07
2012

[No.68] ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(EVANGELION:1.0 YOU ARE (NOT) ALONE.) <85点>

CATEGORYアニメ
序



キャッチコピー:unknown

 ヒーローは立ち上がる。
 大切なものを守るため。
 小さな願いを陽電子に乗せて。

三文あらすじ:3年間音信不通の父ゲンドウ(声:立木文彦)に突然呼び出され第3新東京市に赴いた少年、碇シンジ(声:緒方恵美)が目にしたのは、都市を襲う謎の巨大生物”使徒”、そして使徒迎撃用に人が作り出した究極の汎用人型決戦兵器人造人間”エヴァンゲリオン”、その初号機だった。父からエヴァに搭乗するよう命令されたシンジは、始めこれを拒否するも、満身創痍の美少女、綾波レイ(声:林原めぐみ)に代わって搭乗を決意、初陣にして辛くも第4の使徒殲滅に成功する。正式な初号機パイロットとなったシンジが日々使徒と戦いながらも自身に課された重責に苦悩する中、圧倒的火力と鉄壁の防御壁を持つ第6の使徒が第3新東京市に襲来する・・・


~*~*~*~

 
<庵野の造りしもの>
 『エヴァンゲリオン』のオリジナルTVシリーズの内容やそれが果たした役割については、今更語る必要も無いだろう。筆者も数多の少年少女同様、中学時代にしっかりエヴァンゲリオンにはまり、熱狂した者の一人である。

 もっとも、本シリーズにはまった、と言っても、心奪われた理由は人それぞれある。無数に散りばめられた謎、ロボットアニメとしてはあまりにも斬新なガジェット群、悩みを抱えた等身大の登場人物たち。本シリーズの魅力を語り出すとキリがないし、当然その魅力的な要素の全てが有機的に一体となって本シリーズが形成されているのだが、やはり各々一番魂を打ち震わされたポイントがあるはずだ。

 筆者が最も心を奪われたのは、何と言っても斬新な”ロボット像”である。
 筆者にとってエヴァンゲリオンは、誰が何と言おうと”ロボット”であり、本シリーズは、誰が何と言おうと”ロボットアニメ”だ。もちろん、映像作品におけるそれぞれのシーンを読み解き、時に限りなく妄想に近い拡大解釈を展開しながら作品の意味を探求することが大好きな筆者だから、”人類補完計画”を始めとした本シリーズの”謎”部分にも強く心を惹かれた。しかし、やはりロボットアニメにおいて最も重要なのは”漢の魂完全燃焼”な展開ロボット造形であり、その点で本シリーズが打ち出した”エヴァンゲリオン”というロボットは、本当に素晴らしかったのだ。

 まず、デザイナーが”鬼”をイメージしたというそのビジュアル。細身で猫背、特に初号機においてはその禍々しい顔面の造形など、まるで”悪役のような主役ロボット”というのが斬新で素晴らしい。
 マジンガーZ、ゲッターロボ、ガンダムシリーズなど、直立不動でヒーロー然とした従来のロボットに対して、脱力した立ち姿から全力疾走し、時に四足歩行すら辞さないエヴァンゲリオンはどこか有機的で野性的なロボットであり、正義のヒーローには決して見えない。武器に関しても、ロケットパンチやトマホーク・ブーメラン、ビームライフルやビームサーベルといったアニメ的で近未来的なものではなく、パレットライフルのような実弾兵器を主に使用し、プログレッシブナイフのような極めて”華”のない刃物を使う。
 確かに、ガンダムシリーズも緻密で詳細な設定が施されてはいるが、以上の点から言えば、やはりエヴァンゲリオンこそが”リアルロボット”と呼ぶに相応しい巨大メカなのである。

 また”ロボットと神経回路を共有している”という設定。これが素晴らしい。
 従来のロボットにおいても、ダメージを受けた際にはパイロットが苦しんでいた。しかし、それは外部から加えられた強度の衝撃による苦痛であって、いわば乗用車に急ブレーキを掛けた際、後部座席の者が前部座席に頭を打ち付け痛がっているようなもの。その痛みは、あくまでも二次的、間接的なものに留まっていた。
 ところが、エヴァンゲリオンにおいては、ロボットの痛みはそのまま搭乗者の苦痛となる。初号機の腕が切断されれば、シンジくんはあたかも自身の腕を切断されたような苦痛を覚えるのだ。これはスゴイ。もはや巨大ロボットは、搭乗者を守る”強化外骨格”ではない。実質的には搭乗者自身が巨大化しているのであって、その点でエヴァンゲリオンは、監督自身も言及する通り、”ウルトラマン”に近いと言えるだろう。

