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キャッチコピー
・英語版:unknown
・日本語版:このふたり、小さくなるほど、強くなる。

 蟻の思いも量子に届く。

三文あらすじ:頼りなさすぎるヒーロー"アントマン"(ポール・ラッド)と、完璧すぎるヒロイン"ワスプ"(エヴァンジェリン・リリー)。ふたりの前に、すべてをすり抜ける神出鬼没の謎の美女"ゴースト"(ハナ・ジョン=カーメン)が現れ、アントマン誕生の鍵を握る研究所が狙われる。ユニークなパワーと微妙なチームワークで、アントマンとワスプ(Ant-Man and the Wasp)は世界を脅かす“秘密”を守り切れるのか・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 前作から3年の幕間を経て、アリンコ・ヒーローが帰ってきた。本作『アントマン & ワスプ』は、こないだ集大成前編の『インフィニティ・ウォー』で世界中を熱狂させたマーベルが、ユニバースの記念すべき通算20作目としてリリースしたスーパーヒーロー超大作である。まぁ、"3年の幕間"といっても、我らがアントマンは『シビル・ウォー』に出ていたわけだし、"超大作"といっても、同ユニバースの他作品と比較すれば、そのコンセプトは随分とこじんまりだ。たぶんそんなイメージもあって、日本に先んじて公開された諸外国での興収は、(あくまでMCU作品としては)決して芳しいものではなかった。しかしながら、それはやはり単なるイメージがゆえだろう。実際に観りゃ分かる。本作が提供する2時間強。これは、まさに不断の至福である。

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 まずは、やっぱり我々が一番期待していた女版アントマンことワスプ。このカッコよさは抜群である。女性ならではのしなやかな体技。ウィングによる華麗な飛翔とブラスターによる痛烈な一撃。"蝶のように舞い、蜂のように刺す"を体現する新ヒーローの一挙手一投足が、我々のハートを鷲掴む。そんなワスプ嬢は、その仮面を脱いでもなお魅力的だ。前作から引き続きエヴァンジェリン・リリーが演じるホープ・ヴァン・ダインは、本当に可愛い。髪型が変わって前作のゴリラ感が消滅してしまった点には、若干の味気無さを覚えないでもないが、やはり彼女の"デレ・デレ感"は至高。『シビウォ』の一件でスコットに激怒しているという"てい"なのに、彼女は終始デレまくる。これも人によっちゃあ味気無く思うのだろうが、ラブラブ至上主義の筆者にとっては、とても心地良かった。

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 その他のキャラクターも相変わらず良かった。アントマンことスコット・ラングは、やっぱりチャーミングなダメ親父。その反面、バッキバキの肉体によってヒーローとしての説得力も失わない。この肉体をさらっと見せるだけで、彼が2年間の軟禁生活の中でもトレーニングを怠っていなかった、ということを想像させるのはスマートだと思った。アントマンは、キャップみたいにその人自身が永続的に強くなるタイプのヒーローではない。質量を維持したまま縮むため、その間は強い、という超人である。でも、いくら強くたって、トンカチで叩き潰されたらおしまいだ。だから、アントマンの縮小能力の本質は、実は翻弄にある。ということは、等身大のときもちゃんと強くないといけない。よって、彼には不断のトレーニングが必須ということになる。この点を本作は、スコットの肉体だけでサラリと説明する。もちろん、この省略が可能なのは、前作でしっかりとトレーニング・シーンを描けていたからだ。

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 それから、スコットの親友ルイスを演じる"俺たちのペーニャ"ことマイケル・ペーニャは、本作でもやっぱり最高だった。前作で我々を魅了した"話がどっか行っちゃう回想シーン"は、一ヶ所ながらバッチリ登場。相変わらず爆笑必至である。加えて、本作の当該シーンは、その前フリが抜群。ラボの場所を吐かせるため、闇社会の首領ソニー・バーチがルイスに自白剤を投与しようとするのだが、ここの"こいつはおもしろいことになるぞ感"は尋常ではない。あとは案の定+α。"火に油"の現代版として"ペーニャに自白剤"と言いたくなるほど、ワクワクする前フリである。あと、その闇社会の首領たるバーチ氏を演じたウォルトン・ゴギンズ。これも良かった。何が良かったかと言うと、彼の適切な配役。『トゥーム・レイダー:ファースト・ミッション』でも彼は敵のボスを演じていたのだが、顔面の造作や体躯が、やっぱりどう見ても小物なんだよな。そこを本作は、きちんと実は小物の悪党として描いており、おぉ!分かってるやん!って感じだ。

