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キャッチコピー
・英語版:The Hunt Has Evolved
・日本語版:一番強いヤツは、どこだ。

 絶不評のフォース・ラウンド!
 誇り高きスペース・ハンター vs おふざけボンクラ・チーム!

三文あらすじ:元特殊部隊員で現在は傭兵の父親クイン・マッケンナ(ボイド・ホルブルック)がメキシコで手に入れた謎の装置を、息子のローリー(ジェイコブ・トレンブレイ)が箱の中から発見。彼が起動させてしまったその装置は、地球にプレデター(The Predator)を呼び寄せるシグナルを発信するものだった。プレデターと接触したことで、事態を隠蔽しようとする政府の極秘機関に監禁されてしまったクインは、"ルーニーズ"と呼ばれるならず者の兵士たちと共に脱走し、危機が迫っている息子と人類を救うために奮闘するのだが・・・

※以下、ネタバレあり。


~*~*~*~


 銀河広しと言えど、こんなにも醜く美しく、野蛮で崇高な存在は、他に無い。1987年にその後州知事となる屈強なボディー・ビルダーと戦い、1997年にはドタドタした黒人刑事を圧倒し、2004年には南極直下のピラミッドで盛大な成人式を催し、2007年には薄暗い田舎町でバタバタと無様な活躍を見せ、2010年には小粋な余暇とばかりに愉快な地球人数名のハンティングを楽しんだアイツら。そう、我々哀れな獲物が"プレ様"と崇め奉る銀河一誇り高い狩人"プレデター"である。本作『ザ・プレデター』は、『プレデター』『プレデター2』『エイリアン vs プレデター』『エイリアン vs プレデター2』、そして『プレデターズ』と続いてきたユニバースの正統な続編にして最新作。世間じゃクソミソに酷評されているのだが、しかして、筆者は大変な傑作だと思っている。

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 まず、本作で監督・脚本を務めたシェーン・ブラック戦略を筆者は支持したい。1987年の第一作に通信兵リック・ホーキンスとして出演した彼は、同年の『リーサル・ウェポン』で脚本家としての才能を開花させ、近年では『アイアンマン3』の大ヒットが記憶に新しい映画人。そんな彼が最初に持ちかけられたのは、『プレデター』のリメイクの話だった。しかし、彼はこれを断り、あくまで続編として構築したのである。この判断は、非常に賢明だと思う。なぜなら、『プレデター』を傑作たらしめた二本柱の内の一本は、紛れもなく"シュワちゃん"だからである。身も蓋もないけど、これは真実だ。同じくシュワちゃんの代表作である『ターミネーター』シリーズが、紆余曲折の末、結局"マジのシュワちゃん"が不可欠だと気付いたように、シュワ抜きのシュワ映画など世間は求めない。

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 とはいえ、ダッチはT-800とは違って生身の人間なのだから、今さらシュワの単独主演は不可能だ(まぁ、『ローガン』みたいな手法を採用すればやれたかもしれないが。)。そこで、シェーン・ブラックは、あくまでシュワなき後の続編として位置付けた上で、もっと煎じ詰めて考えたのだと思う。第一作の肝は、シュワ vs プレデターという"夢の対決"だった。当時既に『コナン・ザ・グレート』、『ターミネーター』、『コマンドー』、『ゴリラ』とヒット作を連発し、"ゴリマッチョ・ヒーロー"というテンプレを世に広めていたシュワ。では、シュワが老いた今、世のテンプレになっている、言い換えればみんなが見たがっているヒーローとは、どういったものか。答えは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』以降主流となっているボンクラ・チームである。

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 シュワの再来は望めない。予想外に『MEG』がヒットしているからジェイソン・ステイサム主演でリメイクやっても良かったかもしれないが、まぁリスキーではある。よって、ボンクラ・チーム vs プレデターという構図を採用することで、"夢の対決"を現代版にアップデートしたわけである。その上で、本作はきっちりとそのコンセプトを体現できていると筆者は思う。すなわち、ちゃんとクイン率いるボンクラ・チームを好きになれる、ということ。まぁ、確かに我々に好感を抱かせるための主たる手段がギャグ・シーンであるため、むしろこのチームは大嫌いだ!という人も多いだろう。笑いは主観に訴えかける部分が大きい。

