[No.69] ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(EVANGELION:2.0 YOU CAN (NOT) ADVANCE.) <95点>

破



キャッチコピー:unknown

 少女に友情を。
 ヒロインに愛を。
 ヒーローに翼を。

三文あらすじ:”第3の少年”としてエヴァンゲリオン初号機の正式パイロットになった碇シンジ(声:緒方恵美)は、未だ父ゲンドウ(声:立木文彦)とのわだかまりを払拭できない日々を送っていた。そんなある日、ユーロ空軍のエースパイロット、式波・アスカ・ラングレー大尉(声:宮村優子)が搭乗機であるエヴァ2号機とともに来日、時を同じくして、エヴァ仮設5号機を駆り北極のベタニアベースで”第3の使徒”を殲滅したネルフユーロ支部所属パイロット、真希波・マリ・イラストリアス(声:坂本真綾)も極秘裏に日本へ潜入する。使徒と戦う日々の中、シンジは次第にエヴァ0号機パイロット、綾波レイ(声:林原めぐみ)に惹かれていくが、そんなとき、最強の拒絶タイプ”第10の使徒"が第3新東京市に襲来する・・・


~*~*~*~

 
<序章、心、踊らせて>
 まず、アヴァンタイトルが非常に素晴らしい。前作『序』の高評価から、非常に注目されていた本作。筆者も多くの”エヴァファン”同様、期待に胸を高ぶらせて劇場に足を運んだのだが、そんな期待を遙かに凌駕する圧倒的なオープニングシークエンスには驚愕した。

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 真っ暗な画面に英語でのオペレーション音だけが聞こえる冒頭。期待の新キャラ、真希波・マリ・イラストリアスのいきなりの登場にまず驚かされるのだが、本シリーズの魅力である”作戦感”は本作でもしっかり健在。封印監視特化型限定兵器 人造人間エヴァンゲリオン 局地仕様 仮設5号機の起動準備風景がきちんと描写される。

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 それにしても、仮設5号機のネーミング!”作戦感”ないしは”軍隊感”出てるなぁ。非常にステキな名前だ。まぁ、ビジュアルは、いささか”エヴァらしさ”に欠け、手放しで格好いいとは言えないのだが、その溢れんばかりの”仮設感”は素晴らしいし、狭い通路内をムニムニとタコのように走り回る様は大変ステキだ。

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<マリ、男気のむこうに>
 そして、この仮設5号機を駆る新パイロット、真希波・マリ・イラストリアスも天晴れの一言に尽きる。俺たちは、こんなポジティブなパイロットが見たかったんだ!『365歩のマーチ』なんかを口ずさみ、会敵に歓喜し、アケロンへと脱出した第3の使徒をアグレッシブに追撃する。使徒が放つレーザービームで右腕を切断されても、彼女はシンジくんのように騒いだりしない。

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「えぇい!しゃーない!腕の一本…くれて…やる!!」


 コレだ!使徒のコアを掴んだ左腕にエネルギーを集中し、操縦桿を両手で力の限り押し込むマリ。

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「さっさと…くたばれぇぇーーー!!!」


 そう!それでこそ、ロボット・パイロットだ!!

 筆者は、前回『序』のレビューで、ロボットにとって”気合いで動く”というのが重要な条件だと言った。そして、その反射的作用として、搭乗者はここ一番の見せ場で絶叫しなければならない。

 兜甲児の「ロケット・パーーーンチ!」、藤原忍の「やぁっってやるぜ!!」、ドモン・カッシュの「シャァァァイニング・フィンガーーー!!」、シモンの「俺を、誰だと思っていやがるーーー!!」などなど、枚挙に暇がないが、とにかくロボットのパイロットは絶叫してナンボみたいなところがある。これはもちろんスーパーロボットだけではなく、リアルロボットにおいても妥当する。例えば、シロー・アマダの「アイナー!好きだーーー!!」なんかは、その唐突さも相まってロボットアニメ史上屈指の名言と言っても過言ではないだろう。

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 そんなステキな歴代パイロット達の叫びの数々と肩を並べるくらい、このマリの咆吼は胸を熱くしてくれた。

