが映画のオープニングだ。

 完全に余談だが、最近テレビですでに『アベンジャーズ』の予告編が流れている。その冒頭で”日本よ、これが映画だ”というキャッチコピーが映されるのだが、これは最高に格好いいキャッチコピー!80年代の栄光を失い、テレビの2時間ドラマスペシャルと大して変わらない日本映画の台頭を甘んじて許している昨今のハリウッド映画。そんなハリウッド映画がかつて持っていた圧倒的なパワーをチャラチャラしたアイドル映画に興じる日本人に再び突きつけたこのキャッチコピーは、上半期にしてすでに今年のコピデミー賞最有力候補である。筆者は一人でこのような壮大なテーマを妄想し、少し涙してしまった。まぁ、作品内容がダメダメなら必然的にこのキャッチコピーの魅力も無くなってしまうのだが、そこは8月の公開をやきもきしながら待ちたいところ。とにかく、未見の洋画ファンには是非観て頂きたい秀逸な予告編である。

 話を本作に戻す。

 タイトル登場後、再び暗転、オレンジの絶叫が響き渡る。宝石店襲撃に失敗した彼らは散り散りに退散し、腹部を撃たれたオレンジはホワイトが運転する車で運ばれているのだ。
 この唐突な展開は、観客をぐっと映画に引き込む。非常に上手い。そして、さらに上手いのは、強盗映画にもかかわらず結局最後まで肝心の強盗シーンを描かずに押し切ってしまうところだ。タランティーノならではの大胆で研ぎ澄まされたセンスが感じられる。

 オレンジとホワイトの会話で観客は徐々に強盗失敗の状況を把握していき、ピンクの登場でさらに詳しい状況と、本作を終盤まで引っ張る縦糸、”強盗メンバーの中に警察のイヌがいる”という事実を知る。
 ここからの構成も非常に上手い。ホワイトとピンクの会話に飽きた頃にブロンドが登場し、人質として警官を一人連れてくることで新たな情報を提示し、それでも会話続きのストーリーにブロンドの”耳削ぎシーン”がスパイスをふりかける。
 この”縛られた警官が悪党にカミソリで耳を切り取られる”という描写は、公開当時からすればかなりショッキングだったようで、公開時には上記のように「心臓の弱い方はご遠慮ください」というキャッチコピーが付けられたほど。もっとも、このシーンでは、切り取られたあとの傷口こそ映るものの、肝心の耳が切り取られる瞬間は映っていない。『SAW』シリーズや『ホステル』、最近では『ハイテンション』など、巷に直接的な残酷描写が溢れかえっている昨今からすれば、何らショッキングではないのである。
 それどころか、ブロンドが倉庫内にあったラジオをつけ、K・ビリーの番組を選局、予告編にも使われている「Stuck In The Middle With You」が流れ始めてからの展開は、非常にクール。ブロンドのサイコ感を象徴するとともに、彼のセクシーでクールな一面もしっかり表れた名シーンと言える。

 また、彼のセクシーさが最も表れているのは、その登場シーン。
 宝石店での乱射をホワイトに責められたブロンドは次のように吐き捨てる。

 「 Are you gonna bark all day, little doggy, or are you gonna bite?(一日中吠えてるつもりかい、子犬ちゃん? それとも噛み付くつもりかい?)」

 かっこいい~!
 しかも、「何だと?!もう一回言ってみろ!」とホワイトに詰め寄られ、キレイにもう一回言い直すところがまたクールだ。さらに、音楽や演出、台詞だけでなく、ブロンドを演じるマイケル・マドセン、彼が非常に良い。どこか疲れた感じの中にセクシーさを漂わせる演技をする俳優で、筆者のお気に入り俳優のうちの一人である。最近では加齢に伴い円熟味がさらに増しており『キル・ビル Vol.2』におけるバドは、最高にセクシーで格好良かった。この”疲れているがセクシー”という感じは『パルプ・フィション』におけるジョン・トラボルタの演技と共通しており、同作で彼が演じるヴィンセント・ベガと本作でマイケル・マドセンが演じるヴィック・ベガが兄弟であるという裏設定も中々説得力がある。

