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キャッチコピー
・英語版:If You Ride Like Lightning, You're Gonna Crash Like Thunder
・日本語版:その生き方は、まるで稲妻 ―

 明日に向かって"吹かせ"!

三文あらすじ:粗野で孤独なバイク乗りの男ルーク(ライアン・ゴズリング)は、銀行強盗を重ねる。犯人を追う新人警官エイヴリー(ブラッドリー・クーパー)。やがて、二人の対決は、世代を越えた"宿命"の展開を見せるのだった・・・


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 本作『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』は、鮮烈なデビュー作『ブルー・バレンタイン』で映画ファンに「最低!だけど最高!」と言わしめたデレク・シアンフランスが、その次作として2013年にリリースした銀行強盗映画である。主演には、『BV』から引き続き出演したみんな大好きライアン・ゴズリング、及び『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のロケットの声優としてお馴染みのブラッドリー・クーパー。ヒロインには、『ワイスピ』シリーズのモニカとしてお馴染みのエヴァ・メンデス。他にも、みんな大好きレイ・リオッタとか、みんな大好きデイン・デハーンとか、超実力派キャストによる名演合戦が、本作の見どころの一つである。

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 本作は、前編・中編・後編の三部構成になっている。まず前編は、サーカスの曲芸バイク乗りであるライアン・ゴズリングが、銀行強盗する話。ベン・メンデルソーン演じるロビンと組んで犯行に及ぶ彼のスタイルは、オーソドックスな"ヒット&アウェイ方式"である。銀行に突入⇒警報器が押される前にフロアを掌握⇒金持ってバイクでトンズラ、というわけだ。本作は、必ずしも銀行強盗のスタイリッシュさを描く作品ではなく、ましてや銀行強盗のヒロイックさを提示する物語でもないため、ゴズリングの仕事ぶりもいささか素人臭い。しかしながら、やはり絶大なる"ゴズリング力(りょく)"によって、我々は納得させられる。(未婚の)嫁と子供を取り返すための資金集めだったはずの強盗それ自体が次第に目的になってしまうという部分も、彼の繊細でいて芯はワイルド(あるいは、その逆)という絶妙の演技によって説得的に描かれている。

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 で、調子に乗って一人で押し入ったゴズリングは、案の定失敗し、まさかまさか警官の銃弾で死んでしまう。ここでスパッ!と"主役"が交代して中編に突入。いったんは英雄として囃し立てられたブラッドリー・クーパーが、署内の悪徳刑事たちに目をつけられ、悪事に加担させられそうになってスッタモンダという警察汚職ものになる。あるいは、"身内"を裏切って密告する主人公とかは、『グッドフェローズ』っぽい。実際、同作の主人公を演じたレイ・リオッタが、おそらくブラッドリー・クーパーを"処分"するため夜の松林に連れていくシーンとかは、かなりの『グッフェロ』感。そりゃ、レイ・リオッタに夜の林道に連れていかれたら、筆者だってクーパーと同じく逃げ出すさ。

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 その後、15年くらい時間が進んで後編に突入。ここでは、デイン・デハーン演じるゴズリングの息子とエモリー・コーエン演じるクーパーの息子が、互いの素性、すなわち、親の因縁を知らずにつるみ始める。このパートでは、ゴズリングやクーパーのような実力派超絶イケメン・スターの活躍がメインではないため、やや失速感を感じる人もいるだろう。しかし、まさに次世代を担う若手俳優もまた素晴らしい。特に我らがデハーンくんは頑張っている。彼の出世作である『クロニクル』同様、ハウス・パーティーでの童貞卒業が失敗し本格的に荒れ始める、という展開は、デハーン・ファンなら要チェックだ。

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 "童貞学校"の卒業間近で留年してしまったデハーンくんは、その後、銃を持ち、自宅でシャワーを浴びたばかりのエモリー・コーエンを急襲し、帰宅したブラッドリー・クーパーを脅して"あの松林"につれていく。そう、あのレイ・リオッタの松林である。本作では、それぞれのパートにおいてキレイに対になっている展開や演出が多い。例えば、レストランの裏口から出てくるエヴァ・メンデスに"男"が近付くシーン。初めは、強盗した金を渡そうと近付くゴズリング。その後、レイ・リオッタが押収してガメた金を返そうと近付くクーパー。二人の男の因縁が、"金"と"デハーンの母"をかすがいにして具体的に接触する場面である。

