[No.59] マイ・ビッグ・ファット・ウェディング(My Big Fat Greek Wedding) <74点>

My Big Fat Greek Wedding



キャッチコピー:『一生結婚したくない、という人は、観ると危険です。』

 恋する”女の子<シンデレラ>”は、年齢も国境も超える。

三文あらすじ:シカゴに住む30歳の独身女性トゥーラ・ポルトカロス(ニア・ヴァルダロス)は、ギリシャ人至上主義の父親ガス(マイケル・コンスタンティン)の下で育てられたギリシャ系アメリカ人。両親が経営するレストランを手伝う彼女は、ある日、客として訪れたアメリカ人男性イアン・ミラー(ジョン・コーベット)に一目惚れする。着々と愛を育み結婚を決める2人だったが、ギリシャ人の婿しか認めないガスは猛反対する・・・


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 邦題では”GREEK(ギリシャの)”が抜けてしまっており、全編ギリシャネタで笑いをとっていく本作のタイトルとして相応しくない。どうせ長いタイトルなのだから、別に『マイ・ビッグ・ファット・ギリシャ・ウェディング』でも良かったと思うのだが。

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 さて、主人公トゥーラを演じるニア・ヴァルダロスが自身の結婚体験を元に演じた一人舞台が本作の元ネタ。この舞台を観て感銘を受けたトム・ハンクス、リタ・ウィルソン夫妻がニアにコンタクトを取り、インディペンデント作品として映画化された。500万ドルという低予算映画にもかかわらず口コミで評判が広がり、結局2億ドル以上を稼ぎ出す大ヒット。公開当時、日本でも結構話題になっていた良質のロマンティック・コメディである。本作の大ヒットでギリシャ文化に感銘を受けたのか、それとも味をしめたのか、トム・ハンクス夫妻は、この後ギリシャを舞台にした超有名ミュージカル『マンマ・ミーア!』の映画化に際して制作総指揮を務めている。

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 本作のテーマは”ギリシャ人は、お喋りで騒がしく、大家族で大飯食らい”という民族ジョークの定番イメージ。ギリシャ人大家族の娘トゥーラとアメリカ人小家族の息子イアンの結婚を取り巻く両文化のギャップが笑いを生んでいく。これが中々おもしろいのだが、トゥーラの家族はちょっといくらなんでもベタベタすぎないだろうか。仮に日本に置き換えると”ゲイシャ、フジヤマ”的日本人像が描かれているようなものだ。筆者はギリシャ人に詳しい訳ではないが、今時アメリカ在住のギリシャ人でここまで自国文化しか認めない家族は存在していないような気もする。『ティファニーで朝食を』でミッキー・ルーニーが演じたおかしな日本人ユニオシを観たときのあの違和感と不快感を、本作を観たギリシャ人は感じたはずだ。だいたい”ユニオシ”って、どんな名字やねん。

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 もっとも、本作の魅力は異文化交流のおもしろさだけではない。独身三十路女子トゥーラの成長物語もしっかり描いている。本作が口コミで大ヒットしたのは、この点に多くの女性が共感できたからだろう。トゥーラは、ポルトカロス家の次女として生まれ、厳格な父や始終ペチャクチャ騒がしい姉や母、そして膨大な数の親戚とともに育ったので、逆に地味で内向的、本当にしたいことも分からないままズルズルと結婚せずに30を迎えてしまう。そんな彼女がイアンに一目惚れして一念発起。パソコンの勉強をするため大学に通い出し、どんどん垢抜けていく。まぁ、もともとが可愛くない、もとい日本人受けする顔ではないから”ビフォーアフター”したトゥーラも”鳶が鷹に”、”カニかまがカニに”とまでは行かない。せいぜい”馬がシマウマに”もしくは”グラタンがドリアに”といった程度の変化。とはいえ、ベタベタなシンデレラストーリーはやはりいつでもおもしろく、観客の心を惹き付ける。ただ、主軸はあくまでもカルチャーギャップにあるから、トゥーラとイアンの恋は驚くほどとんとん拍子に進み、2人が途中で別れるけどなんやかんやあってまたくっつくといった紆余曲折は経ない。2人の愛の唯一の障害は、ギリシャとアメリカの文化的相違であって、波瀾万丈のラブストーリーを期待するのは禁物である。

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 筆者が最も感動したのは、ラストの披露宴での父ガス・ポルトカロスのスピーチ。カルチャーギャップを如何に乗り越えて結婚までこぎ着けるかがテーマの本作において、トゥーラとイアンの披露宴はまさに大団円、感動することは自明の理とも思える。しかし、ガスのスピーチは、冒頭から登場していたフリをしっかり落とす実に良く出来たものであった。

 極度のギリシャ人至上主義者ガスは、他人に任意の単語を言わせ、その起源がギリシャ語であることを自慢してばかりいる。この問答を場違いなところでさせたり、明らかにギリシャ起源ではない”キモノ”といった単語をこじつけさせたりすることで、ギリシャ人ステレオタイプの象徴としてのガスのキャラクターが造形され、同時に笑いが生まれるのである。そんなガスは、披露宴において、両家の名字の起源を語り出す。新郎側の”ミラー”は”りんご”。新婦側の”ポルトカロス”は”みかん”。今日この場に集った人たちは、違うように見えても所詮は同じ”果物”なのだ、と。素晴らしい。良く出来た脚本だ。

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 ただ、この披露宴シーンでいささか不満なのは、両家のギャップにあれほど戸惑っていたイアンの両親が何故急にノリノリになったのかという点だ。ここは、少し飛躍があるように感じられる。ひょっとしたら敢えてカットしたのかもしれないが、披露宴前にガスとミラー夫妻の会話を挿入するだけでもっとしっくりしていたのではないかな。本作全体の出来としては些細な点だが、この部分の雑さが少し残念だった。

点数:74/100点
 有名俳優が出ている訳でもなく、胸を打つ悲恋が描かれる訳でもなく、歌って踊る華やかさがある訳でもない低予算映画でありながら、口コミでの大ヒットを納得させるだけの魅力に溢れた本作。実際本作を観て結婚したくなる人がどれほどいるかは定かでないが、家族の大切さを再確認し暖かい気持ちになることができる良作である。

(鑑賞日:2012.3.18)

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