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キャッチコピー
・英語版:Some Missions Are Not A Choice
・日本語版:不可能が連鎖する

 Happily Ever After.

三文あらすじ:IMFのエージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)と彼のチームは、盗まれた3つのプルトニウムの回収を目前にしていたが、突如現れた何者かの策略で仲間の命が危険にさらされ、その最中にプルトニウムを奪われてしまう。イーサンとIMFチームは、プルトニウムを再び奪い返し、複数の都市の同時核爆発を未然に防ぐ新たなミッションを受けるのだが、この事件の裏側には、シンジケートの生き残り勢力が結成した"アポストル(神の使徒)"が関連しており、手がかりは“ジョン・ラーク”という正体不明の男の名前のみだった。やがてタイムリミットが刻一刻と迫り、チームの仲間や愛する妻ジュリア(ミシェル・モナハン)の命まで危険にさらされる等、いくつもの余波(Fallout)が降りかかる中、イーサン・ハントは、またしても"不可能な作戦(Mission Impossible)"に挑んでいく・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 もはや還暦も射程圏内に入ってきたというのに、むしろ年々スタントが過激になっていく"ザ・スター俳優"、トム・クルーズ。本作『ミッション:インポッシブル / フォールアウト』は、そんな彼にとって当たり役の筆頭に挙げるべき"生真面目スパイ"イーサン・ハントが大活躍する、シリーズ6作目にして最新作である。まぁ、これが世界中で大絶賛。中には『怒りのデスロード』に匹敵するアクション映画の大傑作!」と豪語する人までいる始末。日本公開日である8月3日(金)に早速鑑賞してきた筆者は、「さすがにそれは言い過ぎだ!」と反論したいのだが、同時にこうも言いたい。「『M:i』ファンのみんな! 遂に…遂に…"ハッピーエンド"だ…! 。・゜・(ノД`)・゜・。

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 『ミッション・インポッシブル』という作品のアイデンティティーは、いやがおうにも同ジャンルの金字塔である『007』シリーズとの対比の中でこそ定義し得る。では、両シリーズの違い、言い換えれば、主人公であるイーサン・ハントとジェームズ・ボンドの違いとは何だろう。前作に引き続き監督と脚本を勤めたクリストファー・マッカリーは、IGNのインタビューに対して「躊躇したり、怖がったりするのがイーサン・ハントとジェームズ・ボンドの人間的な違いなんだ。」と語っている。そうなんだよな。生粋の"スーパーマン"であるボンドとは違い、ハントは、すっごく人間味のある人物だ。端的に言うなら、真面目。そして、何より重要なのは、その童貞感である。

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 筆者は元ネタである往年の名作ドラマ『スパイ大作戦』を観たことがないから、ブライアン・デ・パルマの劇場版第一作『ミッション・インポッシブル』以降の話をするが、まずその第一作で我々が始めて出会ったとき、イーサン・ハントという男は、既に"恋した美女に裏切られるダメ男"であった。ジョン・ウーが手掛けた続く二作目は、ガラリと趣を異にし、イーサンが唯一"アクション大作の平均的主人公"のように女を守り、ハッピーエンドで締め括られる話。ルーサー・スティッケル(ヴィング・レイムス)がイルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)に言った"イーサンが本当に愛した二人の女"の内の一人は、きっと同作のヒロインにして"類人猿で最も美しい女"ことナイア・ノードフ=ホールのことなんだろう(コメントで指摘いただいたところによると、ナイアは数に入っていないらしい。悲しいことだ…。)。とはいえ、同作が"平均的なアクション大作"であったがゆえ、イーサンとナイアの関係も一作限り。束の間の幸せは、エバーアフターではなかった。

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 続く三作目では、後に『スタートレック』や『スター・ウォーズ』のリブートを次々と成功させる"再起動屋"ことJ.J.エイブラムスの手により、イーサンの伴侶ジュリア・ミードが登場。彼が愛した"二人目の女"である(先述のご指摘を前提にすると、ジュリアが一人目。二人目はイルサ。)。ザ・マクガフィン"ラビット・フット"を巡る争奪戦の末、遂にイーサンは結婚し、IMFから去る。これで終わってよかったんだよ。本シリーズを"童貞男子のラブ・ストーリー"として観てきた筆者のようなファンにとっては、誰が何と言おうと三作目が真の完結編なんだ。でも、イーサンに課された宿命は、それを許さなかった。『スパイ大作戦』ファンには大好評の四作目『ゴースト・プロトコル』で明かされるのは、 イーサンがジュリアと別れ、遠くからそっと見守っているという切なすぎる現実。いつなんだ。この生真面目童貞スパイのハッピーエンドは、一体いつになったら訪れるんだ。

