04
2012

[No.67] イングロリアス・バスターズ(Inglourious Basterds) <89点>

Inglourious Basterds



キャッチコピー:『悪名こそ、彼らの名誉<グロリアス>。』

 キル・ヒトラー。

三文あらすじ:1941年、ナチス・ドイツ占領下のフランス、”ユダヤ・ハンター”ことハンス・ランダ親衛隊大佐( クリストフ・ヴァルツ)に家族を惨殺されたショシャナ・ドレフュス(メラニー・ロラン)は、なんとか逃げ延びたものの独り身になってしまう。正体を隠し映画館主として暮らす彼女は、数年後のある日、ヒトラーを含めたナチス高官が一同に出席するナチス宣伝映画のプレミア上映会が自身の映画館で開催されることを知り、復讐のため出席者もろとも映画館を燃やすことを決意する。同じ頃、アルド・レイン中尉(ブラッド・ピット)を隊長としてナチス兵を次々に狩る特殊部隊”イングロリアス・バスターズ(Inglourious Basterds)”もまた、ナチス高官を亡き者にするため、上映会場を爆破する”プレミア作戦”を計画していた・・・

 
 予告編は『レザボア・ドッグス』のそれと同様、劇中無関係なシーンを上手く繋ぎ合わせた秀逸なもの。キャッチコピーも悪くない。そして、ポスターは、本作の真のヒロイン、エマニュエル・ミミューことショシャナ・ドレフュスを演じるメラニー・ロランのものをチョイス。可愛い!

 さて、本作は、タランティーノが『キル・ビル』撮影前からスクリプトを制作し始めていた作品であり、彼曰く”自身の最高傑作”らしい。劇中でも、ラストでブラピ演じるアルド・レイン中尉が「これは、俺の最高傑作だぜ。」と発言する。

 もっとも”最高傑作”とは幾分多義的な言葉であるから、本作がタランティーノの最高傑作であるかは観る者によって異なるだろう。筆者としては、単純に”おもしろい”という意味での彼の最高傑作は、やはり『パルプ・フィション』、”集大成”という意味での彼の最高傑作は、やはりVol.1Vol.2を合わせての『キル・ビル』だと考えている。

 もっとも、本作もタランティーノが言うように彼の”最高傑作”と評するに十分な出来。それは”巧さ”という点においてである。

 まず、執筆に何年も掛かったという脚本の巧さ。
 大まかなプロットは、ナチスを恨むショシャナ、ハンス・ランダを始めとするナチス勢力、そしてナチスの崩壊を目論むバスターズによる三つどもえの物語。このような三つどもえ四つどもえのストーリーというのは、過去に例えば『ジャッキー・ブラウン』などがあった。しかし、ハナから関係者ばかりが集っていた『ジャッキー~』に比べ、本来交わるはずのない者たちの運命がしがない映画館に集結するという本作のプロットの方が、単純に良く出来ていると言える。

 そして、本作の脚本の作りで必見なのは”一つの見せ場がちゃんと次の見せ場に繋がっている”という点。

 例えば、バスターズのうち3名とスパイであるドイツ人女優ブリジット・フォン・ハマーシュマルク(ダイアン・クルーガー)が地下のバーで密会するシーン。ドイツ兵は居ないとばかり思っていたところ、仲間の出産祝いで兵隊が宴会をしており、さらに奥から一人で飲んでいた軍の高官が出現する。これは、バスターズの正体がバレるかどうかという極めて緊迫したシーンで、タランティーノ特有の会話シーンをまるでアクションのように見せる演出が光る素晴らしいシーンだ。
 ちなみに、本作ではもう一か所同様のシーンがある。それは、冒頭でランダが農夫の匿うユダヤ人一家を発見せんとするシーン。ここも素晴らしい緊迫感である。
 さて、指で表示する”3”のやり方を間違えたことで結局正体がバレてしまうバスターズの3名。ここからは、怒濤の銃撃戦。白熱した実弾のアクションで楽しませてくれる。これだけでも十分このシークエンスには価値があるのだが、その真の価値は”この銃撃戦でドイツ語を喋ることのできるバスターズが全滅してしまう”ということ。これによって、ドイツ語が全く喋れないアルド中尉ら残りのバスターズがプレミア会場に赴かなければならなくなり、切れ者親衛隊大佐ハンス・ランダとの冷や汗ものの会話シーンという次の見せ場が生まれるのである。