 そして、何と言っても素晴らしいのは”暴走”という設定。
 筆者が心打ち震わされる”ロボット”の条件は”人型巨大兵器”であり、かつ、“気合いで動くこと”である。ロボットものに限らずSF作品全般に言えることだが、リアルで詳細な設定と胸を熱くするストーリー展開の両方を有する作品はすべからく傑作だ。まさに”熱いハートとクールな頭脳”
 もちろん、ガンダムではニュータイプ能力の発動によってロボットが真価を発揮するのだが、やはり最も興奮するのは”窮地に立った搭乗者の叫びによってロボット自身が覚醒する”という展開。これはおそらくロボットがただの”乗り物”ではなく、パイロットの”相棒”であることが感じられるからであって、その意味でやはり筆者のベストロボット作品は『天元突破 グレンラガン』なのである。
 エヴァンゲリオンにおける”暴走”は、絶体絶命の危機に際して、搭乗者碇シンジの魂の叫びを受け発動されるもので、確かにシンジくんとエヴァは”相棒”という関係からはほど遠いとはいえ、筆者にとってやはり魂が打ち震える設定には違いない。

 このように、エヴァンゲリオンは筆者のフェイバリット・ロボットなのだが、こと作品全体の評価となると、途端に筆者の大嫌いな作品の上位にランクインすることになってしまう。
 その原因は、一も二もなく”登場人物の陰鬱なキャラクター”にある。せっかく”痛みを直に感じる神経接続”や”気合いで発動する暴走”といった良設定があるのに、シンジくんがナヨナヨメソメソしすぎるせいで全く”漢の魂完全燃焼”なストーリー展開にならない。テレビシリーズ第拾九話『男の戦い』はまだしも、その後の展開などは、もはや語るに値しないほどの不完全燃焼具合。
 そんな訳で、筆者にとって本シリーズは、非常に不満の残る作品だったのである。

<せめて、英雄らしく>
 さて、前置きが非常に長くなってしまったが、本作の内容について言及する。

 結論から言うと、本作は本当に素晴らしい!
 筆者をヤキモキさせた陰鬱な描写は影を潜め、しっかりと”シンジくんがヒーローへと成長していく物語”に仕上がっている。
 ありがとう、庵野監督!

 ”ヒーロー”とは”他人を守るために自己犠牲を厭わない人”のことであり、本作でシンジくんの守りたい対象として直接的に描かれるのは、彼の”友人”である。つまりは、空前の規模で展開される使徒殲滅作戦”ヤシマ作戦”。これが本作におけるクライマックスであり、最高に魂を打ち震わせてくれる素晴らしい展開だ。
 まぁ、新劇場版においては、赤く染まった海、巨大な”何か”が倒れていた痕跡、食い違う使徒の番号、初邂逅時落下物からシンジくんを守らないエヴァ、カヲルくんの謎の発言、疑われる”ループ世界説”などなど、スゴイ幅の”詮索しろ”があるのだが、そんなことはどうでもいい!とにかく”ヤシマ作戦”が本作の肝だ。

<第6の使徒、襲来>
 まず、第6の使徒、テレビシリーズにおいて”ラミエル”と呼称された敵が最高に格好良くなっている。もともと単なるブルーの正八面体という謎めいた無機質なフォルムが魅力的な使徒だったのだが、本作では状況、用途に合わせ臨機応変に変形!圧倒的な攻撃・防御力とビジュアルイメージのパワースケールに圧巻である。これでこそリビルドしたかいがあるというものだ。

 そして、テレビシリーズから格好良かった”ヤシマ作戦”の”大作戦感”もしっかり健在。
 形状を留めずコアの位置確定が不可能、さらに隙のないオールレンジ攻撃と鉄壁のATフィールドを持つラミエルに対して、ミサトさん(声:三石琴乃)が提唱したのが”日本中の電力を陽電子砲に一極集中させ、エヴァンゲリオンによる遠距離・精密狙撃で対象を一点撃破する”という作戦。日本中から電力を集めることから、日本の古名である「八島」、さらに平家物語における遠距離射撃の話「屋島」。ゆえに”ヤシマ作戦”。ミサトさんは、多分に含蓄に溢れている。

 リツコさん(声:山口由里子)とミサトさんの会話に乗せて、着々と進められる作戦準備。この準備過程のワクワク感は半端なものではない。エヴァの発進シーンや使徒襲来時のオペレーションシーンなど、いわば”作戦感”ないしは”軍隊感”が本シリーズの魅力の一つだったわけだが、史上最大の作戦である”ヤシマ作戦”では、その魅力が爆発している。
 特に、本作では、作戦準備にいそしむ現地作業員の作業風景がしっかり描写されているのも見所。ネルフ職員を始め、建設業者や電力会社社員も頑張っている。全国規模の作戦だから、当然関西電力も頑張っただろう。ありがとう、電力マンたち!このように、裏方であるメカニックをしっかり描くロボットアニメは、すべからく名作である。

<“だだ”と激励>
 嵐のような作戦準備が進む中、当のシンジくんはというと、なにやら恒例の”だだ”をこねている。ミサトさんはズルイとか何とか。ヘタレ野郎め、兜甲児を見習え!とテレビシリーズの頃は、筆者も憤っていたのだが、本作ではこの”シンジくんのナヨナヨ”がキッチリ後の展開への起爆剤になっている。
 その後は、あ!ミサトさんが”セントラルドグマ”に入れるようになってる!とか、え!最初から”リリス”って知ってんの?とか、まぁ色々変更点があって興味深い。