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 そんな中、前作にあたる五作目『ローグ・ネイション』で一筋の光明が射す。同作のヒロイン、イルサは、英国諜報部員。スパイとしての性を殺せずジュリアとお別れしてしまったイーサンにとって、同じスパイであるイルサは、まさにお似合いの相手と言えるだろう。実際、同作は、イルサとイーサンのラブラブ・ルートを示唆して終幕した。確かにイルサは、抜群だ。『ロシアより愛をこめて』のタチアナ・ロマノヴァに酷似したキャラクターである彼女が仮に続編でイーサンと添い遂げたなら、それは『ロシアより~』の一作限りでポイ捨てされたタチアナへのアンチテーゼとして機能し、そもそもジェームズ・ボンドへのカウンターとして造形されたイーサン・ハントの冒険を締め括る上でこの上ないギミックとなるだろう。でもさ、ジュリアはどうなる? "大作スパイもの"にそんな期待は過度かもしれない。でも、イーサンが唯一生涯の伴侶と認めたジュリアとの決着を、何らかの形で描いてはもらえないだろうか…?

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 それを本作はやってくれたんだ。核爆弾を追ってカシミールの医療キャンプに赴いたイーサンらは、期せずしてジュリアに遭遇。ところが、ところがである。なんと彼女の隣には、新たなる伴侶が寄り添っている。ダメだ…。『ハン・ソロ』パターンだ…。切なさで過呼吸に陥りかけた筆者は、しかし、歓喜と安堵の涙を流す。実は悪の親玉ジョン・ラークその人だった"マン・オブ・スティール"ことヘンリー・カヴィルを打倒した後、病床で目覚めたイーサンとジュリアの対話。イーサンは、謝罪する。彼がスパイだから、スパイとしてしか生きられないから、よりメタな視点から言えば、イーサン・ハントが"大作スパイものの主人公"だから、ジュリアの結婚生活は破綻し、"ゴースト"として身をやつして生きなければならなくなった。俺に出会う前に今の旦那と出会っていれば、あんな無駄な時間や悲しさは無かったのに…。生真面目スパイの謝罪は、実に彼らしく、真っ当である。

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 しかし、ジュリアはこれを否定する。「違うわ。今の私を見て。」と。それは、そんじょそこらの"クソ女キャラ"が言いがちな強がりでもなければ、薄っぺらな優しさでもない。今のジュリアは真心から幸せなんだ。新たに愛する人を見つけたから。そう、それももちろんある。でも、本当に大事なのは、彼女が世界を飛び回って人々を救っているという現状である。彼女は言う。「あなたに出会ったから、私は自分の強さを知ることができた。」と。きっと彼女は、三作目での冒険とか、その後のイーサンの活躍とかを見て、彼に憧れ、「私だってああなれるかも…。」と思ったんだ。そして、彼女はこのように締め括る。「あなたがいるから、安心して眠れるのよ。」

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 世界を股にかけて日夜悪と戦い、世界を救う"映画の主人公"。彼が繰り広げる嘘みたいな"物語"に魅了され、看過され、遂には彼を目標になんかして、日々辛い現実と戦う"映画ファン"。そう、イーサン・ハントという一人のスパイと一般人であるジュリアの物語を締め括るため本作が用いたのは、まさに"(アクション)ヒーロー""観客"という関係性の適用であった。なんということだろう。なんと美しく正しい構図なのだろう。イーサンを始め、およそあらゆる人気作品のヒーローは、人気であるがゆえ休むことを許されない。作品ごとで言えば事件は解決しているが、俯瞰で見るといつ果てるとも知れない"不可能な作戦"を延々課されるのが、ヒーローの業である。じゃあ、それはただただ無益で悲しい円環なのかと言うと、そうじゃないんだよな。彼らは"偶像"として、我々に勇気を与え、ときにその人生を切り開く糧にさえなる。

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 この"ヒーロー"だったり"偶像"だったりというメタ的な概念は、本作において"守護天使"という言葉で表現されている。ここで注目なのは、このフレーズを口にしたのが、ヘンリー・カヴィル演じる悪役"ジョン・ラーク"ことオーガスト・ウォーカーだという点。彼は、ジュリアに資金を提供した自分を指して"守護天使"と言った。一方のイーサンについては、明示的に"守護天使"とは言われていなかったと思うが、最後にジュリアが言った「あなたがいるから安心して眠れる。」というのは、紛れもなくイーサンが彼女の"守護天使"であることを表している。つまり、本作のクライマックスたる断崖絶壁での一騎討ちは、"ジュリアの守護天使決定戦"だったと考えてもよいのである(もちろん、ウォーカーにはジュリアを守ってやろう、なんて意図はないが。)。