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 アクション面も本当に素晴らしい。今やすっかりお馴染みとなった縮小&拡大アクションは、前作の比でないほど実に様々なアイデアと融合していて、見せ場には事欠かない。同じく本質としては"消失系"の能力であるゴーストとワスプが爆走する車中で"掴みどころの無い掴み合い"を演じるシーンは、フレッシュかつ爆笑。筆者が特に感銘を受けたのは、森のシーンで、ハンク(マイケル・ダグラス)、及びホープのピム親子が逃走のためラボを縮小した瞬間、その背後に潜んでいた無数の追っ手が露になる瞬間である。お宝たるマクガフィンがラボ=巨大なビルというアイデアも本シリーズならではで最高におもしろいが、当該シーンは、そんな設定を最大限活かしつつ、同時に我々にフレッシュな驚きと笑いを提供してくれる、本作屈指の名シーンだと思う。

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 初代ワスプの救出というお題目も良かった。正確には、科学者たちの頑張りに筆者は感銘を受けたのである。異空間で行方不明になった肉親の救出というギミックは、本作同様マーベル原作のコミックを本作同様ディズニーが映画化した『ベイマックス』でも見られた仕掛け。そして、これを巡る展開も、両作に共通である。すなわち、『ベイマックス』では、娘の失踪に絶望し復讐の鬼と化したキャラハン教授が、最後まで科学者であることを諦めなかったビッグ・ヒーロー6に敗北した。これは"科学"、すなわち、"真剣に考え実践する"という人類にとって最強の武器の肯定である。本作においても、主人公らは、あくまで科学的なアプローチでミシェル・ファイファーの救出を模索する。一時的に悪役っぽかったモーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)が最終的に救われたのも、これを前提とすれば自明。彼だって、あくまで科学者として"娘"を救おうとした男だ。

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 他にも良いところを挙げだすと切りがない。モーフィアスとスコットが自身の"巨大化記録"を張り合う場面の、まるでおティンティンの大きさを自慢し合う男子のようなボンクラ感には、ニヤつきを止めがたい。あらゆるアイデアが詰め込まれたカーチェイス・シークエンスは、特にその開始時の演出が『ベイビー・ドライバー』っぽくてうれしくなる。元々、前作はエドガー・ライトが監督するはずだったから、オマージュの可能性は無くもないだろう。スコットの娘キャシー(アビー・ライダー・フォートソン)の"パートナーぶり"も最高。特に、ジャイアント・マンの出現を報じるニュースを見るあの"やるじゃねぇか、相棒"顔である。ペーニャに続く非白人コメディ・リリーフとして配されたジミー・ウー(ランドール・パーク)の愛くるしさも良い。今回は巨大化したアリがやけに活躍するからモンスター・パニック好きはうれしくなるが、ラスト、ノートパソコン前で"ドライブ・イン・シアター"を楽しむスコットとキャシーとホープが鑑賞している作品は、"蟻モンパニ"の古典的傑作『放射能X』だ。

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そんな感じで、開幕からずっと"楽しい"の連続で魅せる本作であるが、最後に数点だけささやかな不満を述べておこうと思う。まずは、ミシェル・ファイファーの"超治療"。せっかく科学者たちが科学を拠り所として頑張ってきたのに、量子世界でなにやらよく分からない能力を獲得していたミシェル・ファイファーは、「ふんぬ!」の一声でゴーストを(一時的に)治癒してしまう。こちらからすれば、なんじゃそのご都合主義は!ってなもんだ。彼女の救出前にモーフィアス&ゴーストが主張していた"ミシェル・ファイファーのエネルギーを抽出すればオッケー"というのも、理屈が全くあやふやなので、クライマックスのハラハラに水をさしていた。

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 ただまぁ…一応、一部人を越えた存在になったという事実によって、30年間も一人ぼっちだったという、お気楽に観る上でノイズにもなり得る設定の物悲しさは、いくらか緩和されているとも言えるだろう。あとは、ユニバースの整合性という観点からも擁護可能か。あの世界には、既に"マジ魔法使い"がゴロゴロいますからね…。ただ、この『アントマン』というシリーズは、ユニバースの箸休めの役割も担っている。前作は『エイジ・オブ・ウルトロン』と『シビル・ウォー』という二大祭りの合間に公開されたのだし、本作だって、『インフィニティ・ウォー』という史上最大のカーニバル直後の作品だ。だから、舞台立てのこじんまりさだけでなく、能力的な部分でもあくまで地に足のついた展開をやってほしかった気もする。ちなみに、量子世界って既にファンタジーやん!と思う人がいるかもしれないが、ありゃあ、やっぱり立派な科学だよ。科学は仮説を排斥しない。では、なぜ量子世界にクマムシがいるのか。それは、ぜひ『スター・トレック:ディスカバリー』を参照してもらいたい。

