[No.58] ヘルボーイ(Hellboy) <66点>





キャッチコピー:『もはや世界は人間の手には負えない!魔界が生んだカリスマ救世主登場!』

 恋する悪魔 vs ロシアン・カリスマ!

三文あらすじ:1対の角と巨大な石の右腕を持った深紅の悪魔”ヘルボーイ(Hellboy)”(ロン・パールマン)。ナチスの実験によって冥界から現世に召喚された彼は、超常現象研究家トレヴァー・ブルーム・ブルッテンホルム教授(ジョン・ハート)の息子として育てられ、半魚人エイブ・サピエン(ダグ・ジョーンズ)と共に超常現象調査防衛局(BPRD)のエージェントとして超自然的な存在と戦う毎日を送っている。念動発火を操る女性エリザベス・シャーマン(セルマ・ブレア)への恋心と任務の狭間で日々葛藤するヘルボーイだったが、一方で、復活した怪僧ラスプーチン(カレル・ローデン)は、世界破滅の鍵を握るヘルボーイを狙っていた・・・


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 同名アメリカンコミックの映画化。昨今のアメコミブームの中、本作の主人公ヘルボーイもしっかり”悩める主人公”として描かれる。彼の悩みの元凶は”自らの出生自体”である。スパイダーマンやバットマンと違い、ヘルボーイは”悪魔”として生まれついた。そういう意味では、スーパーマンと同じ”先天的ヒーロー”である。本来は冥界で生きる悪魔にも関わらずナチスの実験で現世に生まれ落ち、人間の手で育てられたヘルボーイは、ナチョスやクッキーを食べたり、葉巻を吸ったり、テレビ好きだったり、人間の女の子に恋したりと、極めて人間臭く成長した。そんな彼は、人間界に生まれ落ちてから既に60年が経過しており、その容姿や所作は”渋いおっさん”のそれである。このヘルボーイのキャラクター造形が本作で唯一にして最大の見所だ。

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 演じるのは、いぶし銀俳優ロン・パールマン。身長約190cmという巨躯にいささかモンスター的な顔面を持ち合わせた俳優で、異形の悪魔ヘルボーイは彼の当たり役となった。これがまぁ、とにかく渋い!巨大で無骨な全身、真っ赤な皮膚、根本で切断された大きな角、ちょんまげのように結った黒髪。トレンチコートを愛用し、葉巻にジッポで火をつけ、大ぶりのリボルバーを携行する。彼のバリトンボイスと台詞回しも非常にダンディでクール。例えば、倒したと思った敵が起き上がると「Oh,Crap...」、敵が長い舌を自身の腕に巻き付けてきたときには「2回目のデートだぜ。舌を入れるはまだ早い!」など、いわゆる”アメリカのり”が最高に素晴らしい。言うなれば”アメリカ版・悪魔版「紅の豚」”といった格好良さがある。

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 他方で、寿命が人間より長いため精神年齢はまだ20代そこそこであるヘルボーイは、ガキっぽい一面も持ち合わせている。無類の猫好きだったり、外出禁止の言いつけを何度も破って脱走したりする様は、彼の外見の怖さとのギャップでとっても可愛いく思える。また、幼なじみのリズに甘酸っぱい恋心を寄せており、新任のFBIエージェント、ジョン・マイヤーズ(ルパート・エヴァンス)がリズと良い感じになると露骨に嫉妬するピュアなシーンも。このガキっぽい部分が彼の”苦悩”として描かれるのだが、ヘルボーイの苦悩は他のアメコミヒーローと比べてあまり深刻には思えない。彼の悩みは”外に出たい”とか”リズに会いたい”と言った”思春期の少年”のそれであり、”悪魔”というヒーロー史上希に見るディス・アドバンテージを抱えているとは思えないほどしょーもない。やはりヒーローの苦悩の深刻さでは、『ファンタスティック・フォー』のザ・シングがダントツ一番だな。

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 先述の通り、本作でおもしろいのは、以上のようなヘルボーイのキャラクター造形、特に彼の渋い部分のみである。その他の出来は、特に目新しいものも無く中々に退屈だ。まぁ、冥界から出現する敵たちは、さすが悪趣味の権化ギレルモ・デル・トロが監督しているだけあって、みなウネウネグチュグチュ気持ち悪いが”触手系”一辺倒なので、次第に飽きてしまう。加えて、決定的に良くないのは、テンポが悪いということ。ストーリー進行もメリハリが無いし、何よりアクションシーンがスピード感に欠けるため、全く迫力が感じられない。それから、出ずっぱりの敵モンスターに”殺しても倍になって蘇り、完全な殺し方は不明”という特性を持たせた点もいただけない。その特性を知りながら燃やしたぐらいで帰って行くヘルボーイがバカみたいだし、殺しても復活して何回も登場するから、終盤ではうんざりしてしまう。この手の映画においては、クリーチャー造形も見所の一つなのだから、せめて復活したら進化するタイプにして欲しかった。最後にもう一点だけ文句を言うなら、ラストバトルでラスプーチンに魂を抜かれ心肺・脈拍とも停止したリズが、なぜヘルボーイの呼びかけで蘇生したのかが分からない。リズの魂はヘルボーイへの強要材料だったから、ラスプーチンはその半分しか抜いていなかった、ということなのだろうか。筆者の読解力不足かもしれないが、そんなことは一言説明を加えるだけで完璧に解決できるのであるから、もうちょっと脚本の丁寧さが欲しかったように思う。

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 ただ、蘇生後のリズに「暗闇であなたの声が聞こえたわ。何と言っていたの?」と聞かれたヘルボーイが

 「冥界の一番偉い奴に”彼女を解放しないと、俺がそっちへ行くぞ!それでもいいのか?!”って言ってやったのさ。」

というシーンは、中々格好良かった。とはいえ、このシーンでもヘルボーイがどの時点で冥界と交渉したのか不明で、少しモヤモヤはする。

 最後に、本作のヒロイン、リズ・シャーマンを演じるセルマ・ブレアの画像を。

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 初々しいけど強そうで、すごく良い感じ。彼女のハマリ役の一つにカウントしても決してバチは当たるまい。

点数:66/100点
 以上のように、ヘルボーイの格好良さを除いて、本作にはあまり見るべきところがない。とはいえ、エンターテイメントとしては十分に及第点であり、観て損することもないだろう。ヘルボーイのキャラが素晴らしいだけに、少し平凡に過ぎる出来が惜しまれるところである。

(鑑賞日:2012.3.16)

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