 そんなブロンドは、耳削ぎの後、続けて警官にガソリンをふりかけ火を放とうとするのだが、気絶から目覚めたオレンジに銃弾の雨を浴びせられ絶命する。そして、命拾いした警官マーヴィン・ナッシュ(カーク・バルツ)とオレンジの会話で、オレンジが潜入捜査官だったことがあっさり分かってしまう。
 これは、タランティーノお得意の”スカし”である。ギャングのボスの女とボスの部下が禁断の関係に陥ってしまうのかと期待させて実は薬をやり過ぎた女の救命にてんやわんやする展開だったり、自らの頭部を撃ちお腹の子供もろとも殺そうとした宿敵である元恋人の下に紆余曲折辿り着き、さぁここからクライマックスの大バトルだと期待させて実は生きていた子供との対面という展開だったりと、タランティーノ映画には観客をスカす展開が多く、しかしそれがおもしろい。本作でも、てっきりクライマックスで大々的に誰が警察のイヌかが判明すると期待した観客は、肩スカしを食らうことになる。

 しかし、ここでオレンジの正体を明かすことで、クライマックスにおけるホワイトの哀愁が非常に効果的に演出されることになる。
 盗難車を処分して倉庫に帰ってくるホワイト、ピンク、そして”ナイスガイ”エディ(クリス・ペン)。ブロンドが全員を殺しダイヤを独り占めしようとしていたというオレンジの釈明を聞き、ブロンドと兄弟同然の大親友であるエディは、オレンジこそが警察のイヌだと確信する。エディの意見を否定し、オレンジをかばうホワイト。しかし、観客はオレンジが潜入捜査官だということをすでに知っており、オレンジの潔白を信じて疑わないホワイトに哀れみを感じるだろう。ほどなくして、強盗チームのボスでありエディの父親であるジョー・キャボット(ローレンス・ティアニー)が倉庫に到着。彼もまた、自身の嗅覚からオレンジが警察のイヌだと確信する。オレンジに銃を向けるジョー、ホワイトに銃を向けるエディ、ジョーに銃を向けるホワイト。言い合いが最高潮に達し、3人ともが発砲。ジョーとエディは倒れ、ホワイトも瀕死の状態に陥る。

 ちなみに、この銃撃シーン。緊迫したクライマックスだが、公開時コアなファンの間では一つのミステリーとして話題になったらしい。すなわち、誰からも銃を向けられていなかったエディが何故撃たれたのか?という謎が残ったのである。確かに、一見3人はほぼ同時に1発ずつ発砲しているように見えるから、エディが撃たれるのはおかしい。この点が当時非常に盛り上がり”エディは誰が撃った?”Tシャツまで発売されたそうである。まぁ、種を明かせばどうということはなく、スローで観てみるとホワイトが一瞬でジョーとエディの2人を撃っていることが分かる。人を見る目のないホワイトも銃の腕前は相当なものである。

 そして、いよいよラストシーン。
 瀕死のホワイトは、身体を引きずってオレンジの元へ。ここでオレンジが自分が潜入捜査官であるという衝撃の告白をする。この告白を受けたホワイトのリアクションも非常に良い。怒って騒ぐのではなく、ただ悲痛に呻くだけ。本編ではこれまでにホワイトとオレンジのどこか親子のような友情と信頼関係が形成される過程もしっかり描かれている。止めどない男の哀愁。
 銃口をオレンジの顔面に押しつけるホワイト。カメラは2人を捉えたまま、音のみで倉庫に警官隊が突入してきたことが分かる。様々な感情で歪むホワイトの顔がズームされていき、一発の銃声。直後、警官隊の銃撃を受けたホワイトがフレームアウトし、映画は幕を閉じる。
 直接描写がないので、ホワイトとオレンジの生死、特にホワイトはオレンジを撃ったのかという点は解釈の余地がある。撃った方が悲劇としてのまとまりはいいが、ホワイトのキャラクターを考えると撃っていないのではないかと筆者は考えている。

 ただ、微々たる難点を挙げるとすると、本作は他のタランティーノ作品とは違い、全編を通して漂う雰囲気が少しシリアスに過ぎる。もちろん、本作に登場する強盗たちも他作品の登場人物同様どこか間が抜けていたりするのだが、それも本作ではぐっと押さえられている感じ。それゆえ、他作品より特別ハードというわけではない暴力描写もかなり痛々しく感じられる。

点数:95/100点
 以上、筆者が思う本作の素晴らしさをつらつらと書いたが、本作も他のタランティーノ作品同様、ファンが思う真の良さはファンにしか分からないのかもしれない。それは、タランティーノ作品の魅力が”格好いい”とか”センスが良い”といった極めて主観的で論理的な説明が困難なところにあるからである。もっとも、本作に限っては、一応ちゃんとした縦糸に沿っていくストーリーなので、タランティーノファンでなくても十分楽しめるのではないだろうか。とりあえず、最高に格好良くセンスが良いオープニングだけでも一見の価値有りだ。

(鑑賞日:2012.3.12)














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