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 そして、ここで我々が思い出すべきは、同じように一人の女を巡ってイーサンが一騎討ちのクライマックスに挑んだ『M:iⅡ』である。生真面目スパイであるはずのイーサン・ハントが進化したてかと言うくらいサル顔の美女に恋をして、同じくその美人猿に惚れている悪役と、当時中学生だった筆者ですら赤面したほどガキっぽい痴話喧嘩を演じるシリーズ随一の駄作。しかし、本作は、それを活用した。『Ⅱ』では砂浜、本作では天然の石畳。荒涼、かつ広々とした空間で男と男が一騎討ちの死闘を演じるというお膳立ては両作共通。抽象的に言えば、どちらも"女の死をタイムリミットにした手の平サイズのデバイスの奪い合い"だし、イーサンが絶壁に取り付いてクライミングしだした瞬間、『Ⅱ』のアヴァンのモニュメント・バレーを思い出さないファンはいない。

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 なぜそんなことをしたのか。筆者は妄想するしかないが、まずはやはり、ルーサーの言葉にもあった通り、いくら駄作でも『Ⅱ』はイーサンが本当に愛した女の話だったからではないかな。そして、もう一つ。筆者には、「意味の無い"過去"なんかないよ。」というメッセージに思える。いくら趣の違う一本だったとしても、本作以前では『Ⅱ』がシリーズ中最も稼いだ作品だったのであり、そんな『Ⅱ』があったから『Ⅲ』が制作され、だからこそ、イーサンはジュリアに出会った。無駄じゃないんだよ。ジュリアがイーサンと過ごした時間だってそう。先ほどから駄作駄作と言っているけれど、公開当時に友人と連れだって劇場に足を運んだ筆者は、鑑賞後「めっちゃカッコ良かったなぁ!」なんてキャッキャッはしゃいでいた。で、その友人たちとは、今でも仲良しだ(そういや、スカッスッカッナッナッ♪が聴きたくてサントラも借りたわ。)。

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 あと、ヘンリー・カヴィルのキャスティング。これも忘れてはならない。先述の通り、本作のクライマックスは、メタに見れば"守護天使決定戦"とも言えるわけだが、イーサンが真の"守護天使"="ヒーロー"になるため、彼の敵役には"ヒーローの権化"たるスーパーマンを演じている役者をキャスティングしたのではないか、ということである。スパイ映画界の"スーパーヒーロー"たるジェームズ・ボンドとは違う"人間"として、我々はイーサンを見守ってきたわけだが、結局彼は"スーパーマン"を打倒し、いかにも映画的な"女スパイ"と結ばれることで"あっち側"に行っちゃった。でも、そうして始めて、彼は『ミッション・インポッシブル』を"卒業"できるんじゃないかな。007ならスーパーヒーローのままで延々続いていくんだけれど、『M:i』はそのアンチテーゼだ。だから、イーサンがスーパーヒーローになってしまった時点で、本シリーズの存在意義は消滅するのである。

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 というわけで、本シリーズを"童貞スパイの恋愛映画"として観てきた者にとって、本作は本当に本当に、これ以上は望むべくもないくらい最高の"完結編"だった。もちろん、これで完結とは限らないのだけれど、頼むからこれで終わってくれ。確かに、『インフィニティー・ウォー』に気を遣って登場させなかったらその『インフィニティー・ウォー』にも登場しなかったジェレミー・レナーが、ちょっと可哀想ではあるけれど。それでも、一作目のアヴァンと全く同じ手法でマッド・サイエンティストのデルブルック氏(クリストファー・ヨーネル)を罠にかけるアヴァンは最高だし、トム・クルーズの代名詞たる全力疾走も歴代最高にガッツリ描かれるし、シリーズ集大成としては申し分ない。百歩譲って、イルサとイチャイチャする続編ならあってもいいが、でも、もういいよ。ありがとう、イーサン・ハント。めでたし、めでたし…で、ゆっくり休んでくれ。

点数:92/100点
 『M:i』シリーズは、終わっていい。でも、お願いだから、『ダイ・ハード』で同じことやって、完結させてくれ。つまり、ジョン・マクレーンとホリーの和解である。マクレーン刑事だって、そもそもはイーサンと同じくチャンチャンバリバリのお気楽ヒーローに対するアンチテーゼとして生まれたキャラクターなんだし、やっぱりどうしても、マクレーン夫妻の関係性には、きっちりと何らかの決着を付けて終わってほしいんだよ。お願いします。

(鑑賞日[初]:2018.8.3)
(劇場:MOVIXあまがさき)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

Comments 2

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よし  

本当に愛した2人の女性は元嫁とイルサの事ですね。
ナイアではないです。

2018/08/08 (Wed) 08:47 | EDIT | REPLY |   
Mr.Alan Smithee  
Re: タイトルなし

えー、絶対ナイアの方がいいのに…(゜ロ゜)
可愛いのに…(´・д・`)
サルやけど…(;´д`)

ご指摘ありがとうございます!
早速本文に訂正入れときます!

2018/08/08 (Wed) 16:59 | EDIT | REPLY |   

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