 そして、ブリーフィング。ミサトさんとリツコさんにより各自の役割分担と作戦内容の詳細が説明されるこのシーンの”作戦感”も素晴らしい。おなじみの音楽もいい。

 プラグスーツに着替える搭乗員。人類の命運が自身の双肩に掛かっていることが実感できず、悩むシンジ。冷めた綾波。そして、友人から届いた激励のメッセージ。しばしの小康状態、ブリッジで話す2人を月が見守る。この演出を経由しての“ヤシマ作戦”は激アツだが、たまにハズす。

 時刻は0時になり、作戦開始!!先ほどまでの静寂とは裏腹に、高鳴るBGM、矢継ぎ早のオペレーション。この”作戦感”、格好いいぞ、ワクワクする!

 怒濤の弾幕、迎撃せんと目まぐるしく形状を変化させるラミエル。砲台が次々と蒸発する中、着々と充電されていく陽電子砲。変圧器が悲鳴を上げる。頑張れ、電力マン!

<ポジトロンスナイパー>
 本作において、エヴァが人型であることの合理性が最も良く表れているのが、この”ヤシマ作戦”。巨大な陽電子砲を発射するために大地に寝そべり、引き金を引く繊細なタイミングを合わすことができるのは、汎用人型決戦兵器人造人間エヴァンゲリオンを置いて他にはいない。

 「最終安全装置、解除!」
 「撃鉄起こせ!」ガッコン!

 電力の充填に伴い、観客のワクワクも最高潮を迎える。
 カメラは、シンジくんが乗る初号機コクピットへ。

 「綾波ほどの覚悟もない。エヴァを上手く動かす自信もない。理由も分からずただ乗れただけだ。人類を守る?こんな実感も湧かない大事なことに、なんで僕なんだ・・・?」

 自問するコクピットのシンジくんから、陽電子砲の砲身を舐めるように映し出すカメラワーク。”ヤシマ作戦”を盛り上げてきた全ての要素が、あたかも陽電子砲に集まる電力のように結集したこのシーンは、本作随一の名シーンだ。

 日向さん(声:優希比呂)のカウントダウンがゼロを告げ、陽電子砲発射!初撃はもちろん外れる。このような大作戦において外れない初撃など筆者は認めない。間髪入れず、反撃に転じるラミエル。朝顔というかスターミーというか、とにかく今までにない最強の攻撃形態から放たれた一撃は、山一つを溶解させ、砲台及び作戦本部に大打撃を与える。

 立て直しを命じるミサトさんだが、シンジくんは当然メソメソモード。しかし、本作におけるシンジくんは、もはやただのナヨナヨ少年ではない。彼は”ヒーロー”だ。
 初号機パイロットの更迭を決定するゲンドウにミサトさんが”彼を信じるべきです!”と主張するシーンは、少しやりすぎで陳腐な感も否めないのだが、それも全く問題ない。やっと、王道熱血ロボットアニメをやる気になってくれたか。
 ありがとう、庵野監督!

<日本の中心に電力を集めたヒーロー>
 そして、シンジくんは立ち上がる。彼には守るものがあるからだ。それは”人類”のような壮大で抽象的な存在ではなく、鈴原トウジ(声:関智一)、相田ケンスケ(声:岩永哲哉)に代表される”友人”
 挿入される彼らの激励メッセージは、まさにシンジくんの自問に対する答え。荒涼たる焼け野原に巨大な陽電子砲を持って立つエヴァ初号機の姿は、ロボットアニメ史上屈指の雄姿と言っていいだろう。これは本当に燃える展開だ。まさに”漢の魂完全燃焼”!
 また一人ヒーローが誕生した瞬間に、我々は立ち会うことが出来たのである。ラミエルの砲撃により、オートで敵をロックオンできなくなっているという展開も良い。シンジくんは、自らの意志で立ち上がり、自らの力で守りたい者を守るのだ。

 本当にベタで熱い展開だなぁ。
 テレビシリーズに不満爆発だった筆者も大満足である。

<映画の採点を>
 点数は、85点!
 非常に長々と書いてきたが、とにかくリビルドされたヱヴァンゲリヲンは、テレビシリーズとは一転、ヒロイックな王道ロボットアニメに仕上がっており大変喜ばしい。とはいえ、本作はほぼテレビシリーズの焼き直しといった感じなので、筆者の付けた点数は少し甘い気もするが、そこは新たなるヒーローの誕生を祝してサービスしておいた。次作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』では、新たなるストーリーとよりエンターテイメントに特化した展開を楽しむことができるので、もっと甘めになってしまうかもしれない。まぁ、いいか。さ~て、この次も、サービス、サ~ビスゥ!

<最後のおまけ>
 次回予告。「”壊れていく碇シンジ”の物語」ではなく、「壊れていく”碇シンジの物語”」というところがミソ。


(鑑賞日:2012.4.4)










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Tag:王道熱血ロボットアニメ リメイク映画 邦画

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