24
2012

[No.77] ナラボー(Nullarbor) <75点>



キャッチコピー:unknown

 人生という旅に出る時は、想像できうる絶望とトランクいっぱいのタバコを持ってゆくべきだ。

三文あらすじ:オーストラリアに広がる平原ナラボー(Nullarbor)を真っ直ぐに伸びる幹線道路。ドライブ中のある愛煙家の男は、前を走る車を避ける際、最後の1本をダメにしてしまう。怒り心頭の愛煙家とマイペースな老人による怒濤のカーチェイスが始まった・・・

<本編(10分45秒)>



~*~*~*~

 
 筆者の大好きな”砂漠の幹線道路モノ”にして”愛煙家七転八倒モノ”。まぁ、観てもらえば分かる通り、何の解釈も必要ない非常に単純な小話である。本作で最も評価したいのは、やはりラストの落とし方

 一般常識からして、悪いのは全部愛煙家の男だ。タバコを取るために脇見運転をし、勝手に老人の車と衝突しそうになったためそのタバコを飲み込んでしまい、勝手に怒って老人に喧嘩を吹っかける。なんと自分勝手な。しかも、嫌煙ブームの昨今からすれば、彼が愛煙家であるということだけで既に幾分悪いイメージが付いて回る。普通の物語における因果律で言うなら、こんな男はラストで一発大きなバチが当たり、対する老人は引き続き悠々とハーモニカなんかを吹きながら旅を続けてしかるべきと言えるだろう。

 しかし、本作のラストはそんな窮屈な”勧善懲悪”ではない。終盤、遂に真っ向勝負する愛煙家と老人。この”イキっている方が無闇矢鱈とスタートし、もう一方はそれを冷静に見送る”というチキンレースは、まさに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のラストで人間的に大人になったマーティが挑むそれと同じ。

 暴走、発火、分解、遂には大破する愛煙家の車。これで一応傍若無人な愛煙家にはしっかりバチが当たったと言える。ところが、一方的に喧嘩を吹っかけられた老人は、呆然と海原を見つめる愛煙家にタバコの缶を放り投げる。極めていぶし銀で達観した老人だ。結局その缶にはタバコではなくガムが入っていたというのもほどよくシニカルでステキな展開。おそらく、老人もかつてはかなりのヘビースモーカーだったのだろう。ボロボロの真っ黒焦げになり疲れ果てた愛煙家を見る老人の表情には”悪いな小僧、気持ちは分かるぜ。”といった雰囲気が漂っている。

 本作はこの後のもう一ひねりがおもしろい。サイドブレーキの引きが甘かったのか、ゆるゆると進み出す老人の車。慌てて後を追う老人を尻目に、そのまま大海原にダイブする。結果、愛煙家とともにヒッチハイクを試みることになる老人。何も悪いことをしていないハーモニカ吹きの彼にこのような無情過ぎる天罰が下る意味とは、一体何だろうか。

 筆者が思うに、これこそが”ナラボー”なのである。ナラボーとは、オーストラリアに広がる広大な大平原。劇中終始描写されるように、そこには限りなく広がる地平線、真っ青な大空、全てを包む大洋があるだけだ。そんな大自然”ナラボー”にあっては、人間の些細ないざこざなど何の意味も持たない。どちらが喧嘩を吹っかけようが、どちらが悪かろうが、愛煙家だろうが、老人だろうが、無限に広がる大自然の中ではみな小さな人間である。

 よって、本作の主人公はあくまでも”ナラボー”。視点は終始愛煙家と老人に固定されているものの、結局はもっと俯瞰で見た物語である。『愛煙家(A Smoker)』でも無く、『ドライバー(The Drivers)』でも無く、『ナラボー(Nullarbor)』なのである。

 本作には、一見すると嫌煙のメッセージが込められているようにも思えるのだが、以上のように考えると”別にタバコ吸ってようが吸ってまいが関係ないよ”という極めてフラットな作品であるということが見えてくるだろう。

点数:75/100点
 砂漠あり、幹線道路あり、タバコあり、カーチェイスあり、渋い老人おり、辛気くさいメッセージなし。本作は、紛れもなく一級のロードムービーである。

(鑑賞日[初]:2012.4.24)






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Tag:紫煙をくゆらせて ロードムービー 砂漠

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