0 Comments
marauders.jpg


キャッチコピー
・英語版:The Rich Will Pay
・日本語版:奴らを追え。

 ちっちゃなクモ 雨どい登ってく
 雨が降ってきて 流し出された
 太陽出てきて乾いたら
 また雨どい登ってく

 で、蜘蛛は死んだ

三文あらすじ:鮮やかな手際で大金を奪い去る銀行強盗事件が立て続けに発生。FBI捜査官ジョナサン・モンゴメリ(クリストファー・メローニ)が捜査にあたる。現場から見つかった謎めいた証拠から、ヒューバート銀行グループの頭取ジェフリー・ヒューバート(ブルース・ウィリス)と事件の関連が浮上してくる・・・


~*~*~*~


 本作『マローダーズ / 襲撃者』は、最近感想を書いた『強盗狩り』『最後の追跡』『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』と同様、現在Netflixで鑑賞できる銀行強盗映画である。恥ずかしながら、筆者は監督のスティーヴン・C・ミラーという人物を知らなかったのだが、事故で水底に沈んだ運転手が目覚めてから60分間の脱出劇を描いた『リムジン 余命60分』でデビュー後、本作同様ブルース・ウィリス出演の『エクストラクション』、往年のクリスマス・ホラー『悪魔のサンタクロース』のリメイク作品、またブルース・ウィリスと組んだ本作、今度はニコラス・ケイジが主演した『キング・ホステージ』、そして、またまたブルース・ウィリスと組み、ヘイデン・クリステンセンも出ている『ファースト・キル』と立て続けに作品を連発している。なんでもスタローン、シュワ共演の『大脱出』のパート2も監督し、もうすぐ公開されるらしい。

marauders1.jpg


 ということは、つまりスティーヴン・C・ミラーさんは、それなりの手腕を有した信頼に足る男と思ってもいいのだろう。まぁ、ブルース・ウィリスもニコラス・ケイジも、割と節操なくどんな作品にも出演する俳優だが、それでも2016年からのラッシュを見る限り、少なくともある種の才能はあるのだと考えざるを得ない。ということは、当然本作もそれなりにおもしろい良作のはずなのだが、これがなんとも難しいのである。Rotten Tomatoesを見てみると、観客の評価が31%、批評家はなんと21%という激低評価。ならばきっと、アクションはユルユル、プロットはダルダル。そんな目も当てられない駄作なんだ。しかして、あくまで個人的には、前半……というか、オチの展開を除く大半において、本作は中々スリリングな良作なのではないかと思った。

marauders2.jpg


 まず、銀行強盗映画の肝である銀行強盗シーンが、割とフレッシュで良い。禍々しいマスクを被った強盗団というのは、まぁ確かにありきたりで、特に『ダークナイト』以降は幾度も見たスタイルだ。しかし、彼らが行員や人質に指示を出すため用いるアナウンス・デバイス(?)は、けっこう新鮮。要は、肉声でなく、小型の機械から録音された女性の声を流すのだが、この文字通り機械的な感じ、あるいは、無機質な感じが、強盗団にミステリアスさを帯びさせていて中々グッド。合理的でスマートなプロの銀行強盗って感じである。後々、実はソイツの命自体もまた目的の一つだったということが判明するものの、銀行への突入と同時に一人撃ち殺すというやり口も、暴力的な反面、最短距離でフロアを掌握するためには極めて合理的なアイデアとも言えるので、ますます彼らのカリスマが高まっていく。

marauders3_20180930214125d7a.jpg


 あと、やっぱり腐ってもスター中のスターであるブルース・ウィリスの存在によって、なにやら全体が締まって見えるという部分は、確かにあるように思う。筆者が特に好きなのは、彼が投資家たちに演説を披露する場面だ。本社見学(?)に来た投資家=銀行の得意顧客たちが、社長室で意味ありげに下界を見つめるウィリス社長に「ハァーイ」と挨拶。すると、くるりとおもむろに振り返ったウィリス氏は、「今、窓の外に一匹の蜘蛛が這っています…。」と話し始める。演説弱者である我々日本人は、外国映画を観るとき、往々にしてこのような場面に面食らい、「え……この人、何言い出したん…?」と戸惑う。でも、実はその例え話がちゃんと具体的・現実的なオチの前フリになっているので、「アメリカンやなぁ…。」と感服するのである。

