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29
2012

[No.89] スーパー!(Super) <72点>

CATEGORYアメコミ




キャッチコピー:『スーパー!素人ヒーロー参上!』

 史上最も”正しくない”正義の味方、登場。

三文あらすじ:ダイナーのコックとして働く冴えない中年男フランク・ダルボ(レイン・ウィルソン)は、彼には不釣り合いな美人の妻サラ・ヘルジランド(リヴ・タイラー)だけを唯一の心の支えとして暮らしている。しかし、サラはフランクを捨て、セクシーなドラッグディーラー、ジョック(ケヴィン・ベーコン)の元へ。失意の中、神の啓示を聞いたフランクは、自らコスチュームを制作、スーパー(Super)なヒーロー”クリムゾンボルト”として悪を成敗し始める・・・


~*~*~*~

 
 冴えない男が一念発起し、自らオリジナルヒーローを制作、道行く悪を懲らしめる。このプロットは、当ブログでも以前感想を書いた『キック・アス』と基本的に共通している。サム・ライミ版『スパイダーマン』の大ヒット以降、毎年実に多くのアメコミものが映画化されているが、そのある種アンチテーゼとして、本作のような”等身大のリアルヒーロー”を描く作品も多く作られるようになってきた。

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 『キック・アス』の主人公がそうであったように、この手の作品では、ヒーローに憧れる男が自らオリジナルヒーローに扮するものの、何の能力も持たない彼らは当然敗北、己の未熟さを知り、苦悩し、成長することで、真の”ヒーロー”へと生まれ変わっていく。鉄の体を持つ訳でもなく、壁をよじ登れる訳でもなく、コウモリをモチーフにした武器やアークリアクターで起動するパワードスーツを作る頭脳も財力も持たない彼らは、往々にして”熱いハート”だけを有し、”クールな頭脳”、すなわち、「想いを実現する力」を欠いている。そのギャップこそが、彼ら”無能力ヒーロー”達の悩み所であり、映画的には、ドラマの核になる部分である。

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 ところが、本作のヒーロー”クリムゾンボルト”は、そのような無能力ヒーロー達の中でも一風変わっている。もちろん、ただの冴えない中年オヤジであるフランクが扮する”クリムゾンボルト”は、何らスーパーナチュラルなパワーを持っている訳ではない。フランクが感じた”神の啓示”にしても、ただ彼がそう感じただけの話である。しかし、クリムゾンボルトは強い。レンチを武器に道行く悪人を容赦なく殴る。静寂を裂く悲鳴と、飛び散る血しぶき。重傷を負いのたうち回る“悪党”に、彼の台詞がとどめを刺す。

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「割り込みをするな!!」


 クリムゾンボルトの特異な点は、まさにココ。悪事に対して制裁が厳しすぎるのである。

 確かに、彼が裁いた悪党は、映画の行列に割り込んだ可愛そうなおっさんだけではなく、麻薬の売人やひったくり犯などのしっかりした犯罪者もいるのだが、それにしたって、戦意を喪失した相手にも容赦なくレンチを振り下ろす彼の所業は、もはや過剰防衛の余地すらない純粋なる”暴力”だ。力の無い正義は無意味だが、ここまでやり過ぎる正義は、単なる害悪でしかない。

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 しかも、本作の描写は、けっこうグロい。ヒーローものでありながら、まるでタランティーノ映画であるかのように、激しい暴力描写のオンパレードだ。その中でも意外と一番グロいのが、オープニングのアニメーション。ポップなくせに、中々悪趣味である。

 しかし、クリムゾンボルトの特異性には理由がある。彼のヒーローとしての一義的な行動原理は、妻を再びドラッグの道に引きずり込み、自分の元から奪っていった”ジョックへの復讐”。だったら、素直にジョックのみをぶち殺し妻を奪還すればよさそうなものだが、彼はそこからスーパーな拡大解釈を施し、ジョックを含めた“全ての悪”を憎むようになる。つまり、彼は、人助けのために悪人を懲らしめているというよりは、抽象的な”悪”という存在への復讐、もっと言うなら、“悪”に対する八つ当たりでヒーローをやっている。

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 よって、彼は、筆者の定義する”スーパー・ヒーロー”ではない。筆者が思う”スーパー・ヒーロー”とは、”他者の救済のため己を犠牲にする精神”と、”想いを実現するための力”の両方を持つ者であるが、クリムゾンボルトは、明らかに前者が欠落している。彼は、単純にスーパー(Super)な男ということになるだろう。あとは、そう、人智を超越した”神”という存在を示唆する言葉としても、タイトルの”Super”は、意味を持っていると思われる。

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 さて、そうすると、クリムゾンボルトが持っているのは”想いを実現する力”のみ。利己的な”力”を持ち、それを独善的に振りかざす者はすべからく悪人であり、そういった意味で、悪人を成敗するはずのクリムゾンボルトも皮肉なことに”悪人”になってしまっていると言わざるを得ない。そういう意味で、結局、本作のテーマは、”正義”と”悪”の境界線という『ダークナイト』と似通ったものだと言うことも出来るだろう。

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 さて、ヒーローものの主人公がこれだけぶっ飛んでいるとなると、気になるのは、やはりラストの落としどころ。妻を救って幸せに暮らしました…では、当然観客は納得しない。しかし、妻の救済と引き換えにクリムゾンボルトは命を落とした…では、あまりにベタで簡単すぎる。利己的なやり過ぎ男”クリムゾンボルト”のキャラクター設定は、物語にかなりの制約を加えるやっかいな代物とも言える。

 結論から言うと、本作のオチは”神に選ばれたのは、フランクではなくサラであった”という何とも分かりくいものであった。より具体的には、フランクに救出されたサラは、義務感から2か月彼と平穏に同居、その後、家を後にし、自分の”幸せな”人生を見つける、というオチなのだが、これはいささか釈然としない。

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 「俺を殺して世界が変わるとでも思っているのか?!」というジョックの問いに対し、フランクは、ラストのモノローグで「子供達が世界を変えるかもしれない。」との答えを提示する。確かに、それはそうかもしれない。しかし、作品全体に対する答えは??過剰な制裁を加えたことは許されることなのか?自分から介入してきたとはいえ、若くして死んだリビー(エレン・ペイジ)については?あんなに頑張ったのに、うさぎと寂しく過ごす余生でいいのか?というか、自分がうさぎに相応しいと感じるようになったっぽいけど、本当にそうなのか?慰め方も知らない不器用な男にサラを任せて、自分は”フランクおじさん”の地位で満足できるのか?警察の捜査の手は?死ぬまではいかなくとも、やはり逮捕されるという罪の償い方もあったのではないだろうか?

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 などなど、あまりに切ない終幕に、心のモヤモヤを晴らすことが難しい。そして、筆者が感じる釈然としない点の数々を一言に集約するなら、やはり”フランクの罪はどうなった”である。筆者なら、ラストのモノローグは、フランクが獄中で思っていることにする。狭い独房の中、1人座っているフランク。あのBGMに乗せて語られるモノローグ。監獄には、定期的にサラの子供からの手紙が届き、壁には一面に”人生でパーフェクトだった瞬間”の絵が貼られている。そしてラストは「ここを出たらうさぎを飼ってみよう。」で締める。この方が分かりやすくて良いと思うのだが。

点数:72/100点
 以上のように、何だか釈然としない終わり方ではある本作だが、ケヴィン・ベーコン、リヴ・タイラーというビッグネームの存在感は圧倒的だし、『JUNO/ジュノ』でアカデミー主演女優賞にノミネートされ、最近では『インセプション』のアリアドネが印象的な期待の新星エレン・ペイジの、強烈にぶっ飛んでいながらもセクシーな演技は必見。さらに、ヒーローものという観点から絶賛したいのは、クリムゾンボルトがジョック邸を襲撃するラストのシークエンス。ここはめちゃくちゃに格好いい。

(鑑賞日[初]:2012.5.29)










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Tag:グロ注意 男には自分の世界がある 後天的ヒーロー

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