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 で、"あの松林"は、当然クーパーがスタコラサッサと逃げた中編のシーンと対になっている。あのときのクーパーの判断は、賢明なものに思えた。レイ・リオッタは絶対にクーパーを殺すつもりだったのだし、もしかしたら、デ・ニーロとジョー・ペシが待機しているかもしれない。松林は"処刑場"だったのである。しかし、デハーンと共に訪れた松林は、その本来の姿を露にする。象徴的なのは、ガックリと膝をつき去っていくデハーンを見つめるクーパーのショット。クーパーは、松の木と松の木の間にスッポリとおさまって……いや、"閉じ込められて"いて、松の木がまるで檻の格子のように見える。

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 "処刑場"に見えた町の外れの松林は、実は脱出を阻む檻だった。賢明な判断で逃げ出したかに見えたクーパーは、実は悲しき因縁の渦中に戻っていっただけだった。しかし、我らがデハーンは、この因果から脱出してみせる。宇多丸師匠曰く、本作はあらゆるカットが食いぎみで次のカットに移り、それすなわち、登場人物が自ら能動的にその場面を去ることがないのだが、そんな中、バイクに乗ったデハーンが颯爽とフレーム・アウトしていくラスト・シーンが、とても美しい。己の"宿命"に苦悩し、しかし、自らの能動的な判断によって"松林の先(The Place Beyond The Pines)"を目指すデハーン。暗転後、うっすらと鳴り響くサイレンの音は、彼の進む先が決して安息の地ではないことを示唆しているが、それでも、デハーンは、今確かに一歩を踏み出したのである。

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 例えすぐ先に悲劇の未来が待ち構えていたとしても、自らの選択でその渦中に飛び込んでいく。その際の一瞬の輝きこそが、我々ちっぽけな人間に残された最後の尊厳であり、"男の生き様"なんだ。"宿命"から逃れるというのは、結果的に安息を得ることでは必ずしもなく、きちんと己を打ち立てられるかにかかっている。この感じは、本作同様"銀行強盗映画"の金字塔であり、同時にアメリカン・ニューシネマの代表作でもある『明日に向かって撃て!』とも共通する部分であろう。同作のブッチとサンダンスもまた、小屋から飛び出せば確実に命を落とす状況で、自らの未来を選択し、散っていった。

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 そういう意味じゃあ、本作のラストは、『明日撃て』の拳銃がバイクに置き換わった"バッピーエンド"(一見バッドエンドだが、当事者にとって実は何よりのハッピーエンドの意。)とも言えそうだ。そして、このバイクというガジェットも、極めて美しい対を形作っている。すなわち、デハーンの父であるゴズリングが愛用していたのは、オフロード・バイクだった。筆者はバイクに全く明るくないので偉そうなことは言えないが、少なくとも作中におけるゴズリングのバイク使いは、球状の檻の中をグルグル回る曲芸と銀行強盗時の移動のみ。つまり、ゴズリングのオフロード・バイクは、同じところ、より具体的には、松林の内っ側のあの町の中でグルグルするだけの近所使いの乗り物となっている。

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 一方、グルグルと町に囚われていた親父とは違い遂にその先へと旅立つデハーンのバイクは、素人のイメージで言うところのアメリカン・タイプである。ベタな親子物語なら、そこは当然親父と同じタイプ、あるいは、まさに親父が愛用していたバイクそのものを受け継ぐだろう。しかし、それじゃあダメなんだ。ゴズリングのオフロードは、町の外に続くいつ果てるともない道路を地平目掛けて延々走るには適さない。端的に言えば、"旅"に似合わないのである。例えば、『明日撃て』と同じくアメリカン・ニューシネマの代表作である『イージー・ライダー』のアイツらは、やっぱりアメリカンで旅に出たじゃあないか("ネイキッド"と言うべきなのかな。正確には。)。

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 そんなわけで、本作『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』は、定められた"宿命"から抜け出すとは本当はどういったことか、というテーマを極めて映画的・説得的に描ききった傑作である。デハーンの行く先はやはり親父と同じ堂々巡りなのだろうが、それでも、明日に向かってヴォン!と吠えてみせた彼の選択を、筆者は全力で応援する。

点数:74/100点
 第一幕終了時には、「え?! ゴズリングもう出てけぇへんの?!」と驚愕するが、すぐさままた物語に引き込まれ、鑑賞後には、「嗚呼…俺も松林の向こうには行けてないなぁ…。」としみじみしちゃう傑作。ちょっくら旅に出て、昔馴染みの子供でもあやしてみるか。というわけで、筆者は明日から、沖縄でバケーションである。

(鑑賞日[初]:2018.9.3)

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Posted byMr.Alan Smithee

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