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 それに、筆者から見てもやり過ぎなシーンもある。例えば、ボンクラ・チームがクインの自宅に押し掛けるくだり。ここは本作におけるギャグ・シーンの白眉と言ってもよく、概ね素晴らしい。クインが一人で飛び出していった後、「ちっ!しゃーねぇなぁ!」みたいな感じで続く数名、の直後、二名だけそそくさとテレビを観始めるところとか最高。しかし、クインの奥さんであるエミリー(イヴォンヌ・ストラホフスキー)が、「宇宙人が襲ってきて…」というキ◯ガイたちの説明を聞き、一切いぶかしむことなく「Ok! Rock'n Roll!」みたいなノリになるのは、もはやコントの一幕である。かつて加害者と被害者だった因縁ある二人、コイル(キーガン=マイケル・キー)とバクスリー(トーマス・ジェーン)の死に様もやり過ぎていて笑っちゃったけど、そもそもノれていない人からすればドッチラケ以外の何ものでもなかろう。

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 さらに、このような過剰なギャグの応酬が、初代『プレデター』が有していた二本柱のもう一本を台無しにしてしまうという感じもある。つまり、その柱とは、ホラー映画としてのおもしろさである。第一作は、本当に恐かった。あのシュワですら絶対に勝てない、そんな信じられない絶望に我々は戦(おのの)いたのである。その点、本作の"獲物"たちは終始ふざけていて、それすなわち、常に余裕をたたえているように見えるため、真の意味での絶望感は極めて希薄である。実際、全然恐くないという点で以て本作を批判している人は多い。しかし、筆者はここも擁護したいのである。

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 つまり、プレデターで恐がらせるのはもう無理という判断があったのではないだろうか。これは、同じユニバースに属する『エイリアン』シリーズを見ると分かりやすいと思う。同シリーズの新章『プロメテウス』で、巨匠リドリー・スコットは、もはやアイコン化したキャラクターであるゼノモーフを引っ込め、人類はどこから来てどのへ行くのかという『2001年宇宙の旅』的テーマの描写に専心した。続く『コヴェナント』ではゼノモーフが中途半端な活躍を見せたが、これは『プロメテウス』の不評を受けてテコ入れが行われたためである。よって、宇多丸師匠も指摘していた通り、もはやエイリアンではみんな恐がらないとの判断が、巨匠の中にはおそらくあったのだと思う。

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 プレデターだってゼノモーフと同様だ。最近10ほども年齢の違う若造に聞いたら「そんなキャラクターは知らないっす。」と言われて筆者は愕然としたのだが、彼は「2時間はキツイっす。」なんて言って『テラスハウス』ばっかり観ているクソガキだから、例外と考えていいだろう。普通はみんな知っている。プレデターという異星人がどういったコスチュームで、どういった武器を扱い、その素顔がどんなに醜いか。だから、プレデターでホラーをやるのは無理があるんだ。ゼノモーフだって、まだその全体像が我々にも分からない第一作だから、あんなに恐かった。続く『2』でバトル・アクションに方向転換したキャメロンの判断は、やっぱり正しかったんだ。枯れ尾花には、誰も驚かない。