 筆者の説明はちょっと下手くそだが、この一連の流れがどれほど自然で、かつ、これ以外考えられない流れかということは、実際に観てもらえば分かるだろう。

 また、タランティーノが悩みに悩み抜いたという”オチ”。これも非常に巧い。
 ”プレミア作戦”の舞台となるショシャナの映画館で上映されるのは、国防軍一等兵フレデリック・ツォラー( ダニエル・ブリュール)の英雄的活躍を宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッペルス(シルヴェスター・グロート)が映画化した『国家の誇り』。ゲッペルスは、この作品を何度も「私の最高傑作だ。」と豪語する。
 そしてラスト、映画館爆破に荷担し戦争を終結させることでアメリカ側に寝返り、自分だけうまい汁を吸おうとするハンス・ランダ、その額に、アルド中尉が上層部の命令を破ってハーケンクロイツを刻み込む。「命令違反は銃殺だぞ!」とヒステリックに叫ぶハンスと「小言を言われるだけさ。いつものことだ。」と気楽なアルドの対比が、2つの国家を象徴していてアイロニックだ。 自慢のナイフで逆鉤十字を刻み終わったアルドは、怯えるハンスを覗き込み、部下に対してこのように言う。「これは俺の最高傑作だぜ。」

 ここで終幕。
 いやー、散々悩んだだけあって、かなり素晴らしいオチに仕上がっている。もっとも、ここでもまた筆者の説明はいささか下手くそであって、実際はもっと全編を通して散りばめられた色々な要素がこのラストシーンに結実しているのだが、文章でその全てを書ききることは至難である。隙のない脚本というのは、中々評しづらいものだ。

 さらに、演技という点でも本作には”巧さ”が光っている。
 特に、ハンス・ランダを演じたクリストフ・ヴァルツ。彼の演技は本当に素晴らしい。先ほど言及したように、彼は映画冒頭から登場。過剰に仰々しく、卓越した切れ者のハンス。彼が心優しい農夫のおじさんを徐々に徐々にネチネチと追い詰めていく様は、手に汗握る名シーンだ。その他のシーンでもクリストフ・ヴァルツは、英語、ドイツ語、フランス語、果てはイタリア語まで披露する大活躍。本当にスゴイ。そんな彼の名演は当然のことながら世界中で評価され、第82回アカデミー賞、第62回カンヌ国際映画祭、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞などなど、名だたる賞で助演男優賞を総なめにした。こんなにいい俳優が本作までほとんど無名だったなんて、ショウビズ界とは厳しいところである。

 その他、キャスト面で素晴らしいのは、ヒロイン、ショシャナ・ドレフュスを演じるメラニー・ロラン。これはもう”巧い”とかそんなんじゃない。ただただ可愛い!本当に可愛い!!タランティーノめ、ユマ・サーマン以外にも良い娘見つけやがったな・・・。
 もっとも、ショシャナは、可愛さの中にも焼けた鉄のような強い復讐の意志を持った女性。そのことが最も美しく、そして格好良く表現されるのが、上映会用に身支度をするシーンだ。ここの演出はスゴイ。
 速いテンポの音楽に乗せ化粧を施してく様は、もうメイクアップではなく、さながら”戦闘準備”といった趣。チークを両頬に真一文字に引くところなどは、まるでランボーのようだ。甘く美しい復讐の衣を纏うショシャナ。ドロドロになりながらなりふり構わず血の復讐に邁進していたベアトリクス・キドーとはまた違うパターンの”復讐に燃える女”の姿である。

 ちなみに、実はナレーションを我らがサミュエル・L・ジャクソンが担当している。恥ずかしながら、これには気付かなかった。
 また、アルド・レインの上司であるアメリカ司令部の無線の声をMr.ホワイト、Mr.ウルフのハーヴェイ・カイテルが担当している。これもまた気付かなかった。不覚である。

点数:89/100点
 以上で述べたように、本作は非常に巧く出来た名作である。もっとも、舞台が第二次世界大戦時のナチス占領下のフランスなので、筆者みたいなタランティーノファンが期待するようなアメリカのポップでクールな雰囲気は感じられない。まぁ、全てのタランティーノファンがその点を期待している訳ではないだろうが、少なくとも筆者は、もっと”ロサンゼルスっぽい”又は”テキサスっぽい”彼の作品を観たいのである。

(鑑賞日:2012.3.29)










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Tag:紫煙をくゆらせて これが女の生きる道 サミュエル・L・ジャクソン

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