[No.66] トロール・ハンター(Trolljegeren) <88点>

Troll Hunter



キャッチコピー:『本当に、本当に、いる!』

 嗚呼、B級モンスターパニック好きでよかった。

三文あらすじ:最近多発している熊密猟事件を取材するためノルウェーの田舎町にやってきた大学生トーマス(グレン・エルランド・トスタード)、ヨハンナ(ヨハンナ・モールク)、カル(トーマス・アルフ・ラーセン)の3人。怪しげなトレーラーハウスに住み、夜な夜な出かけていくハンズ(オットー・イェスパーセン)という男に目を付けたトーマスらは、彼を尾行した先で伝説の妖精”トロール”を目の当たりにする。なんとハンズは、ノルウェー政府にただ一人雇われている”トロール・ハンター(Trolljegeren)”だったのだ・・・


~*~*~*~

 
 最後の見せ場をおもいっきり出してしまってはいるが、勢いとパワーが感じられるいいデザインのポスター。一方で"本当に、本当に、いる!"という愚直な日本版キャッチコピーは、なんだかちょっと笑ってしまう。しかし、これもまたB級モンスターパニックのキャッチコピーとしては、十二分に勢いとパワーを持った秀逸なものに仕上がっていると言えるだろう。

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 さて、本作の内容であるが、とにかく素晴らしい!自信をもって”傑作B級モンスターパニック映画”と呼ぶことができる作品である。そんな本作を製作した国は、なんとノルウェー。ノルウェー映画って珍しいよな。筆者のようなひよっこ映画ファンでも一応年間100本以上は映画を観ているが、それでも今までに観たノルウェー映画は?と聞かれたら、即答できない。

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 そんなノルウェーが世界に誇るB級モンスターこそが”トロール”。小学生の頃、筆者が図書館で原作漫画をせっせと借りては読んでいたムーミンも実はトロールだから、北欧ってのは全体的にトロールの生息地なのであろう。ちなみに、”ムーミン谷”や”ムーミン・パパ”など、明らかにムーミンを軸にして構成されたであろうあの世界(ムーミンの出生以前から存在しているはずの谷や父親の名前に"ムーミン"が入ってるっておかしくない?)は、正確にはノルウェーではなくフィンランドにある。まぁ、いずれにせよ、そんな可愛いイメージのトロールを醜悪で凶暴なモンスターとして登場させるという本作の趣向は、ムーミントロールしか知らぬ者にとっては大変な衝撃に違いない。

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 とはいえ、トロールと言えば、最近では『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズにも登場し、今や立派な市民権を得たと言っていいモンスター。本作は、ある意味でこれを逆手に取っている。本作で登場するトロールは、『ロード~』でのそれのように小さくない。劇中最初に登場するものでも4~5m、ポスターになっているラスボス的トロールに至っては何十mにも及ぶ巨大モンスターである。このように、世界的に浸透している既存のトロール像を覆すトロール造形が、本作において最も素晴らしい点であり、最大の見所だ。

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 そして、その魅力的なトロールのアイデアを完璧に補うCGも素晴らしい出来。比較的低予算な映画でありながら、スクリーン狭しと暴れ回るトロールには安っぽさが全く感じられない。加えて、この”トロールのリアルさ”に一役買っているのが『クローバーフィールド』で本格的にモンスターパニックに導入されたPOVという手法。同作公開時には、おもしろいけど一回こっきりやろ、と多くの映画ファンが語っていた記憶があるが、そんなことはなかった。確かにあの頃ほどの目新しさは既にないものの、モンスターのリアルさを表現する上で未だ十分効果的であるということを、本作は教えてくれる。

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 つまり、本作は”大学生が撮った記録映像”という”てい”の映画であり、映画の冒頭だったか最後だったかでちゃんとその旨の説明書きも表示される。この演出の仕方も『クローバーフィールド』と同様だ。そんなわけで、本作の日本での宣伝では”日本トロール保安機関(JTSS)”なるなんとも怪しげな組織が推奨している、ということになっている。B級映画ファンとしてはこの馬鹿げた趣向を素晴らしく思うのだが、筆者が特に好感を持ったのは、日本の宣伝担当者の姿勢。あくまでも本作は”記録映像の上映”であるというスタンスを崩さず、テレビだったかラジオだったかで映画評論家が「この映画が…」と言う度に「記録映像ですね。」と律儀に言い直す様には、大変な感銘を受けた。彼女のためにも、是非ヒットして欲しい。