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 さらに、シェーン・ブラックは、このような現実世界におけるプレデターの周知具合をきちんと登場人物にも反映させている。それが、ふざけてるけどそこが逆に"余裕ある大物の悪役"という説得力になっているナイス・ヴィランのウィル・トレーガーさん(スターリング・K・ブラウン)、そして、彼が率いる"スターゲイザー"という政府組織である。1987年の襲来当初から秘密裏にずっとプレデターを研究してきたというこの組織の存在は、第一作公開以来ずっとプレ様を追いかけてきた我々自身や社会の投影だ。『プレデター』『エイリアン』では、登場人物同様、我々も敵の正体を知らなかったからこそより高次の没入感が生まれた。その逆として、既に世界が知り尽くしているなら知り尽くしている組織を登場させるというやり方は、間違いなく一定以上の効果を生んでいると筆者は思う。プレ様が序盤からバシバシ素顔を晒すのも、そう考えると当然だよな。もう知ってるもん。

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 そうやって"プレデター"という作品やキャラクターと真摯に向き合った上、本作が提示するクライマックス。これも世間ではケチョンケチョンに酷評されている。IGNのレビューでは「ラスト30分で全て台無し」と書かれ、その他たいていの感想では「決着が激ショボ!」と言われている。でも、筆者はやはりすごく良いと思った。クインとローリーとケイシー(オリヴィア・マン)以外のチーム・メンバーがゴミのように死んでいくのが安直? 違うんだよ。アイツらボンクラ・チームは、チーム全員でシュワちゃん一人相当の"キャラクター"なんだよ。だから、ズバズバと死んでいく一人一人が、第一作でシュワが流した血、砕かれた骨なんだ。さらに、第一作のクライマックスで素晴らしかったのは、後に『ダイ・ハード』を撮る男ジョン・マクティアナンならではの"勝つ理由"の提示だったわけだが、本作にもその精神はちゃんと受け継がれているように思う。

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 本作のクライマックスは、ボンクラ・チーム vs プレ様というコンセプトをまとめあげるべく、ちゃんと"チーム・プレー"が描かれている。なぜか陸に待機することになったケイシーは、"女性は男の帰りを待つ"みたいな古臭いベタではなく、ちゃんとクローキング・デバイスを駆使してプレデターに急襲をかける(宇宙船落下地点までのあの距離をあの時間で徒歩移動したというのは、第一作で核爆発から逃げ切ったシュワへのオマージュ……ではないだろうな。)。クインの息子ローリーくんは、その直前でチームの一人を切断した宇宙船のバリアを起動させ、プレ様の腕をチョンパする。そして、チーム・リーダー(あえて"主人公"とは言わない。)たるクインは、切り落とされた腕のデバイスを用い、トドメの一撃をお見舞いするのである。

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 さらに、こういう邪推も可能ではないだろうか。本作のクライマックスは、地球人がその"地球人性"で異星人に勝利したのだ、なんて邪推である。まず、地球人の地球人性、まぁ端的に言って人間が誇るべき"武器"とは何か。それはもちろん、『オデッセイ』で明快に描かれた通り、科学とユーモアである。本作のプレデターは、その内の一つを奪おうとした。プレデターたちが狙っている"マッケンナ"とは、実は親父ではなく一見ひ弱な子供の方だった…という予定調和のどんでん返しが示すのは、屈強なプレ様たちが人間の"頭脳"を欲しているという事実である。しかし、奴らは、人間をナメていた。俺たちの"武器"たる科学は、そもそも単なる頭の良さを言うのではない。みんなで共に考え、挑戦し続ける態度のことだ。さらに、俺たちがどんな絶望に対しても軽口を飛ばし向かっていく野郎共だということも、プレ様は知らなかった。よって、奴らは、それらの"武器"を適切に体現したボンクラ・チームに敗北したのである。

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 あと、クライマックスで言うと、プレ様を打倒してからしばらく経ったエンドロール直前。地球人を守るため同胞を裏切ったローグなプレ様の宇宙船から、"積み荷"が回収される。クインと息子が見守る中、解放されたそれは、モブ研究員のおっさんに取りつき変形。メカ・プレデターという呼称がしっくりきそうなフル・アーマードな"対プレデター戦闘兵器"としての姿を露にする。すかさずクインが「あれは俺の新しいスーツだ…(ニヤリ)」と言って終幕。もちろん、このオチは、良く言って"B級"、そもそも本作にノれていない人からすれば、陳腐でスベってるクソ展開以外の何ものでもなかろう。でも、筆者はこう考えたい。

