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 聞けば気の毒、見れば目の毒

三文あらすじ:熟練の銀行強盗団は、建物内に閉じ込められてしまった。そこへ、目玉への以上な執着心に満ちた狂気の足音が迫る。血塗られた混乱に、もはや逃げ場などない・・・


~*~*~*~


 筆者が大好きな"銀行強盗もの"は、古くから映画における主要なジャンルの一つである。おそらくそもそもの起こりは、世界初の銀行強盗として名高い西部開拓時代のアウトロー、ジェシー・ジェームズをモチーフにした西部劇なのだろうが、その後、時代の移り変わりに応じて都度アップデートを繰り返し、今日に至る。筆者のオールタイムベストであるマイケル・マンの『ヒート』なんかは、アウトローな男たちの物語という点で西部劇の精神を受け継ぎつつ、大都会L.A.のクールさとハードさを織り込んだ当該ジャンルの大傑作であった。では、2016年に製作された本作『強盗狩り』は、どうだろう。大方の予想通り、まぁこれは贔屓目に言っても、みなが目くじらを立てるべき大駄作である。

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もちろん、本作は『ヒート』のようなビッグ・バジェットの作品ではない。あえて言うなら、いわゆる"B級映画"に属する作品であろう。よって、随所に散見される「え?!」という"突っ込みどころ"を一々非難するのは、せんなきことだ。例えば、主人公らが襲った銀行にたまたま居合わせた今話題の連続殺人鬼"ウィンドウ・キラー(目玉キラー)"(ヘンリー・ローリンズ)が、なぜそこにいたかと言うと、貸金庫に預けていた目玉を受け取りに来ていた、とか。「え?!」ですよね。「目玉って、要冷蔵なんじゃ…。」って、誰もが思う。彼は、行内の通気孔を移動するというゼノモーフ的立ち回りを見せるのだが、その通気孔が明らかに狭すぎる、とか。ガタガタと大きな音をたてる天井を強盗と人質が「……。」って見つめるシーンなんか、まるで目もあてられないコメディだ。

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 あと、立て籠った強盗が入り口のカーテンを締めない、とか。外から丸見えなんだよな。銀行強盗が立て籠りに発展した場合、まずやることは、当然内情の秘匿である。一人暮らしを始めた大学生だってまずはカーテンをかけるんだぞ。それをほったらかしにしたままお話が進むので、特殊部隊による突入のハラハラは皆無と言っていい。あろうことか、せっかくのガラス張りのドアをぶち破ることもなく「ガチャッ!」と開けて突入するのだから、拍子抜けを通り越して逆に勘繰ってしまう。入り口に目隠しやバリケードはおろか、鍵すらかけていないのは…もしや…強盗チームの…作戦…?! もちろん、そんなことはない。ただトンマでめくらなんだ、あいつらは。

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 などなど、"突っ込みどころ"は枚挙に暇がないが、先述の通り、この手の作品でそれを言い出すと切りがない。筆者が本作において一番がっかりしたのは、やはり"ウィンドウ・キラー"の消化不良具合である。最近だと、銀行強盗が金庫を開けるとなんとお宝ではなくモンスターが入っていた…!という『ザ・ボルト』や、こちらは銀行強盗ではないが、盲目の老人宅に入ったコソ泥が逆にそのジジイに追い回される"丼"こと『ドント・ブリーズ』なんて作品があった。本作もその系譜。であれば、"ウィンドウ・キラー"こそが白眉であり、彼のカリスマ性や恐怖、そして、なめてた場所が実はヤバかったというホラー映画の定番的プロットに注力してこそ、本作は目抜きな作品となることができる。

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 しかし、本作は、この魅力的な縦糸に対して、蛇足の側線を走らせた。過去に従軍経験のある強盗団のリーダー、ポール(トーランス・クームス)は、実は貸金庫に眠るカルテルの資金を狙っている正義のビジランテだった、そして、臨場した特殊部隊のボス、シンクレア(ジョン・J・ヨーク)は、実はカルテルと通じている悪者だったという設定である。もちろん、これを上手くさばくだけの技量があればいいよ。『インサイド・マン』みたいに、三つ巴のドラマを絶妙のバランスで描いたなら、それは傑作だ。しかし、本作にそんなクオリティなど望むべくもない。カルテルの存在を起点にしたクライマックスは薄っぺらだし、何より、全編にわたって強盗と警察が対峙する展開になると、ことごとく"ウィンドウ・キラー"の件が忘れ去られるのである。目で見て鼻で嗅いだとて、すっかり忘却の彼方だ。