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 あと、ヒーローものであるにも関わらず、本作がやっていることは結局ただの内輪話という点に不満を覚えた人もいるだろう。前作もこじんまりしたお話ではあったが、まだスーツの軍事転用を阻止するという目的だったため、間接的には世界を救うためのヒーロー譚になっていた。しかし、本作は、全く以て内々でのイザコザだ。一応、『放射能X』鑑賞会の際、キャシーに「大きくなったら人を救う仕事がしたい!」と言わせることで、"ヒーローの意義"を保てているようには思うが、それでも全体としては、勝手にやっとけよ!と思われても仕方ない。とはいえ、本作の内輪展開によって、アントマン&ワスプの『インフィニティ・ウォー』への不参加をある程度理由付けられているようにも思う。ミシェル・ファイファーを巡る本作のアレコレは、おそらくサノス襲来より前の出来事ではあろうが、あれだけドイツでの一件が確執の原因となり、それを乗り越えて家族が再び一つになったのだから、ちょっとドーナツが飛来したくらいでは、「いやいや、新たなる"家族"(ゴースト)の治療が優先だ。」と判断したことも、合理的ではないだろうか。

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 あと、些細なことだが、ハンク・ピムの"業"については、もちっと丁寧に処理した方が良かったかもしれない。本作でのハンクは、トニー・スターク顔負けの冷徹な科学者として紹介される。実力がないからクビにしたモーフィアスには恨まれ、同じように扱ったゴーストの親は実験が失敗して死亡し、ゴーストは心と体に憎しみと呪いを刻み付けて生きている。我々がクライマックスでカタルシスを得るためには、これらの点に対する贖罪が必要だ。でも、本作は、そんなことに時間を費やす代わりに、ゴーストの親の一件を"逆恨み"でサラッと処理する。まぁ、モーフィアスの件は、実力無きものの逆恨みでいいよ。『アイアンマン2』のウィップラッシュみたいな感じかな。科学者に湿っぽい馴れ合いなど不要だ。しかし、一方のゴーストの親については、「アイツは俺の設計図を盗んで逃げたんだ。」と当のハンクに言わせるのみ。せめてモーフィアスにこれを言わせないと、説得力がまるでない。

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 あと、ゴーストの苦しみももっと丁寧に描いた方が良かったのではないかな。幼い頃に突然"触れられない体"になってしまい、その後、政府の下で殺人マシーンに仕立てあげられたゴースト。しかも、現時点での余命はあと数週間ときている。確かに悲運な娘さんだ。しかし、本作には、彼女がターゲットを惨殺しているシーンとか、彼女の体が実際に壊れていっているということを画的に見せるシーンがない。いつも体が痛いのよ…と彼女は言う。まぁ、演じるハナ・ジョン=カーメンさんの演技力である程度の切実さは伝わるが、映画的にはやっぱり画で見せないと。ここは、絶対に『スパイダーマン3』サンドマン方式を採用すべきだったと筆者は考える。つまり、同作でサンドマンが指輪を拾おうとするも、手がサラサラで掴めないっていうあのシーンを、ゴーストにも適用すれば良かった。そうすれば、彼女はその苦しみに映画的な中身の伴った真の良キャラ足り得ていたであろう。正直、現状では、彼女の体が日常生活でどう"不便"なのかが不明瞭なんだよな。

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 あ、そうそう。ユニバースとしての"おまけ"は中々良かった。エンドクレジット後のシーンで時間が『インフィニティ・ウォー』に追い付き、"アントマン組"ではハンク、ジャネット、ホープのピム一家が全員指パッチンの餌食になったことが明かされたり、一人だけ量子世界に取り残されたスコットが、おそらくは今後"時間の穴"(だっけ?)を通るのだろうことが示唆されたりと、『アベンジャーズ4』へのブリッジとしてのサービスも忘れていない(『アベ4』では、生き残ったアベンジャーズが時間跳躍を行い、歴史改変で以てサノスに抗するのではないか?とファンの間ではかねてより言われていた。)。というわけで、本作『アントマン & ワスプ』は、「こうしたらもっと良かったのに…。」という不満は若干あるものの、総体としては本当に本当に楽しい傑作だった。

点数:88/100点
 興収こそふるわなかったものの、もはや箸休めとは侮れないマーベル渾身の傑作。遂に正式に俺たちのガンちゃんを更迭の上、『ガーディアンズ Vol.3』の公開を延期しやがったから、筆者は今ディズニーが大嫌いだ(まぁ、元々目されていた公開時期は、決して『ガーディアンズ3』と明言されてはいなかったのだけれど。)。でも、これだけおもしろいものを見せられると、やっぱりそんな怒りも龍の髭を蟻が狙うような虚しい感情だったのかもな。そう痛感させられた。

(鑑賞日[初]:2018.8.31)
(劇場:MOVIXあまがさき)

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Posted byMr.Alan Smithee

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