<第3の使徒、襲来>
 さらに、このアヴァンタイトルでステキだったのが、オリジナルTVシリーズには登場しない第3の使徒だ。未だその名前も不明な謎めいた使徒。永久凍土で発見され、研究のため人類に切り刻まれた結果、全身骨のみの姿になっている。よって、筆者は仮に彼のことを”第3使徒 ホネエル”と呼称しているのだが、医学部に通う実弟に聞いたところ、肋骨のことを医学用語で”コスタリス”と言うらしく、”第3使徒 コスタリス”というのも捨てがたい。本レビューでは、一応”ホネエル”で統一する。

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 ホネエルの最も魅力的な点は、数少ない情報から想像される彼の”可愛らしさ”である。

 まず、永久凍土で発見され、人類に捕縛されたという事実に注目して欲しい。彼は、何故永久凍土にいたのか。エヴァなしでは使徒に対抗できない人類に捕まったということは、おそらく彼は永久凍土で凍り付けになっていたはず。もしかしたら、彼は有史以前から永久凍土に眠っていたのかもしれないが、例えば、ひょんなことからシベリア以西に生まれ落ちた彼が、第3新東京市を目指して進む内、うっかり永久凍土で凍って動けなくなってしまったと想像してもらいたい。なんというドジッ子。そこを人類に捕まり切り刻まれてしまったのである。可愛そうなホネエル…。

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 そんな彼は、必至で辺獄エリアからの脱出を試みる。強固な封印の隙を突いて、カタカタカタカタ、一生懸命に走る。非常に愛くるしい。最後の封印を解かんとして巨大な円柱を押し上げていく際などは、よく見ると複数の小さな足をパタパタ動かして飛んでおり、愛しさすら覚えるほどだ。

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 また、彼が何故にこれほどまで“骨身を惜しまず脱出を試みているか、という点にも思いを馳せてもらいたい。彼ら使徒の存在理由はただ一つ。第3新東京市にあるネルフ本部のセントラルドグマに辿り着き、リリスと接触することだ。ホネエルは、そんな自らに課された”業”を全うするためだけに、必至で頑張っているのである。ホネエルよ、なんて頑張り屋さんなんだ…。

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 どうだろうか。このように見てくると、第3使徒ホネエルがどれほど”可愛らしい”使徒かお分かりいただけると思う。もし”手乗りホネエル”などがいたら、是非ともペットとして飼いたい。

<畳みかける活劇、そして>
 随分くだらない話でスペースを割いてしまったが、本作の見所は、オープニングから惜しげもなく披露される大迫力のアクションシーンである。

 VSホネエル戦以外で筆者が特に感銘を受けたアクションシーンは、VSサハクイエル戦、そしてやはりVSゼルエル戦なので、以下ではその2つに特化して書くことにする。本当は、2号機初登場時に瞬殺された使徒、筆者が仮に”第7使徒 ハリエル”と呼んでいる使徒も中々可愛く魅力的な奴なのだが、今回は残念ながら割愛せざるを得ない。

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<決戦、第3新東京市>
 まず、サハクイエル。テレビシリーズでは、第10使徒として登場、『奇跡の価値は』という名チャプターでネルフを苦しめた。

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 本作では、第8の使徒として登場するものの、名前は未だ明らかではない。そもそも衛星軌道上での初登場時には、何やら怪しげな球体として存在しており、テレビシリーズで見せたあの独特のフォルムは着地直前まで出し惜しみされている。ここで格好いいのは”光を曲げるほど強力なATフィールド”という設定。だから黒い玉にしか見えないのか。でも、明らかに本来のサハクイエルを模した模様が無数にその表面を動いているのは何故だ。自己主張の強いそんな彼もまた”可愛らしい”使徒と言える。

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 このシークエンスの真の主役は、何と言っても”使徒迎撃専用要塞都市 第3新東京市”だろう。確かに、使徒発見からの”作戦感”も素晴らしいし、”クラウチングスタートから全力疾走する巨大ロボット”というエヴァの最も魅力的な姿を拝むことが出来るのもこのシークエンスだ。しかし、”使徒迎撃専用要塞都市”たる雄姿を堂々と披露してくれる第3新東京市が何を置いても格好いい。

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 衛星軌道より飛来するサハクイエル。距離は2万m。作戦部長であるミサトさんが渋い。「おいでなすったわね。エヴァ全機、スタート位置。」初号機、2号機、及び0号機がクラウチングスタートの姿勢をとる。やはりこれは斬新で格好いい。