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 ちなみに、ストーリーもほどよく突っ込みどころがあって良い。例えば、中盤~後半でカッレという名のカメラ担当が食べられてしまうという展開。本作の主人公たちはプロのテレビマンではないただの大学生で、いわば趣味半分で取材に来ている。にもかかわらず、新しいカメラマンを呼びつけ、気を取り直して取材続行!というのがなんとも”B級テイスト”である。せめてカッレ・パパには連絡してあげてよ。

点数:88/100点
 本作のような上質のB級映画を観る度に、なぜ日本ではこのような作品が作れないのかと悲しく思う。我が国には”鬼”を始めとして、モンスターパニックに適した魑魅魍魎のたぐいがひしめいているのだから、『進撃の巨人』実写化だ♪などと騒がなくても、きちんと良いものを作れるはずなのに。『鬼狩人(ゴブリン・ハンター)』、是非観てみたい。

(鑑賞日[初]:xxx)

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Comment

  • 饂飩粉
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初めまして

 初めまして饂飩粉です。
 私はブログを始めたばっかりで、その頃からちょくちょくこのブログを拝見していたのですが、『トロール・ハンター』の記事まで黙って読んでいるわけには行かないと思い、コメントに至りました。
 初のコメントということで緊張しておりまして、もはや何から言えばいいのかわかりません;

 『トロール・ハンター』私もブログで記事にするくらい衝撃的で、面白味のある作品でした。
 平穏→不穏→トロール登場という化物映画の王道をいく序盤から、怒涛のトロールハンティングへと移行。大真面目にトロールの話をするハンス達が逆に胡散臭さを生み、笑いを誘うのは『クローバーフィールド』『ブレアウィッチ・プロジェクト』とは対極を成す、新たなP.O.Vの見せ方だったように思います。
 CGの、画面への溶け込み感もかなり良かったですよね。ゲームでは凄いはずなのに、何故日本映画のCGはいつまでも安っぽいままなんでしょうか……

 トロール達が画面にあられもなく映ったり、「ホントの様なウソ」で笑いを取りにきたりと、何から何まで今までのP.O.Vとは違っていましたね。
 ラストの記者会見や、エンドロール後のメッセージも、ただのギャグでしたし(笑
 私もカメラマンの置いてきぼり感は良いツッコミ所だったと思います。ヨットナールをカメラに映しているのに声も出さない彼女は一体何者だったんでしょうか……

 『トロール・ハンター』の制作費は3億円だそうですね。
 『進撃の巨人』は邦画最大規模の予算でどれだけのものを作ってくれるのか、嫌でも比べたくなる傑作でした。

 ……あんまりコメントっぽくない内容で申し訳ありません;
 最後に関係ないことですが私もタランティーノ映画は大好きです!

 それと、Mr.Alan Smitheeさんさえよろしければ、私のブログにリンクを貼らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか? 更によろしければブロとも(?)なるものも申請させていただこうかと思っております。
 これからもちょくちょくお邪魔させていただきます! では、失礼致しました。

  • Mr.Alan Smithee
  • URL
Re:

 初めまして。拙稿、ご覧頂いてありがとうございます!

 『トロール・ハンター』すごく良かったですよね!
 饂飩粉さんのご意見にも全て同意ですし、なかなかこういう所謂”バカ映画”の良さを分かってくれる人は少ないので、大変うれしく思います。

 タランティーノについても同様です。なかなか広い市民権を得てはいませんが、これからも追いかけていきましょう!新作『ジャンゴ・アンチェインド』も今から楽しみです。

 私もブログを始めてからまだ日が浅く、”リンク”や”ブロとも”という制度にあまり精通していないのですが、どうぞ何でもご自由になさってください!というか、むしろお願いします!

 そして、これからも当ブログをよろしく!

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