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 つまり、やっぱり『プレデター』の本質は、どこまで行っても"キャラクター対決もの"なんだよ。シュワちゃんに匹敵するキャラクターとして生み出されたボンクラ・チームは、瓦解してしまった。であれば、お次はプレデター・スーツくらいキャラ立ちしたガジェットを出さないとお話にならない。そしてまた、この"キャラクター対決もの"という本質は、"怪獣映画"と言い換えても良いと思う。シュワちゃんは、そんじょそこらのアクション・スターとはレベルが違う。勇猛で無敵でチャーミング。そう、シュワちゃんだって"怪獣"なんだ。そういう観点から振り返れば、大傑作だった『エイリアン vs プレデター』。あれは言ってみれば『キングコング対ゴジラ』なんだよ。で、本作のオチは、『ゴジラ対メカゴジラ』の示唆なんです。もちろん、このオチの続きを真剣にやるわけではないだろう。あくまで"キャラクター対決もの"であり"怪獣映画"としての本質を確認した終幕なんだ。

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 そんなわけで、筆者は概ね本作のコンセプトの部分で感銘を受けたのだが、もっと具体的な個々の要素も良かったと思う。例えば、オープニングで宇宙船が墜落し、クローキング状態で倒れるローグ・プレ様に吊られた隊員の血が降り注いでその姿が露になる演出とか。シンプルにカッコ良くない? 俳優陣もほとんど無名に近い人ばかりながら本当に良かった。ボイド・ホルブルックは思いの外"ヒーロー"だったし、ジェイコブ・トレンブレイは"天才子役"と呼んであげたくなるくらいの存在感だったし、オリヴィア・マンはハチャメチャに可愛いし、スターリング・K・ブラウンの悪役っぷりは非常にカッコ良かったし。特にブラウン演じるトレーガーは、終盤でいきなり部下を撃ち殺すシーンがあり、なし崩し的にボンクラ・チームと共闘しているもののやっぱり非道な男なんだという点がしっかり確認されていて、筆者はシビれた。

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 もちろん、悪いところもいっぱいある。やり過ぎのギャグとか、展開の無理矢理さとか。特に、ボンクラ・チームが軍を脱走してまでプレデターを追いかけ始めるくだりは、因縁浅からぬクインはまだしも、その他の愉快な仲間たちがなぜ乗り気になったのか、皆目不明瞭である。あとまぁ、新種のプレデターってのは、既に『AVP』でプレデリアンが出てきてたり、プレデターとチームを戦わせるっていう仕掛けは、『プレデターズ』で既にやってたり。そんな既視感も低評価の一因になり得るだろう。プレデター犬も『プレデターズ』に出てきてたしな。それでも、筆者としては、「ありがとう!シェーン・ブラック!」とサムアップしたい衝動を抑え切れない。本当に楽しい一本であった。

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点数:89/100点
 あと、筆者はなんだかんだシェーン・ブラックのストーリー・テリングが好きというのも考慮しとくべきかな。っていうか、30前後かもうちょっと上くらいのおっさん、おばはんなら、そんな人が結構いるんじゃないか。人の生き死にがかかってるのにふざけてる、みたいな"よく考えりゃ不謹慎"という作品が、90年代あたりは特にたくさんあったような気がする。もちろん、いわゆる"人を殺して捨て台詞"の系譜というのは、古くは007から始まっているのだろうが、『リーサル・ウェポン』に代表されるような80年代後半~90年代アクションは、もっとこう…より不謹慎というか、雑でデリカシーの無い作品が多かったイメージだ。筆者にはそんな素地があったため、本作にも比較的すんなりノっていけたのかもしれない。

(鑑賞日[初]:2018.9.14)
(劇場:MOVIXあまがさき)

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Posted byMr.Alan Smithee

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