[No.73] サマーウォーズ(SUMMER WARS) <86点>

サマーウォーズ



キャッチコピー:『それは戦争という名の、とてもやさしい物語。』

 1億5千万の”コイコイ”。

三文あらすじ:鉄壁のセキュリティを誇る仮想空間OZ(オズ)の普及により、今やショッピングやゲームだけでなく、各種行政手続まで世界中の全ての事柄がインターネット上で行われている。平凡な高校生、小磯健二(声:神木隆之介)は、夏休み直前のある日、憧れの先輩、篠原夏希(声:桜庭ななみ)から”一緒に実家に帰省して欲しい”と頼まれ引き受けるが、健二を待っていたのはいわゆる日本の伝統的大家族”陣内(じんのうち)家”の面々だった。夏希のフィアンセとして迎え入れられたことに健二が戸惑う一方で、正体不明の人工知能”ラブ・マシーン”がOZの全システムを掌握する事件が発生、健二を含めた陣内家は、世界の命運を賭けた真夏の合戦(Summer Wars)に挑むことになる・・・


~*~*~*~

 
 本作の監督の細田守は、前作『時をかける少女』において”恋”や”進路”と言った女子高生の等身大の悩みを描きつつ、きっちりと上質のSF作品を作り上げた期待の新星。作品が持つ”冒険感”や大人から子供まで何の気兼ねもなく楽しめるストーリーといった共通項から”ポスト宮崎駿”と謳われる監督である。

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 そんな細田守が本作で描くのは”伝統的な田舎の大家族 vs 最新の人工知能の合戦”、そして、それを通して浮かび上がる”「絆」=「愛」の大切さ”である。最新のコンピューターグラフィックスで描かれる仮想空間OZでの攻防と、みなが共通して燃えることのできるベタなテーマ。この2つが見事に融合した本作は、エンターテイメントとして極めて高い完成度を誇った秀作だ。

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 中でも最高に燃えるのが、終盤で展開される花札でのバトルシークエンス。これは本当に素晴らしい。

 キング・カズマとの対決に勝利し、人工衛星の制御系統を掌握した”ラブ・マシーン”は、原発を落下目標としてカウントダウンを開始する。もはや打つ手無し。絶望が陣内家を包む中、諦めない健二くん。帰ってくる侘助。そして、一致団結する旧家の家族たち。夏希に自らのアバターを託し、彼女の背後に群がって戦局を見守りながら必死に応援する家族たちと、4億を超えるアバターを取り込んだ巨大な”ラブ・マシーン”の対峙構図は、人類最古のネットワーク”家族” vs 人類最新のネットワーク”インターネット”という本作のテーマを象徴している。

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 序盤は順調だった対局も徐々に雲行きが怪しくなり、夏希の手持ちアバターは遂に74に。再び襲い来る圧倒的絶望。所詮は一家族。人類の叡智が結集された最新の人工知能には敵おうはずがない。無情に進むカウントダウン、戦意を喪失した夏希、張り付いたかのように不動を貫く”74”の表示…。そのとき!突如”75”を示したアバター数に驚いた夏希がふり返ると、そこには…

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「ナツキへ。ボクのアカウントをどうぞ使って下さい。」


 ドイツの男の子だ!直後、カジノフィールド内に無数に出現するアバターたち。世界中に暮らす1億5千もの名も無き人々が、世界の脅威と戦う一家族に力を貸したのである。完全に”元気玉”的展開!これは燃える!!加えて、筆者にとって永遠のマスターピース『踊る大捜査線』の楽曲を担当した松本晃彦『1億5千万の奇跡』が興奮をさらに加速させる。

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 本作で描かれるのは、”家族”というアナログな繋がりと”インターネット”というデジタルな繋がりの戦い。前者の象徴としてフィーチャーされていたのが陣内家だ。すなわち、”ラブ・マシーン”の戦力が無理矢理取り込まれた4億ものアバターなのに対して、夏希や健二くんの戦力は紆余曲折を経て彼に協力することを決意した陣内家の家族たち。しかし”家族”は彼らだけではない。人類が作り出した”インターネット”というツールは、使い方を誤れば”ラブ・マシーン”のような厄災を生んでしまうが、正しく使えば世界中の人々を1つの”家族”として繋いでくれる。

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 彼らの願いを背負い再び”ラブ・マシーン”と対峙する夏希に必勝のレアアイテムを授けるのは、OZの守り神である雌雄2体のクジラ”ジョン”と”ヨーコ”。偉大なアーティストの名を冠した彼らは、人と人とを真に繋ぐものが”愛”であることを教えている。”好奇心”を与えられた”ラブ・マシーン”は、まさに技術の発展にのみ指向する”科学”の象徴。しかし、”愛”という名を与えられながら本当の”愛”を知ることが出来ず、結果人類の厄災となってしまった”ラブ・マシーン”は、心ない科学が行き着く末路を暗示しているように思える。

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 4億ものアバターを隷属させる”愛”無き繋がりと、自らの意志で結集した”愛”有る繋がり。結局、人類最古のネットワークと人類最新のネットワークとの合戦の中で強調されるのは”愛”あるネットワークこそが人類最強であるという真実だ。

 またしても何だか雑多な文章になってしまったが、とにかく、クライマックスと呼ぶにふさわしいこの花札バトルは、もうどーしようもなく燃えるシークエンスに仕上がっており大変素晴らしい。侘助も燃えてるぜ。「ぶちかませ!!」

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 その後、息つく暇もなく、陣内家への衛星落下を防ぐため、夏希に代わって健二くんが奮闘する。数学の非凡な才能を持ちながら国際数学オリンピックの日本代表になりそこねた彼が、今度は”守りたいもの”のために自身の持てる勇気と才能の全てを懸けて戦うこのシークエンスも、完全に”漢の魂完全燃焼”。「君にしか解けないんだろ、これは。」と恐怖を露わにしながらも逃げることをやめ、全てを健二くんに託すおじさんが大変渋い。

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 しかし、このシークエンスで一点釈然としないのは、”健二くんは衛星が近隣の住居に墜落しないという確信があったのか?”というポイント。擬似情報を噛ませれば何とか落下地点に誤差を生じさせることが出来るかもしれない、という発想だったはずなので、人に迷惑がかからないあの空き地に落とそう!というような操作は出来ないものと思われる。事実、衛星は陣内家のすぐ側に落下しており、少なくとも付近の住宅及び田畑には、尋常ならざる被害が出ているはずだ。まぁ”戦争”に犠牲は付きものではある。

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点数:86/100点
 ほぼ文句なし。極めて上質のエンターテイメント作品だ。ただ、個人的な注文を付けさせてもらうなら、次回作の主人公はもっと”ヒロイックな”人物に設定して欲しい。本作に限ってはナヨナヨした健二くんだからこそ良かったという感じもあるが、あんなに煮え切らない野郎はやはり男として許し難いものがある。よって、この次は男気溢れる、例えばそう、パズーのようなヒーローの物語を是非期待したい。よろしくお願いしまーす!

(劇場鑑賞日:2009.8.1)
(劇場:ユナイテッドシネマ岸和田)

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