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キャッチコピー
・英語版:They should have gone to Vegas
・日本語版:unknown

 懐旧が牙をむく。

三文あらすじ:長年の友である4人の男たち。彼らは、スウェーデンの森を抜けるハイキングの旅に出る。数ヵ月前の悲劇を胸に歩みを進める彼らを、想像を絶する恐怖が待ち受ける・・・


~*~*~*~


 本作『ザ・リチュアル いけにえの儀式』は、ちょっと前からNetflixで配信されているホラー映画である。当然、夏の映画商戦も佳境を迎えている今、何を置いても観なければ!という作品ではない。監督も、脚本家も、俳優たちも、筆者は聞いたこともない。ところが、そんな"小品"が、大手映画情報サイトCOLLIDERの"今Netflixで観ることができる名作ホラー特集"で取り上げられていたのである。これは観なければ。予算は無くとも、アイデアとパッション次第で傑作は生まれる。もちろん、それはおよそあらゆる映画作品に言えることだが、ホラー映画は、特にその傾向の強いジャンルだ。実際、筆者が侮っていた本作は、COLLIDERの推薦に偽りなしと思える非常に上質な良作であった。

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 まず筆者が心引かれたのは、導入部時点における主人公ルーク(レイフ・スポール)ら"ボンクラおっさんチーム"の現状。すなわち、大学生の頃は毎晩朝まで飲み倒したりしていたのに、社会的地位や家庭を獲得してしまったことで"大人"になっちゃった、という状態である。しかも、全員が一枚岩でそうなのではない。おそらくまだ結婚していないのであろう主人公は、旅行の目的にスウェーデンでのハイキングを提案するメンバーたちに落胆し、宵の口で帰宅しようとする彼らに寂しさと憤りを感じている。これは、筆者世代の琴線を直撃で震わせてくるポイントだ。最近はそうでもないが、筆者も仲間内ではどちらかと言えばルークと同類の"永遠の大学生"である。

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 そんなルークの"まだ飲み足りない病"が間接的な原因となり、仲間の一人ロバート(ポール・リード)は命を落とす。その他の友人を店外に残して入店した酒屋で強盗に遭遇したルークとロバート。ルークは見つかる前に即座に身を隠し、ロバートが撲殺される瞬間を怯えながらただただ見ていた。この展開にも惹き付けられる。宇多丸師匠も言っている通り、映画において最も恐ろしい展開の一つは、"ただ見ているしかない"というシチュエーションである。これは、そもそも映画というものが"ただ見ているしかないエンタメ"であるゆえ、観客が否応なく"ただ見ているしかない登場人物"とシンクロしてしまうからであろう。

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 この点、本作のロバート死亡シーンは、ただ怯えて親友の虐殺を見ているしかないルークの心境に、抗う暇(いとま)も与えず我々を引きずり込む。まぁ、若干の"弱さ"は感じるが。先ほどは"見ているしかない"と表現したが、厳密に言えば、ルークは"臆病にもただ見ていることを選んだ"というところが、このシーンの肝だ。この選択に対する懺悔が、後々随所で効いてくる。しかしながら、当該シーンの描写を見る限りにおいては、ルークの"臆病さ"がそこまで伝わらない。逆に言えば、ある程度"不可抗力"に見えてしまっているのである。強盗は三人ほどいて、バットを持っている。咄嗟に自分だけ隠れたのは確かに卑怯だが、金目の物さえ渡せば殺されることもなかろうという推測も、その時点では合理的だ。ロバートが一発どつかれた後で飛び出すべき……かもしれないけど、無理でしょ、それは。

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 このように、良い!けど、おしい!という展開は、もう一つある。ここもロバート死亡シーン同様、"ただ見ているしかない"という映画の本質を的確に利用した良いシーンだ。すなわち、エインシェント・ゴッドであるらしい異形の化け物を崇拝している集落に捉えられたルークとドム(サム・トロートン)。手枷を地下室の壁に繋がれた二人が生け贄にされる恐怖に震える中、ドムだけが上の階に連れていかれる。一人残されたルークは、天井から聞こえるドムの叫び声をただ聞いているしかないのであった…。というシーン。ここは"見ているだけ"じゃなくて"聞いているだけ"なのだが、その本質は同じ。『SAW』で電話口から嫁と娘の悲鳴を聞いたゴードン先生が矢も盾もたまらず足を切り落とした、あのシーンに匹敵するもどかしさが我々の胸を締め付ける。

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 ただ、この後地下室に戻ってきたドムが、こちらの予想に反してあんまり怪我してないというのがいただけない。例えば、『グリーン・ルーム』なんかでは、部屋の中の主人公が外の敵たちに腕を掴まれ、押し合いへし合いする。主人公は絶叫するが、我々からは何が起こっているのか分からないので、彼の苦悶をただ見て、聞いているしかない。で、やっとこさ腕を室内に引き戻すと、なんと見る影もなくグサグサのブランブランに切り刻まれている。ここで我々は目を丸くする。「え…?! そんなことなってたん?!」 これが重要。あえて見せなかったものを後々見せるなら、それは我々のイマジネーションを上回っていないと締まらないのである。本作の当該シーンなら、目玉を片方くり貫かれているくらいで、始めてトントンであろう。

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 とはいえ、全体的には、やはり非常に丁寧な良作。かつて亡くした"身内"の思い出を胸に大自然へと冒険に繰り出した仲間たちが、あれよあれよと言う間にピンチに陥って疑心暗鬼を募らせていく、という『ディセント』的な立て付けはゾクゾクするし、自責の念と化け物の恐怖で次第に幻覚を見始めるルークの姿には、あ!もしかして"『デビルズ・フォレスト』オチ"?!とのハラハラ感を抱くことができる。彼らが"魔女の館"(?)に触れてしまう前後の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』的演出も、やっぱり抜群に恐い。それでいて、それら作品のパクりという読後感は微塵も起こらない。ルークが見る"森と地続きな酒屋の幻覚"は大変フレッシュだし、白眉たる"古(いにしえ)の神"のビジュアルもしっかりおぞましい。

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 あと、これはもはや筆者の妄想だが、かつての仲間たちが結局全員死んでしまい、ルークだけが生き残るというラスト。まぁ、よくあるホラー映画の最後だが、前提として描かれた彼らの現状と対比すると、家庭を持った者から付き合いが悪くなっていくという"おっさんの現実"のメタファーと考えてもいいのではなかろうか。筆者も先日大学時代の友人と飲んだ際、同居人が旅行中なのをいいことに「おい!お前ら、今日は俺、無制限やで!」と宣言したのだが、案の定「いや…今日は帰るから。」と冷たくあしらわれてしまった。で、実際、終電を前にしてみんな帰ってしまい、ポツリと取り残された筆者。あの孤独や虚しさと折り合いをつけるためなら、友人たちはみなモノノケに殺されたんだ……なんて妄想に浸りたくもなる。まったく、"大人"になるってのは、恐ろしいもんだよ。

点数:70/100点
 いかにも"B級"なタイトルやビジュアル・イメージからともすれば見逃してしまう作品だが、ホラー映画好き、あるいは、モンスター・パニック好きなら見て損はしない良作。そういや、筆者は、先述した友人たちとお盆休みにBBQをするんだった。危ないぞ。懐旧の情に囚われていては、またぞろ孤独に食い殺される。どうしよう。あぁそうか、一人で映画観りゃいいんだ。

(鑑賞日[初]:2018.7.28)

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Posted byMr.Alan Smithee

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