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キャッチコピー
・英語版:unknown
・日本語版:最後まで席を立つな。この映画は二度始まる。

 "夏"が終わる。
 "俺たち"は終わらない。

三文あらすじ:とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。​本物を求める監督が中々OKを出さずテイクは42テイクに達する中、撮影隊に襲い掛かる本物のゾンビを前に、大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”…を撮ったヤツらの話・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 嗚呼…今年もお盆休み a.k.a. 社会人の夏が終わっちゃう。そんな中、『アベンジャーズ』だの、『ハン・ソロ』だの、『ジュラシック・ワールド』だの、『ミッション:インポッシブル』だの、『オーシャンズ8』だのといった超ド級の大作ひしめく2018年夏の映画シーンを席巻しているのは、無名の監督が無名のスタッフと共に映画専門学校のワークショップの一環として製作した、予算たった300万円の"ゾンビ映画"である。もっとも、厳密に言えば、本作は"ゾンビ映画"ではない。本作『カメラを止めるな!』は、俺たちのように映画しか夢中になれるものがないというボンクラな"少年"が作った"映画製作現場の再現VTR"である。

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 "再現VTR"というのは、何も本作をバカにした表現ではない。エンドロールを思い出してほしい。スタッフのクレジットと一緒に、本作を作った際の現場でのメイキング映像が流れる。しかし、よくよく見ると、この映像は"『カメラを止めるな!』の製作風景"ではないのである。本作は、第一幕として『ONECUT OF THE DEAD』という劇中劇、第二幕としてその放映当日までのスッタモンダ、そして、第三幕としてその放映中のスッタモンダという三幕構成になっているが、エンドロールの映像は、完全に第一幕の製作風景に限定されている。つまり、劇中で『ONECUT OF THE DEAD』を製作した日暮監督らの実際のモデルが本作のクリエーターたち、という構造になっており、言い換えれば、本作は、とあるゾンビ映画の製作実話を役者たちに演じさせた再現VTRという"てい"になっている、ともとれるわけだ。

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 だからこそ、本作の主人公である日暮監督は、これまでバラエティー番組の再現VTRばかり撮ってきたという設定なんだろうが、では、この"てい"が意味するところは何か。そんなもん決まってらあな。「俺たち、映画が大好きなんです! 映画作りって、本当に楽しいんです!」ってことだよ。いつもはほぼ妄想に近い妄想ばかり垂れ流している筆者だが、本作に限っては上記解釈が正しかった。なんと、俺たちの宇多丸師匠がパーソナリティーを務めるラジオ番組"ウィークエンドシャッフル"、通称"タマフル"のヘビーリスナーであるという上田慎一郎監督が、その後継番組に出演して語った本作への思いはこうだ。「もう一度、何の目的も無く映画を撮っていた中学生時代みたいな気持ちで、作ってみたんです。」

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 いいよなぁ…。こんな筆者にもたった一つ願いがあるとすれば、仲間たちと映画作りに明け暮れる少年期、これを過ごしたかった。イメージとしては、『スーパー8』のあの少年少女の感じ。同作だって、スピルバーグとJ.J.エイブラムスがかつてのノスタルジーを託した"映画大好きおっさんたちの青春映画"であった。ただ、そういうテーマを描く上では、比べるべくもなくやはり本作の方が正しい。いわゆる"商業映画"ではなく、あくまでワークショップの一環として作られた本作には、技術と資金の粋を集めたCGなど無い代わり、それゆえの圧倒的な説得力がある。

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 もちろん、ワークショップだからといってお気楽なわけではなかろう。技術力、資金力不足がゆえの苦しみも大きいと思う。でも、その"自主製作映画感"があるからこそ、"もう一度あの頃のように"というテーマは説得的だ。忘れちゃいけない。諦めちゃいけない。本当に大好きなものは何か。本当の自分とは何か。もう一度、誰の思惑も気にせず、自分自身を謳いあげろ。タイトル『カメラを止めるな!』の"カメラ"は、"夢"と言い替えてもいいし、"大好き"と言い替えてもいいし、もちろん"俺たち"と読み替えてもいい。ちなみに、厳密には"ゾンビ映画"ではない本作が、なぜあえてゾンビ映画をメイン・ギミックに選んでいるのか。理由はちゃんとある。