 二次的データが云々…の後、

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「では、作戦開始。」


 パージされるアンビリカルケーブルと、内部電源に切り替わるパネル表示。そして…

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「…発進。」


 この抑えられたられたテンションがたまらなく渋い。重厚な音楽も素晴らしい。直後、ウサイン・ボルトよろしくスタートを切るエヴァ各機は、走る走る。野を越え山を越え、川を横切り送電線を飛び越えていく様子が最高に斬新だ。2号機では落下位置に間に合わないことが判明し、シンジくんが引き受ける。「こっちで何とかする。ミサトさん!」

 ここからが第3新東京市の本領発揮。

 「緊急コース形成!605(ロクマルゴ)から675(ロクナナゴ)!」

 …? 観客にとって要領を得ないミサトさんの指示。次の瞬間、巨大な鉄のパネルが何枚も街から出現、あたかも競輪コースのように初号機の通り道を形作る。第3新東京市が露わにする、驚愕の戦闘形態である。

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 「次!1072(ヒトマルナナニ)から1078(ヒトマルナナハチ)、スタンバイ!」

 今度はビルが高低差を付けて出現し、初号機の足場となる。ナイスサポート!これはスゴイ展開だし、何より最高に格好いい。この展開に興奮し、半ばニヤけながら「おいおい…♪」と心の中で突っ込みを入れてしまったのは、筆者だけではないだろう。

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 階段状になったビルをマリオよろしくホップ・ステップしていき、大ジャンプを繰り出すエヴァ初号機。巨大ロボットのこんな姿などめったにお目にかかれない。やっぱりロボットとしてのエヴァンゲリオンは最高だ。

<“漢”の戦い>
 次に、VSゼルエル戦。テレビシリーズでは第14にして最強の使徒として登場、筆者の好きな『男の戦い』においてネルフを苦しめた。

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 本作では第10の使徒として登場。肩書きが格好いい。”最強の拒絶タイプ”。しかも、その肩書きは伊達じゃない。降り注ぐミサイルを避けもせず、放った一撃でジオフロントに至る24層全ての特殊装甲を融解させる。18層だったテレビシリーズに比べ、大幅なパワーアップだ。真面目にキャリキャリ掘削していたラミエルが馬鹿に思えてくる。

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 そして、ゼルエルとジオフロント内で会敵するエヴァ2号機。これはもう筆舌に尽くしがたいほど格好いい。バルディエルの精神汚染のため戦線を離脱したアスカに代わり、同機を駆るのは再び登場ポジティブ・チルドレン、または、”女版兜甲児”こと真希波・マリ・イラストリアスだ。戦いの神マルスを思わせるその鬼神のごとき勇猛果敢な戦いぶりもさることながら、彼女が最も格好いいのは、やはりこのくだりだろう。

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「このままじゃ勝てないな…。よし!試してみっか!」


 ものすごいポジティブの塊。少年漫画史上”最強の積極タイプ”である孫悟空の「いっちょやってみっか!」を彷彿とさせる。「人を捨てたエヴァの力、見せてもらうわ。」 そして…

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「モード反転!裏コード、”ザ・ビースト”!!」


 これは格好良すぎる!筆者が本作を観るために4回も劇場に足を運んだのは、このシーンを観たかったからと言っても過言ではない!

 ゼルエル戦で最も”格好いい”台詞がマリのこの台詞だとするなら、最も”泣ける”台詞は綾波レイの口から飛び出す。

 シンジと互いに心惹かれ合うレイは、2号機敗北後、応急処置直後の0号機で戦場へ姿を現す。巨大なN2ミサイルを携えて…。しかし、0号機の腕力、そしてN2ミサイルのジェット推進を以てしても、ゼルエルのATフィールドは突破出来ない。なんたってゼルエルは”最強の拒絶タイプ”だ。ここでレイは呟く。

破23

「碇くんがもう、エヴァに乗らなくていいようにする…」


 健気な女の子だ。一拍おいて…

破24

「だから…!」


 涙腺爆発。”だから”何なのか。”もう少しだけ頑張って、0号機”なのか、”私はどうなってもいい”なのか。いずれにせよ、”だから…”で止める演出には脱帽である。

 そんな健気なレイを一口で食べてしまうゼルエル。前は初号機に食べられてたのに…。

破25


 ここで立ち上がるのが”ヒーロー”碇シンジである。前作では”友人”を守るため立ち上がった彼が本作で守りたいのは、綾波レイという”自分が惚れた女”。惚れた女を救うため、なんていうのは、「観客が盛り上がる”ヒーローが奮い立つ理由”ランキング」の堂々たる1位と考えて間違いない。

