[No.83] フォー・ルームス(Four Rooms) <80点>

Four Rooms



キャッチコピー:『1996 NEW YEAR タランティーノ軍団 世界席巻!』

 あるベルボーイの憂鬱。

三文あらすじ:大晦日、ロサンゼルスのとあるホテル。ベルボーイのテッド(ティム・ロス)は、その日が初出勤日だった。やる気十分の彼だったが、怪しげな儀式を行う魔女集団、テッドを妻の浮気相手と勘違いした危ない男、お転婆な2人の子供、そしてハリウッドから来たスター、といった4つの部屋(Four Rooms)の宿泊客たちによって大騒動に巻き込まれていく・・・


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 我らが変態監督クエンティン・タランティーノが、アリソン・アンダース、アレクサンダー・ロックウェル、ロバート・ロドリゲスという3監督に声を掛け、各人が監督する4話のオムニバスで綴られるのが本作『フォー・ルームス』

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 タランティーノの名の下に徴集された上記3監督のうち前2者については、その名こそ聞いたことあれ、その作品は1作たりとも観たことがない。アリソン・アンダースは、一応タランティーノの元恋人(と言っていいだろう。)として筆者の認識にどっしりと鎮座しているものの、アレクサンダーなにがしに関しては、全く以てチンプンカンプンである。残る1人は言わずと知れたタランティーノの盟友、最高にクールな『メキシコ』シリーズや映画史上希に見る変態爆発映画『プラネット・テラー』、そして最近ではダニー・トレホの魅力満載『マチェーテ』を監督したロバート・ロドリゲスだ。

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 本作の構成は、以下の通り。まず、第1話は、タランティーノの元カノ、アリソン・アンダースが監督する『ハネムーン・スイート お客様は魔女(MISSING INGREDIENT)』。続いて、よく分からない監督アレクサンダー・ロックウェルによる『ROOM404 間違えられた男(THE WRONG MAN)』。そして、第3話は、我らがロバート・ロドリゲスが監督する『ROOM309 かわいい無法者(THE MISBEHAVERS)』。トリを飾るのは、本作の主催者クエンティン・タランティーノがお届けする『ペントハウス ハリウッドから来た男(THE MAN FROM HOLLYWOOD)』である。

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 まず、第1話。これは何だか変な話である。正直あまりおもしろくはない。ストーリーは、邦題が示すように魔女のお客様がハネムーン・スイートに集まり、伝説の魔女ダイアナを復活させんと各々必要な材料を持ち寄って儀式を始めるのだが、魔女の1人が材料を持ってきておらず…というもの。原題は、この”欠けた材料”のことを示している。結局この材料というのが”精子”のことで、仕方なく現地調達に切り替える魔女達は、ベルボーイであるテッドに目を付ける、という展開になる。劇中字幕で”ザーメン”が連呼されたりと、第1話にして中々下品なシークエンスだ。

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 しかも、魔女を演じる女優達の演技が良い訳でもなく、オチが捻ってある訳でもなく、見所と言えば、タランティーノの『レザボア・ドッグス』冒頭で『ライク・ア・バージン』の解釈が話題にされていたマドンナのボディコン姿と魔女のうち2人が惜しげもなく披露するおっぱいぐらいだろうか。やはり何故第1話に持ってきたか分からないパートである。ところで、今思うとタランティーノは、処女作のオープニングで処女の話をしていた訳で、今更気付いた筆者は遅れているのかもしれないが、これは中々興味深い。

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 次に、第2話。これはそこそこおもしろい。パーティに興じる404号室の客から氷を持ってくるよう頼まれたテッドは、間違って409号室に入ってしまい、そこにいたシグフリード(デヴィッド・プローヴァル)という男に銃を突きつけられてしまう。彼は、テッドを妻であるアンジェラ(ジェニファー・ビールス)の浮気相手と勘違いしたのだ。という導入部。

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 しかし、実際はそう単純な話ではない。本シークエンスには、最後まで観てもその意味が明らかにならない描写がいくつかある。まず、テッドに銃を突きつけたシグフリードは、何故か既に右耳から出血している。そして、バスルームに広がる血。また、何故便器の中に人が入っていたのかも大きな謎だ。これらの点については、作中一切説明がなく、もしかしたら何らかの作品へのオマージュなのかもしれないが、ある程度観客の解釈に委ねられている部分と言えるだろう。そこで、筆者は自信の灰色の脳細胞をフル稼働させ、様々な角度から1本筋の通った解釈を導こうと鋭意努力したのだが、結論から言うとその試みは徒労に終わってしまった。

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 すなわち、筆者の考えでは、このシークエンスに明快なストーリーは無い。一応ラストのオチから、シグフリード夫妻は、部屋に迷い込んできた者をカモにして毎回”浮気男を問い詰めるプレイ”をしているらしいということが分かるものの、随所に散りばめられた謎めく描写は、全て観客のイマジネーションを喚起する以上の意味を持たず、有っても無くても良い、いわばその全てが一種のマクガフィンとも言える代物なのである。