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 まず、『スーパー8』のアイツらもそうだったように、安い予算で比較的ハデな映画的見せ場を演出できるゾンビ映画は、自主製作映画において最もベタな題材だという点。CGなんていらない。金食いスターの出演も不要だ。血糊と白粉(おしろい)、これに加えてアイデア、パッション、サムマネーだけあれば、ゾンビ映画は作れる。それと、もう一つ。まぁ、こっちはちょっと妄想だが、ゾンビ映画をチョイスすることには、ダメ親父の"蘇生"というテーマが表象されているのかもしれない。早い、安い、できはそこそこなんて自分で言っちゃうダメ親父の日暮監督とか、いい歳こいて映画ばっか作っている上田監督とか、そんな彼らは、真っ当な"社会人"からすれば、死んじゃったも同然だ。でも、やつらは、己の信念を拠り所とし、リビング・デッドさながらに復活してみせるのである。

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 最後に一つ。鑑賞した誰しもが言っている通り、本作は大傑作だ。でも、そこにはやはり、若干の構造上の欠陥があるように思う。それすなわち、第一幕で『ONECUT OF THE DEAD』という架空の映画を丸々やっちゃうという構造。もちろん、宇多丸師匠の教えを守って作ったというだけあって、このくだりは"前フリのための前フリ"にはなっていない。役者、特に日暮監督はめちゃくちゃ魅力的だし、抜群のロケーションを余すところなく活用するダイナミズムはおもしろいし、何より今では目新しくないとはいえ、やはり30分以上もワンカットで撮り切るという手法は、大変興味深い。「これ、撮影大変やったやろうなぁ。どうやって撮ったんやろ?」 そんな我々の疑問への答え合わせである第三幕こそが、ちゃんと本作のエンタメ的白眉となっているのも見事だ。

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 ただ第一幕は、その内のいくつかの要素によって、前フリであることをわざとバラしている。例えば、日暮監督が"カメラ"に向かって「撮影は続ける!カメラは止めない!」と言うところとか、ヒロインの松本逢花さん(秋山ゆずき)が、明らかに次の展開待ちで「ここで何が起こってるの?!」と二回叫ぶところとか。まぁ、前者に関しては、削らない方が良いかも。まさに本作のタイトルでありテーマを言い表すシーンなのだし、ワンカットものにおいてカメラに語りかけるという趣向は、当該ジャンルの本質に切り込む大胆なやり口だ。つまり、宇多丸師匠も再三言及している通り、カット割り無きワンカットは、それゆえ逆にカメラマンの存在を意識させてしまうわけだが、本作は、むしろこの点こそをエンタメ・ギミックとして扱っている(カメラマンのぎっくり腰とか、その後のカメラワークとか、最高の伏線回収だった。)。

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 でも、さきほどの後者。すなわち、ヒロインの次展開待ちは、無くてもよかったように思う。なんやなんや、何が始まったんや?と思いながら、我々は『ONECUT OF THE DEAD』を観ている。その中で感じるいくつかの違和感、例えば、異常に気まずいキャラクター間のやり取りなんかは、ん?これ…わざと?それとも…小品がゆえの粗?というギリギリのラインを保てている。しかし、先述の台詞は、そのラインを踏み越えてしまうのである。そうすると、そこから先は、やっぱり俳優の華の無さや、展開のありきたりさ、そして、言いたくはないが、予算の少なさがどうしても気になってくる。うん…これはこれで頑張ってると思うけど、これくらいのゾンビ映画なんかいっぱいあるから、なんかあるんやったら早くそれ見せて? …なんて思っちゃった人もいるのではないだろうか。

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 とはいえ、だ。そんな無理矢理な粗探しをしたくもなるくらい、本作は、やはり大傑作である。近年、"答え合わせ系コメディ"でこんなにも笑える作品があっただろうか。ラストの"組体操シーン"や"親子肩車写真"くらい正しい"映画的大団円"の邦画があっただろうか。こんな傑作に出会えた。平成最後のこの夏を、俺たちは生涯忘れないだろう。

点数:90/100点
 "夢"を、"大好き"を、そして、"俺たち"を止めるな。そんなボンクラに向けた最高の応援歌。またくだらない日常が始まってしまうけれど、あともう少し頑張れそうな気がする。

(鑑賞日[初]:2018.8.10)
(劇場:TOHOシネマズ梅田)

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Posted byMr.Alan Smithee

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