 ヒーローとなったシンジくんは、テレビシリーズより勢いがある。再びエヴァ搭乗を進言する際には「父さん!」と言ってゲンドウを怯ませ、カタパルトにゼルエルを押しつけたシーンでは、固定ロックをミサトさんの指示で外してもらい、自分でスイッチを蹴って起動させる。ところが、勢いそのままに地上に出るも、激しく動きすぎたせいか内部電源ダウン。テレビシリーズではここで「動け動け…」と延々呟いていたのだが、我らが”ヒロイック・チルドレン”はひと味違う。

破26

「綾波を…返せ!!」


 ヒーローの覚醒!そして“覚醒モード”突入!本作中最も”ヒロイックな”台詞がコレだろう。やっぱり王道熱血ロボットアニメだ。ありがとう、庵野監督!

 ”最強の拒絶タイプ”をも軽く圧倒する強力なATフィールドのビジュアルイメージも非常に格好いい。「自分自身の願いのために!」というミサトさんの叫びも熱い。まさに”漢の魂完全燃焼”!!

破27


僕がどうなったっていい…。
世界がどうなったっていい…。

だけど綾波は…
せめて綾波だけは…

絶対助ける!!



 これこそが“現代風ヒーローの心意気”である。リブートされた『アメイジング・スパイダーマン』にその傾向が見られたように、そして、前作においてシンジくんが“友人”のために立ち上がったことからも分かるように、近年のヒーローは、もはや“世界を救うため”という抽象的な理由では動かない。全体主義がことごとく衰退し、高度にインディヴィジュアライズされつつある現代において、もはやそんな動機は説得力を持たないのである。

破30


 だから、綾波のためだけに世界を滅ぼしかけるなんてシンジはEOEから何も変わらぬ酷いヤツだ!などと思ってはいけない。彼は、あの頃のように“だからみんな、死んでしまえばいいのに…”とは続けていない。とりあえず、最優先で綾波を救出したいという思いを強く表明しただけであって、おそらくカヲルくんのカシウスの槍が無ければ、今度はサードインパクトを止めるために再び絶叫していたことであろう。やや無鉄砲に突き進み、その結果招いたピンチも圧倒的な力と男気でねじ伏せるというのが、真のロボットパイロットの“魂”である。

 さらに、「代わりはいるもの…」というレイお決まりの自虐的フレーズにもヒーローは動じない。

破28


違う!綾波は綾波しかいない!

だから今!助ける!!



 ナイス絶叫!おめでとう、これで君も、立派な”ロボットパイロット”だ!!

 その後の「来い!」も極めて格好いい。『翼をください』も非常に効果的。惚れた女を助けるために”翼”を求めた男の心境を良く表している。『今日の日はさようなら』は少しあざとかったが、これは良い。そして、リツコさんはやっぱり何言ってるか分からん。

破29


<映画の価値は>
 点数は、95点!今回も長々と書いてしまったが、本作はまさに筆者の求めるロボットアニメの傑作だ。筆者にとって永遠のマスターピース『天元突破 グレンラガン』に匹敵するような”熱いハートとクールな頭脳”、そして”漢の魂完全燃焼”、さらには”恋と気合いが世界を変えるってこと”といったテーマが、本作にはある。このようなヒロイックで熱い展開は、筆者にとってまたとない”サービス”。今年公開が予定されている次作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(Quickening)』も非常に楽しみだ。

<おまけ、書き終えた後>
 本当に、この次もサービス、サ~ビスゥ!して欲しいものである。


<ネタは残っているよ、どんなときにもね。>
 この特報は、本当にがっかりだった。


 が、先日遂に劇場版予告解禁!明かされる新キャラのビジュアル!生きていた眼帯アスカ!そして、桃色の巨人“エヴァ8号機”!しかと目に焼き付け、公開日を待て!!


(鑑賞日:2012.4.6)
(劇場鑑賞日:2009.6.27)
(劇場:109シネマズ箕面)

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