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キャッチコピー
・英語版:Justice Isn't A Crime.
・日本語版:unknown

 くたばれ、兄弟。

三文あらすじ:家族の牧場を手放したくない。タナー(ベン・フォスター)とトビー(クリス・パイン)のハワード兄弟は、連続して銀行を襲撃。彼らを追うことになったのは、退職目前のテキサス・レンジャー、マーカス・ハミルトン(ジェフ・ブリッジス)だった・・・


~*~*~*~


 本作『最後の追跡』こと『ヘル・オア・ハイウォーター』は、前々回の第89回アカデミー賞で、作品賞脚本賞助演男優賞編集賞の四部門にノミネートされた銀行強盗映画である。89回のアカデミー賞と言えば、みんな大好き『ラ・ラ・ランド』を差し置いて『ムーンライト』が作品賞を受賞し、しかも、『ラ・ラ・ランド』が作品賞!」との誤発表まであった、ある意味メモリアルな回。そんな中、本作は特に目立つこともなく、まるでテキサスの銀行強盗のようにサラッと去っていった。でも、それは、必ずしも本作が凡作であるということを意味しない。むしろ本作は大変な良作である。こと銀行強盗ファンのみなさんにとっては、必見の傑作と言っていいだろう。

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 まず、タイトルである『Hell Or High Water』。直訳すると"地獄、あるいは洪水"だが、我が国のことわざに準(なぞら)えれば、"例え火の中、水の中"となるだろうか。筆者なりの理解だと、もはや神無きテキサスの片田舎で、それでも、例えどんなに過酷な状況だろうとも、"俺たちの正義"を貫くんだという主人公兄弟(特に弟)を象徴したタイトルである。そもそも、銀行強盗という"犯罪者"は、法に則った慈悲無き世界における"ヒーロー"として誕生した。史上初の銀行強盗であるジェシー・ジェームズが、西部開拓真っ盛りの当時、銀行の過剰な金利に苦しむ市井の人々から英雄として奉られていたという"伝説"は、有名であろう。

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 本作は、そんな伝統的な銀行強盗ものの現代版である。ほぼほぼゴースト・タウンと化した町並みに金貸しの看板が乱立する冒頭。ちょっと色を飛ばしているのか、全体的に白っぽくて、それすなわち、カラッカラ!って感じのビジュアル・イメージ。当たり前のように「犯人見つけたら俺が射殺するっす!」と豪語する地元のおっさんたちは、"古き良きテキサス男"の象徴でもあり、今どきの価値観からすれば、「え…テキサスって、まだ "そんな感じ "なん…?」と我々を驚愕させるポイントでもある。その場で監視カメラの映像を確認できないミッドランズ銀行のポンコツ警備ぶりもそうだよな。テキサス西部のこの界隈は、時代に取り残され、干からびちまった土地なんだ。

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 さすがに強盗兄弟を英雄視する民衆はいないが、ダイナーのウェイトレスであるワガママ・ボディの美女ジェニー・アン嬢(ケイティ・ミクソン)が、一応その役割を担っている。強盗兄弟の弟トビーに肩入れし、保安官への証言を拒否するジェニー。もちろん、一義的には、彼女はクリス・パインのハンサムさにあてられて職務中にも関わらず逆ナンしようとした淫乱給仕係である。しかしながら、俯瞰で見ると彼女は、例え法には反していても、我が母親を死に追いやった銀行に復讐し、加えて我が子の未来も守ろうとしたトビーにとっての"味方"に他ならない。より端的に「銀行の横暴は見るに耐えないから、俺はあんたらの味方をする。」と発言する弁護士も登場するが、個人的には、やはりジェニーが醸し出すある種の"哀愁"こそが、本作の肝であるように感じた。

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 結局、本作を構成するパーツは、どれもこれも"B級"なんだよな。強盗兄弟は決してカリスマではないし、彼らを追う保安官は定年間際の老いどれだ。正義のために事を為す強盗譚なら、当然"悪"であるべき銀行は、最新の装備でバシバシに武装している方が端的なのだが、先述の通り彼らのセキュリティはお粗末そのもの。閉じた世界でそれでも色気付こうとするウェイトレスには、寂しさを感じずにはいられない。結果、「分かってるさ…。俺たちゃ古臭い田舎もんだ…。でも、ここで生きるしかない。ここで "俺たちの正義 "を貫くしかないんだ…!」って雰囲気が醸し出されているように感じた。でも、結果、憎しみとか後悔とかを抱え込んで、「何やってんだろうなぁ、俺たちは…。」みたいな。そんな哀しさもある。

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 あと、筆者同様、同性の兄弟を持つおっさんなどは、兄弟ものとしての本作にも注目すべきであろう。本作の強盗兄弟、兄のタナーと弟のトビーは、比較的"正統的な兄弟像"に則ったキャラクターだ。ホラばかり吹いて道を外れてしまった兄。地に足のついた冷静な弟。ジェシー・ジェームズもまた兄フランクと共に銀行強盗を繰り返したわけだが、弟が射殺され兄が生き残った彼らに対し、本作の兄弟は逆の顛末を辿る。往々にして主人公が弟の兄弟ものでは、兄が蔑ろにされるもので、本作のタナーも大いに粗野でマヌケなバカ兄貴として描かれているのだが、それでも弟思いの兄という一点はしっかり強調されていてとても良かった。トビーを逃がすため、タナーが死を予期しつつ別れるシーンの最後の台詞が「Fuck You!(笑)」だったのも、"兄弟"というものの関係性を端的に表現できていて良かったように思う。

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点数:82/100点
 カラッと突き抜けた荒野にも関わらず、言い様のない閉塞感が漂う絶妙な雰囲気。その中で、"ここでしか生きられない野郎共"が、醜く足掻く。そんな傑作。"アメリカ論"という観点からは、『ノーカントリー』との異同についても検討すべきなのかもな。同作は確か、古臭い田舎に現代の"今そこにある悪"が侵入してきて、嗚呼…もう俺たちの見知った国じゃねぇんだ…みたいな、そんな余韻が漂っていように記憶している。漠然とした全体の雰囲気は、本作も同様だ。ジェフ・ブリッジスとジョシュ・ブローリンってどことなく似てるし。でも、本作は、『ノーカントリー』とは対照的に"相変わらず古臭いまま取り残されたアメリカ"がそこにあるような気がする。あと、脚本のテイラー・シェリダンが"フロンティア三部作"と銘打った『ボーダーライン』、本作、『ウインド・リバー』についても言及すべきだろうか。んんん…めんどくせぇ。くたばっちまえ。

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Posted byMr.Alan Smithee

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