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 したがって、このシークエンスの見所は、シグフリードを演じるデヴィッド・プローヴァルの好演、後のシークエンスにも出演のアンジェラを演じるジェニファー・ビールスの妖艶、そして、奇縁によって事件に巻き込まれるテッドの騒然たる試練のみと言っていい。

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 もっとも、途中で掛かってくる電話がこの次のシークエンスと繋がっているという遊びも楽しいし、本シークエンス冒頭でテッドが見せるタバコの吹かせ方は非常にクール。とにかく、オムニバスの一小話としては、かなり完成度の高い秀逸なシークエンスと言えるだろう。

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 続いて、第3話。先ほど述べた第2話も中々完成度が高かったが、本作中、脚本の完成度という点で最も完璧なのがこの『かわいい無法者』である。冒頭から子供2人の留守番が始まるまでは、とにかくアントニオ・バンデラスの格好良さ、これに尽きる。特に圧巻なのは、妻と肩を並べてエレベーターまで歩き扉が閉まる寸前に見せるキス。やり過ぎ感がたまらなく格好いい。

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 ストーリーテリングの巧さについては、もはや語る必要も無いだろう。冒頭から周到に張り巡らされた、臭い、酒、タバコ、アダルトチャンネル、「誰か死んだのか?」などなど、いくつもの伏線がラストでバシッとキレイに回収される。巧い!さすがは我らがロバート・ロドリゲスだ。ちなみに、本シークエンスで意外なのが、サルマ・ハエックの出演。筆者は、本作を何度も鑑賞しているのだが、全く気付いていなかった。しかも、出演していると言われても何の役をやっていたか分からなかったのだが、おそらくあの淫売、彼女がサルマ・ハエックだと思われる。今にして思えば、何とも贅沢なカメオ出演だ。

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 最後に、第4話。脚本の完成度が最も高いのが第3話なら、本シークエンスは、落とし方が最も巧いシークエンスと言える。監督・脚本は、我らがクエンティン・タランティーノ。いつものことながら、序盤・中盤・後半とダラダラペチャクチャ、とりとめのないお喋りが続く。マイ・フェイバリット・アクター、ブルース・ウィリスが出演していることも後押しして、タランティーノファンの筆者は冒頭からぐいぐい引き込まれていったクチなのだが、そうでない人にとっては、全くもって退屈なシークエンスだと感じられるに違いない。

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 しかし、そこはクエンティン・タランティーノ。彼は単なる足フェチではなく、スカしの天才である。ミアのオーバードーズ、キドーの娘登場などなど、引っ張って盛り上げてから観客の期待とズレた展開を持ってくる彼の手法は、我々タランティーノファンの心を掴んで離さない。そして、筆者がタランティーノ史上のベスト”スカし”だと考えるのが、まさに本シークエンスのオチなのである。

 様々な事件に嫌気が差したテッドは、ボスであるベティに辞意を表明するが、彼女の懇願を受け、最後の仕事とペントハウスに宿泊するハリウッドスター、チェスター・ラッシュ(クエンティン・タランティーノ)の元へ向かう。ここからは、タランティーノの独壇場。相変わらず変態チックで魅力的なマシンガントークだ。お疲れ系いぶし銀俳優ブルース・ウィリスも相変わらず良い演技。再登場ジェニファー・ビールスのバスローブ姿もセクシーである。

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 ひとしきりくだらないトークが繰り広げられた後、バーカウンターでいよいよ本題へ。名匠ヒッチコックによる『リオから来た男』の再現だ。同作においてピーター・ローレとスティーブ・マックィーンが行った賭け、すなわち、10回連続でジッポの点火に成功すれば高級車をゲットできるが、失敗すれば小指を切り落とされるというギャンブル。指切断の執行人に指名されるも、当然これを断るテッド。100ドルを提示し、1分間だけ話を聞くよう提案するチェスター。この1分は本当に素晴らしい。あくまで突拍子もない絵空事であるという前提で、極めて説得的。筆者などは、このシークエンスの音源だけをミュージック・プレイヤーに落とし込み、外出時に繰り返し聞いていたほどだ。

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 1分後、見事丸め込まれ、逆にノリノリで手斧を構えるテッド。機は熟し、舞台は整った。ひとときの静寂と緊迫。チェスターの掛け声でノーマン(ポール・カルデロン)がジッポを鳴らし…


 点火失敗、小指切断、報酬獲得、主役退場、室内騒然、七転八倒、映画終幕…


 素晴らしい。美しくすらある落とし方である。やっぱりタランティーノは最高だ。

点数:80/100点
 作品全体の評価が80点。第3話単体なら88点、第4話単体なら90点だ。もちろん、毎回口を酸っぱくして言っているように、タランティーノ映画の評価は主観に依るところが大きいので手放しでオススメはしないが、暇なときにサクッと観てもらいたい傑作オムニバスが本作である。

(鑑賞日:2012.5.8)

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