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 いっそのこと、警察は来なくてもよかったんだよ。せっかく閉店間際のため警備員がおらずセキュリティも緩い支店という画期的な舞台設定があるのだから、警察が嗅ぎ付けなくてもなんとか理屈は立つ。もちろん、そんな舞台など現実にはあり得ない。これは、銀行に勤める筆者の同居人にも確認したからたぶん確かだ。でも、一応少ない予算と乏しいアイデアの中で頭を捻った跡は、見てとれるじゃないか。いや…店じまいでバタバタしてて…って…その辺のスーパーじゃないんだから…。とか、いやいや…カルテルは何をボケッとしてんの?とか、色々あるよ。ただ、少なくとも筆者は、当該ジャンルにおいて閉店間際の銀行という設定を見たことがなく、着眼点の新しさを感じた。

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 で、そんな舞台だから楽勝だ!と余裕ぶっこいてた強盗たちが、神のイタズラでその場にいたカリスマ殺人鬼相手に七転八倒の戦いを繰り広げる。これだけで良かったじゃない。そうすりゃ、先述の『丼』とか、そこまでの出来を望まなくても例えば『ワナオトコ』とか、そんな良作になっていたかもしれないんだ。もちろん、もっとしっかりと"ウィンドウ・キラー"のキャラを作り込んで、きっちり描写してね。被害者の目をコレクションする殺人鬼という基本設定は、これまた中々良い。目ってのは見るための器官で、映画ってのは見るエンターテイメントだ。これを上手く活用すれば、宇多丸師匠曰く、映画において最もおもしろい展開の一つである"見る見られる関係"をやれたんじゃないか?

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 人質を見張っているつもりが、実はヤツにこそ観察されていた、とか。目的の金に目がくらんで本当に根元的な"生"という目的を見失っていた、とか。そんなんできたでしょ。その上で"ウィンドウ・キラー"はもっと超常的な敵にすべきだったのではなかろうか。現状の彼は、明らかに『SAW』のジグソウ以降主流になった"ただのおっさんだけどアイデアとパッションで頑張るスタイル"の殺人鬼だ。でも、そんな殺人鬼は、ホームでこそその実力を発揮できる。『ワナオトコ』のコレクターだって、主人公が気付いたときには既に他人の家を我が物にしていた。これに対して本作の"ウィンドウ・キラー"は、ふらっと立ち寄った銀行で強盗に巻き込まれたアウェーのプレイヤーである。であれば、ジグソウ・スタイルだと説得力が皆目無いんだよな。

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 そこで、ジグソウ以前に主流だったジェイソンとかフレディみたいな"絶対的殺人鬼"に近づける。人間離れした神業で次々と殺されていく仲間や人質。疑心暗鬼が極に達し、同士討ちなんかを始める強盗団。なにかしらのトンチ、まぁ例えば、強盗団は下調べで図面が頭に入っているから上手く立ち回れる、とかでなんとか勝利するも、ふと見渡せば、辺り一面血の海。心も体もボロボロで一人放心するリーダーは、はっとする。殺人鬼なんて…本当にいたのか…? 殺人鬼の最期は、その死亡が明確でない倒し方、例えば、金庫に閉じ込めるとかがいいだろう。はっと我にかえると金庫のドアを叩く音がしない、とかさ。折よく駆け付けてくるパトカーのサイレンと照明。弱り目に祟り目とばかりに、安堵とも狂気ともつかない表情で笑い続ける主人公。終幕。

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 これの方が良くない? …いや、単なるお目汚しかな。

点数:40/100点
 というわけで、本作は駄作である。『ダークナイト』『インサイド・マン』の随分低レベルな模倣でしかなく、『丼』『ワナオトコ』の足元にも及ばない。では、筆者はなぜそんな作品を観たのか。今ならNetflixで鑑賞できるというのが一つ。それから、原題『The Last Heist』に対して『強盗狩り』という魅力的なヘンテコ邦題。タイトルさえ見なければ、鑑賞欲も沸いてこなかったろうに。とはいえ、最大の原因は、やはりタイトルから本作のクオリティを見抜けなかったこの一隻眼の無さ、であろう。

(鑑賞日[初]:2018.8.27)

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Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

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