marauders4_20180930214402f0d.png


 しかし、本作の当該シーンは、「いや別にアメリカ人でもそんな芝居がかったスピーチには戸惑いまっせ!」ということを描いているのである。ウィリスは続ける。「この蜘蛛は、この強風の中、地上13階まで登ってきた…。すごいと思いませんか?」 ここで、観客たる投資家たちが露骨に「……???」と首をかしげるのが非常に愉快。で、結局「当行もこの蜘蛛同様、更なる高みを目指して登り続けます!」と無事着地したスピーチに、「あぁ! (*’ω’ノノ゙☆パチパチパチ」と安堵の拍手を送る一同。もちろん、作品全体のシリアスなトーンからは完全に浮いたギャグ・シーンであるため、どちらかと言えば不必要なくだりとも言い得る。とはいえ、常々"アメリカン・スピーチ"に違和感を感じていた我々日本人なら、我が意を得たり!とうれしくなるのではないだろうか。

marauders5.png


 本作がケチョンケチョンに酷評されている所以は、おそらくオチのぶっ飛び具合であろうと筆者は考える。そのオチとは、メキシコに高飛びした悪の権化たるブルース・ウィリスを追いかけてきた正義のFBI捜査官ジョナサンが、実は強盗団のリーダーだった新入りのウェルズ(エイドリアン・グレニアー)と共にウィリスをボコボコに殺害するというもの。要は、法で裁けない巨悪を成敗するヴィジランテもの的大団円である。これもまた特に『ダークナイト』以降流行し、今では定式化されたと言ってもいいフォーマットであろう。問題は、この展開の導き方が酷く乱暴という点。本作は『ダークナイト』とは違い、ヴィジランテも必要だよね…大変だけど。と思えるようには全くなっていない。ジョナサンがウィリスの腹部にナイフを突き立てた瞬間、観客の誰しもが「え?!」と声をあげることだろう。本作が提示するのは、"また違う正義のあり方"ではなく、"単なる無法"になってしまっているのである。

marauders6_20181002201904b90.jpg


 別にそういう大胆な結末自体が絶対にダメだというわけではない。でも、本作は、かつてジョナサンの妻が麻薬王の拷問によって生きたまま目玉をくり貫かれて殺されたという悲劇の過去とか、汚職刑事のミムス(ジョナサン・シェック)と末期癌の妻との絆とか、そういう"現実は本当にままならない"というバック・ストーリーを結構しっかり提示する。仮に、ジョナサンの妻が今ウィリスの手で目玉をくり貫かれたとか、ミムスの妻がウィリスの手で惨殺されたとかで、彼らの正義が崩壊し、ダークサイドに墜ちてしまうのなら、まだ納得の余地もある。しかし、本作はそう描いてはいない。どう見ても、ままならない浮き世で、それでも守るべき"正義"はあるんだ!という答えが導かれるべき筋道で、突如暴力による解決が実行される。それまでの比較的丁寧な前フリを「そぉいっ!」って投げちゃってる感じなんだよな。

marauders7_2018093021482338c.jpg


 というわけで、本作『マローダーズ』は、銀行強盗ものとしては見るべき部分の多い良作であるにも関わらず、それまでコツコツと積み上げてきた筋道をラストで一気に無に返してしまう珍作なのであった。

点数:62/100点
 ひょっとしたら、本作にはトランプ大統領への賛同を匂わせる要素もあったりするのかしら。ブルース・ウィリスとジョナサンが会話するシーンでは「今は保守派と距離を置いているがね…ハハハ」みたいなジョークが飛び出したりする。ここで、やっぱり当然トランプは認められないよね、と観客に思わせておいて、結局はメキシコ(と仲良しな)野郎なんか殺してしまえ!それが正義だ!っていうオチになる裏切り。そのせいで、それまでは比較的楽しく鑑賞していた観客たちが、蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった……のかもしれない。

(鑑賞日[初]:2018.9.6)

マローダーズ 襲撃者 ブルーレイ&DVDセット(2枚組) [Blu-ray]

新品価格
¥4,190から
(2018/9/30 20:16時点)


CA Mode(JP) いたずらグッズ ハロウィーン 小道具用品 バー 装飾 スパイダー 蜘蛛 クモ パーティー 怖い装飾 1匹 ブラック

新品価格
¥999から
(2018/9/30 20:17時点)


関連記事
スポンサーサイト
Mr.Alan Smithee
Posted byMr.Alan Smithee

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply